ドル円162円目前で攻防|昨日のPCE結果と、ホルムズ海峡「再緊張」の影響をやさしく解説

 











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ドル円が161円台後半で、約40年ぶりの安値162円を目前にした攻防が続いています。

「昨日のPCEはどうだった?」

「ホルムズ海峡でまた何が起きたの?」

「FRB高官は何を言っている?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。

むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。





まずは全体像から(先に結論をお伝えします)

細かい話に入る前に、いま相場で起きていることをざっくりつかんでおきましょう。

ポイントは3つです。

  1. 昨日のPCEは「やや弱含み」で、米利上げ観測がいったん後退
    — それでもドル円は162円目前で粘っています

  2. ホルムズ海峡で船舶が攻撃され、中東情勢が再び緊張
    — 原油が反発し、円安方向に効いています

  3. FRB高官は「インフレはまだ高い」との姿勢を維持
    — ドル高の土台は大きく崩れていません

「PCEで少しドルが緩んでも、中東の再緊張がそれを打ち消し、円安が続いている」
——これが今の局面です。それでは、一つずつ見ていきましょう。


これまでの流れを、かんたんにおさらい

ここ数日の出来事を時系列で振り返ると、今の相場がぐっと理解しやすくなります。

  • 6月22〜24日:ドル円が162円に接近、介入警戒が高まる

  • 6月25日(昨日):米PCEが「やや弱含み」→利上げ観測が後退→円が一時上昇

  • 6月25日 夜:ホルムズ海峡で船舶が攻撃され、原油が反発→円が再び売られる

  • 6月26日(今回):ドル円161円台後半で小動き、株式は反落





1. ドル円は161円台後半 — 162円目前で小動き

まずは足元の相場から。

26日、ドル円は1ドル=161円80銭を挟んで小動きとなっています。

約40年ぶりの円安水準である162円が、すぐ目の前という状況です。


昨日からの値動きは、上下に揺れました。

25日の米国市場で、円は2024年7月につけた安値161円95銭付近まで下落。

ところがPCEの結果を受けて一時161円台半ばまで戻し、その後はホルムズ海峡の攻撃ニュースで原油が反発すると、再び円が売られました。

「指標で戻して、中東で売られる」という、忙しい展開だったわけですね。


なお、株式市場は反落しています。

日経平均株価は一時2000円超下げました。


前日に急伸して最高値を更新した反動に加え、米アップルが製品価格を大幅に引き上げたことや、OpenAIがIPO(新規株式公開)を2027年まで先送りすると伝わったことが、AI・半導体関連株の重しになっています。

アップルの値上げは「半導体価格の高騰が民生機器の需要に悪影響を及ぼすのでは」との懸念につながり、ソニーや任天堂などにも連想売りが出やすい状況です。


もっとも、悲観一色というわけではありません。

前日のマイクロン好決算を受けて、AI・半導体需要への強気な見通しは維持されており、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は反発しました。

三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩氏も、大幅高の反動で売りが優勢になりつつも、半導体関連への「押し目買いは入るだろう」とみています。

ちなみに、朝方発表された6月の東京都区部のコアCPI(消費者物価指数)は前年比1.6%上昇と伸びが拡大しましたが、相場の反応は限られました。




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2. 昨日のPCEの結果と、相場への影響

ここからは、昨日最大の注目イベントだった米PCE(個人消費支出物価指数)を見ていきましょう。

FRB(米連邦準備制度理事会)が最も重視するインフレ指標です。


結果は「コアは予想どおり、総合はやや弱含み」

5月のPCEの結果を整理します。

指標 結果(前年比)前月比予想との関係
総合PCE 4.1%0.4% 前年比は予想一致、前月比は予想(0.5%)を下回る
コアPCE 3.4%0.3% 前年比・前月比とも予想どおり



ポイントは、総合PCEの前月比が、予想の0.5%を下回る0.4%だったこと。
前年比4.1%は2023年4月以来の高い伸びですが、「思ったほど加速しなかった」と受け止められ、米国の利上げ観測がいったん後退しました。

ちなみに、FRBがより重視するのは、変動の大きい食品・エネルギーを除いた「コア」のほうです。

そのコアは前年比3.4%・前月比0.3%と、いずれもピタリ予想どおり。

サプライズはありませんでした。


つまり今回のPCEは、「総合は少し弱め、コアは予想どおり」という、強くも弱くもない微妙な内容だったわけですね。

だからこそ、相場の反応も「ドルがやや緩む」程度にとどまりました。


相場への影響 — ドルが緩み、円は下げを縮小

この「やや弱含み」を受けて、米国債が買われ(利回りは低下)、ドルがやや緩みました。

金融政策に敏感な米2年債利回りは約4bp低下して4.10%に。


市場が織り込む年内の利上げ幅は約33bpへと、前日の36bpから縮小しました。

為替では、発表前に161円95銭目前まで進んでいた円が、発表後は下げを縮小して161円80銭前後まで戻しています。


市場参加者の見方 — 「ピーク説」と「まだ高い説」

この結果を、プロはどう見たのでしょうか。見方は2つに分かれました。


RSM USのジョー・ブルスエラス氏は、原油が急落していることも踏まえ、「インフレ率は5月にピークを付けた可能性が極めて高い」と分析。

一方で、価格上昇圧力はサプライチェーンに残っているため、基調的なインフレは「そう簡単には鈍化しない」とも指摘しています。


これに対し、ブルームバーグ・エコノミクスは、総合・コアともにインフレが強く、個人消費も持ち直したことから、「6月FOMCで示されたタカ派姿勢が裏付けられた」と分析。

実際、データセンター需要を背景にコンピューター関連の価格が前年比14.5%上昇するなど、幅広い分野で物価が堅調でした。

エネルギーと住宅を除いたサービスインフレ(FRBが注目する指標)も前月比0.5%上昇と、1月以来の大幅な伸びとなっています。


つまり、「ピークかもしれないが、まだ高い」というのが実情。だからこそ、利上げ観測は後退しても完全には消えず、ドル円は162円目前で粘っているわけですね。


なお、今回の統計には明るい面もありました。

インフレ調整前の個人所得は前月比0.7%増、賃金・給与も0.4%増加。

インフレ調整後の可処分所得は0.3%増と、年初以来初めて増加に転じました。

物価高のなかでも消費者が支出を維持していることが示されており、これも「米経済の底堅さ=ドルの強さ」を支える材料になっています。


一方で、別に発表された1〜3月期のGDP(国内総生産)確報値では、個人消費が0.5%増へ下方修正され、4年ぶりの低い伸びとなりました。

強い面と弱い面が同居している点は、頭に入れておきたいところです。




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3. 昨夜の中東再緊張 — ホルムズ海峡で船舶攻撃

PCEでいったん緩んだドル円を、再び円安方向に押し戻したのが、中東情勢の再緊張です。


何が起きたのか

エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡で、船舶1隻が正体不明の飛翔体(ミサイルなど)による攻撃を受けました。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、イランの革命防衛隊(IRGC)がシンガポール船籍の貨物船を攻撃したと報じています。

この数時間前には、複数の貨物船が海峡の横断を試みたあと、引き返す動きも見られました。


これを受けて、いったん落ち着いていた原油価格が反発

北海ブレント原油は1バレル=75ドルを上回りました。

先週の暫定和平合意で急速に進んでいた「通航の正常化」に、水を差す出来事となったわけです。


実際、混乱は広がっています。

攻撃の数時間前には、超大型原油タンカー2隻を含む少なくとも3隻の商船が、ホルムズ海峡から引き返したとみられています。

海運情報会社によると、IRGCが無線やSNSを通じて「引き返すよう」指示したあとに、こうしたUターンが起きたとのこと。


さらに、イランがホルムズ海峡の通航管理のために設けた当局は、自らの枠組み外で行われる通航については「保険適用や安全通航保証の対象外になる」と表明しました。

国連の国際海事機関(IMO)も、海峡での退避支援活動をいったん停止しています。

海峡の安全性への信頼が、再び揺らぎ始めているわけですね。


なぜ「原油高」が円安に効くのか

ここで初心者の方に大事な点を。

原油高は、円安に効きやすいという関係です。

日本は原油の多くを輸入に頼っているため、原油が上がると、それを買うためのドル需要(=円売り・ドル買い)が増えます。

加えて、輸入物価の上昇でインフレ懸念も強まります。


みずほ銀行の長谷川久悟氏は、この点を的確に表現しています。

「円は原油価格が下落してもさほど反応はないが、原油が上昇すると円安に効いてくる」。

今回はまさにそのパターンで、PCEで緩んだドル円が、原油反発で再び円安方向へ押し戻されたわけですね。

長谷川氏は、PCEで利上げ観測は後退したものの期待は残るため、ドル円が162円を超えるリスクはある、とも指摘しています。


通航料を巡る火種も

もう一つの不安材料が、ホルムズ海峡の「通航料」を巡る対立です。

イランとオマーンが海峡の管理体制について協議を始めたことで、イランが通航料を徴収するのでは、との懸念が再燃しています。


これに対し、ルビオ米国務長官は「通航料は、いかなる合意においても受け入れられない」と明言。

トランプ大統領も、通航料の徴収は交渉における「レッドライン(譲れない一線)」だと表明しています。

中東情勢は、原油価格を通じて為替に直結するため、引き続き目が離せません。





4. FRB高官の発言と、市場の見方

PCEの発表に合わせて、FRBの高官たちも発言しました。

利上げの行方を占ううえで、彼らの言葉は重要なヒントになります。


ウィリアムズNY連銀総裁 — 「現行スタンスは望ましい」

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、現在の金利水準について「インフレ率を物価目標に戻していくために、良い位置にある」との認識を示しました。

インフレ率は「疑いようもなく高い」とし、関税やイラン戦争のエネルギーショック、AI投資ブームが影響していると分析。

とくに「AI投資ブームは、予想以上に物価を押し上げる恐れがある」と警戒を示しました。


ただし見通しとしては、インフレ率が年末までに3.5%に低下し、その後2%へ向けて「滑空軌道」をたどり、2028年までに目標に到達すると見込んでいます。


グールズビー・シカゴ連銀総裁 — 「兆しはあるが、トレンドは悪い」

シカゴ連銀のグールズビー総裁は、昨日のPCEについて「期待の持てる兆しが見られる」「全てが悪い内容だったわけではない」とコメント。

一方で、インフレの再加速が現時点でFRBにとって最大の課題だとし、コアインフレについては「引き続き高過ぎるのに加え、トレンドは悪い方向にある」と述べ、改善の確認が必要だと強調しました。


市場の見方 — タカ派の土台は崩れず

2人の発言に共通するのは、「インフレはまだ高く、警戒を緩めない」という姿勢です。

PCEがやや弱含んでも、FRB高官がタカ派の構えを崩していないことが、ドル高の土台を支えています。

市場では、FOMCが9月までに金融引き締めに動くとの見通しを、引き続き織り込みつつあります。


先のFOMCで公表されたドット・プロット(金利見通しの分布図)でも、予想を提出した18人のうち9人が年内に少なくとも1回の利上げを見込んでいました。

つまり「利上げ観測はいったん後退したが、なくなったわけではない」というのが、市場の冷静な受け止めです。


グールズビー総裁は、ウォーシュ議長のもとで声明が大幅に短くなったことを歓迎する考えも示しており、FRBの「体制の変革」が着実に進んでいることもうかがえます。





5. ECBの追加利上げ — 市場の見方は分かれる

最後に、海外の中央銀行にも目を向けましょう。

ECB(欧州中央銀行)の追加利上げを巡って、市場の見方が揺れています。


「もう打ち止め」との声が増加

注目は、原油安の影響です。

米イランの和平交渉を背景に原油価格が急落したことで(※昨夜の攻撃前まで4営業日連続で下落)、ECBの追加利上げ観測を引き下げるエコノミストが出てきました。


オックスフォード・エコノミクスは、エネルギー価格の急落で「当初のインフレ急騰が短期間で終息した」として、年内の追加利上げを見込まないとの見解を表明。

キャピタル・エコノミクスも、見通しを「今回限りの利上げ」へと修正しました。


それでも「あと1回」は織り込み

一方で、市場全体では、年内に0.25ポイントの追加利上げが完全に織り込まれた状態が続いています。

ECBのシュナーベル理事は24日、現在3.2%のインフレ率を中期的に2%へ戻すには「利上げを継続する必要があるだろう」と述べていました。


ただし、その先の見方は分かれます。バークレイズのクリスチャン・ケラー氏は、「あと1回利上げする議論はあるが、その後2.5%で打ち止めとなる可能性は、今の時点でかなり高い」と分析。

野村証券は9月と12月の2回の追加利上げ予想を維持しつつ、3回目(2027年3月)の予想は取り下げました。


市場の見方 — 「中銀の方向感」を読む

ここから読み取れるのは、原油安が中央銀行の利上げ姿勢をやわらげつつあるということ。

米国はFRB高官がタカ派を維持する一方、ECBは「あと1回で打ち止め」へと傾きつつあります。

ラガルドECB総裁も今週、現時点では「より強力な政策対応」を必要とするような根拠は見られない、との認識を示しました。


こうした中銀ごとの温度差は、ドルとユーロの強弱に直結します。

為替は「2国間の力比べ」なので、各国の金融政策の方向感を見比べると、相場全体の流れがつかみやすくなりますよ。


ただし注意点もあります。

ECBの「打ち止め」観測は、原油安が前提になっている点です。

昨夜のホルムズ海峡の攻撃のように、中東情勢が再燃して原油が反発すれば、その前提は崩れかねません。


原油価格は、米国・欧州・日本のいずれの金融政策にも影響する「共通のカギ」

だからこそ、中東情勢から目を離せないわけですね。





総括 — いま相場を動かす要素と、トレードの注意点

最後に、今回の内容をぎゅっとまとめます。


いま相場を動かしている要素

  1. 米国のインフレと利上げ観測
    PCEはやや弱含みで利上げ観測は後退も、FRB高官はタカ派を維持。
    ドル高の土台は崩れていません。

  2. 中東情勢(ホルムズ海峡の再緊張)
    船舶攻撃で原油が反発。
    原油高は円安に効きやすく、ドル円を押し上げる要因です。

  3. 中銀の方向感の違い
    FRBはタカ派維持、ECBは「あと1回で打ち止め」へ。
    この差が通貨の強弱を左右します。


トレードで気をつけたい3つのこと

① 162円は「介入アラート」の節目
約40年ぶりの安値が目前。
円安方向に傾けるなら、突然の介入による急反転に備え、損切りラインを決めておきましょう。

② 「原油価格」を中東情勢のメガネに
原油が上がると円安に効きやすい、という関係を意識しましょう。
ホルムズ海峡のニュースは、原油価格の反応とセットで見るのがコツです。

③ 指標で緩んでも、流れは円安寄り
PCEでドルが緩んでも、中東リスクとFRBのタカ派姿勢がそれを打ち消しています。
「下押しは限定的、上値では介入警戒」という両面を意識して構えましょう。


相場はいま、「インフレと格闘する米国」「再緊張に揺れる中東」「打ち止めをうかがうECB」「162円を守りたい日本」と、それぞれの力がせめぎ合っています。

どこが、どちらに動こうとしているのか
——それを落ち着いて見極めることが、これからのトレードで結果を分けていくはずです。

162円の節目と中東情勢を前に、原油価格と当局の動きを、ぜひこの記事の視点といっしょに見守ってみてくださいね。




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