日銀利上げにブレーキ?|「骨太の方針」と円安、ウォーシュ議長の国際デビュー・顧問人事をやさしく解説

 











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ドル円が161円台後半で、約40年ぶりの安値162円台をうかがっています。

「骨太の方針って何? なぜ円安に効くの?」

「ウォーシュ議長が初の国際討論会へ?」

「米イランはまた攻撃の応酬?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。

むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。




まずは全体像から(先に結論をお伝えします)

細かい話に入る前に、いま相場で起きていることをざっくりつかんでおきましょう。

ポイントは3つです。

  1. 日本政府の「骨太の方針」が、日銀の利上げにブレーキをかけるとの見方
    — 低金利が続くとの連想で、円売りが優勢です

  2. ドル円は161円台後半、162円台を試す可能性
    — 約40年ぶりの安値圏が目前です

  3. 米イランは攻撃の応酬のすえ、攻撃停止で合意
    — ただし停戦の基盤はなお脆弱です


「米国側の事情に加えて、今回は日本側(骨太の方針)からも円安の力が加わっている」
——これが今の局面の特徴です。それでは、一つずつ見ていきましょう。


これまでの流れを、かんたんにおさらい

ここ2週間ほどの出来事を時系列で振り返ると、今の相場がぐっと理解しやすくなります。

  • 6月16日:日銀が31年ぶりとなる1.0%への利上げを決定

  • 6月17日:FOMCは据え置きも「タカ派」、米イランは暫定和平合意に署名

  • 6月22〜25日:ドル円が162円に接近、PCEは「やや弱含み」

  • 6月25〜27日:ホルムズ海峡で攻撃の応酬が再燃、原油が反発

  • 6月29日(今回):政府の「骨太の方針」が円売り材料に。米イランは攻撃停止で合意




1. ドル円は161円台後半 — 162円台を試す可能性

まずは足元の相場から。

29日、ドル円は1ドル=161円台後半で、約40年ぶりの円安水準である162円台をうかがう展開です。

株式市場は、先週末の急落からの反発が見込まれるものの、上値は重そうです。

背景にはAI関連株への警戒があります。


26日の米国市場では、AI関連からそれ以外の銘柄へ資金が移る動きが出て、半導体株の指数(SOX)は5%強下落しました。

計算資源(AIを動かすための設備)の価格高騰への不安に加え、米スペースXの社債価格が急落(利回りは上昇)するなど、AI関連企業の資金調達への懸念も浮き彫りになっています。


「AIブームに本当に持続性はあるのか」という疑問が、少しずつ市場に広がり始めているわけですね。

そして今回、円安を一段と後押ししているのが、次に見る日本政府の「骨太の方針」です。




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2. 「骨太の方針」に適切な金融政策「非常に重要」 — なぜ円安に効く?

今回のいちばんの注目材料が、日本政府が近くまとめる「骨太の方針」です。

少しお堅い名前ですが、初心者の方にも分かるよう、やさしく解説します。


そもそも「骨太の方針」って?

「骨太の方針」とは、政府がつくる経済財政運営の指針のこと。

1年間の経済政策の大きな方向性を示す、いわば「政府の経済の設計図」です。

毎年まとめられ、予算編成などの土台になります。


今年のポイント — 日銀への「注文」

ブルームバーグが入手した原案によると、今年の骨太の方針には、日銀の「適切な金融政策運営」について、「非常に重要」という文言が新たに加わりました。

これは昨年の方針にはなかった表現です。

政府が日銀に対し、「政府の方向性に歩調を合わせてほしい」と、改めて求めた形です。


高市早苗首相は、ハト派(金融緩和に前向き)とみられています。

22日の国会答弁でも、日銀に「政府と密接に連携を」と求めていました。


こうした流れのなかで「非常に重要」という強い言葉が加わったことで、市場は「政府が日銀の利上げにブレーキをかけるのでは」と受け止めたのです。


市場参加者の見方 — 「低金利が続く」連想で円売り

この受け止めが、なぜ円安につながるのでしょうか。

理屈はシンプルです。

「政府が利上げを抑える」→「日本の低金利が続く」→「日米の金利差が縮まらない」→「円を売ってドルを持つ動きが続く」、という連想です。


三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊氏は
骨太の方針で日銀の協力が言及されることは、「利上げが遅れるとの連想にもなる」と指摘しています。


実際、市場ではすでに「日銀の利上げは急がない」との見方が大勢です。

ブルームバーグが6月会合後に実施した調査では、次の利上げ時期の予想は12月が52%で最多、次いで10月が36%。9月の2%と合わせ、年内の利上げ予想が全体の90%を占めました。

利上げ自体は見込まれているものの、「ゆっくり」というのが共通認識。

そこに政府からの「注文」が加わったことで、利上げがさらに後ずれするとの連想が強まったわけです。


さらにもう一つの懸念が、財政運営です。

政府は、2040年度までに戦略17分野へ累計370兆円超の官民投資を行う工程表も示しました。

大きな投資は経済を強くする期待がある一方、財政への不安も生みます。


市場では、インフレに対して日銀の利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」の懸念が、再び意識されています。

こうした見方から、ドル円は40年ぶりの162円台を試す可能性が出てきているわけですね。




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3. ウォーシュ議長、就任後初の国際討論会へ

ここからは米国側に目を移します。

注目は、ウォーシュFRB議長の「国際デビュー」です。


7月1日、シントラの舞台へ

ウォーシュ議長は7月1日、ECB(欧州中央銀行)がポルトガルのシントラで開く年次シンポジウムに出席します。

就任後、国際的な公開討論の場に臨むのは初めてです。


討論のメンバーが豪華です。

ECBのラガルド総裁、英中銀のベイリー総裁、カナダ中銀のマックレム総裁と並び、いずれも2008年の金融危機を経験したベテランたち。


新人議長のウォーシュ氏が、世界の中銀トップとどう渡り合うかに注目が集まります。

前任のパウエル氏は、トランプ大統領からの攻撃に耐えながら揺るぎない姿勢を貫き、昨年のシンポジウムでは総立ちの拍手喝采を受けました。

その後任であるウォーシュ氏が、どんな存在感を示すかも見どころです。


市場参加者の見方 — テーマは「AIと金融安定」

今回の討論で、もう一つの大きなテーマとなりそうなのが、AIブームと金融の安定性です。

カナダ中銀のマックレム総裁は、米国への過剰投資が「痛みを伴う調整を準備しつつある」と警戒を促しており、ECBも市場混乱のリスクを警告しています。


ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストは、議論はインフレにとどまらず、「地政学的な不確実性やAIに関係する金融安定リスク」が中心テーマになりそうだと指摘しています。

AI相場の過熱が世界経済のリスクとして意識され始めているわけですね。


今週の本命は「雇用統計」

なお、為替トレーダーにとって今週最大のイベントは、7月2日発表の6月の米雇用統計です。

エコノミスト予想では、非農業部門の雇用者数が前月比11万5000人の増加。

もしこの通りなら、過去6カ月の雇用は「最近の約2年で最も好調」だったことになります。


賃金の上昇や失業率の安定も加われば、「FRBの次の一手は利下げではなく利上げ」という市場の見方を、ほぼ確実に後押しすることになりそうです。

雇用統計は為替を大きく動かす指標の代表格。今週は、シントラの討論会と合わせて、ドル円が振れやすい一週間になりそうです。





4. ウォーシュ氏のFRB顧問人事 — 何を意味する?

ウォーシュ議長を巡っては、もう一つ注目の動きがありました。

顧問人事です。一見地味ですが、新議長が「どんなFRBを目指しているか」を読み取るヒントになります。


起用されたのは「資産バブル」の専門家

ウォーシュ議長は、FRBのシニアエコノミスト2人を顧問に起用しました。

一人は調査統計局のダニエル・コビッツ副局長で、資産バブルや短期の信用市場の安定性を研究テーマとする人物。

もう一人は金融政策局のエリック・エングストロム氏で、株式と債券の連動性などを研究しています。


市場参加者の見方 — 「レジームチェンジ」の一環

この人事は、ウォーシュ議長が掲げる「レジームチェンジ(体制の変革)」の一環と見られています。

議長は17日のFOMC後、FRBの運営方法を見直すための5つの作業部会(対外コミュニケーション、バランスシート、データの使い方、生産性と雇用、インフレの枠組み)を設置すると発表していました。


とくに「資産バブル」の専門家を顧問に据えたことは、AIブームによる市場の過熱を、議長が強く意識していることをうかがわせます。

ウォーシュ議長はこのほかにも、保守系の政策アナリスト2人を臨時顧問に起用しています。


FRBが情報発信や政策の枠組みを本気で見直そうとしている
——その姿勢が、一連の人事からも読み取れるわけですね。

こうした「ドルの価値を守る」体制づくりは、中長期的にドルの信認を支える材料とも言えます。





5. 米イラン、攻撃停止で合意 — でも基盤は脆弱

中東情勢にも大きな動きがありました。

米国とイランが、相互の攻撃停止で合意したと、ニュースサイトのアクシオスが報じました。


数日間の「応酬」のすえに

ここ数日、両国は攻撃の応酬を続けていました。

25日にイランがコンテナ船を攻撃すると、米国が翌日に報復。


さらにイランがカタール産原油を積む船舶を攻撃し、米国が27日に再び報復
——という具合です。

双方が「相手が停戦に違反した」と非難し合う展開でした。


そんななか、ホルムズ海峡などを巡る和平協議が今週再開されるのを前に、両国は攻撃を停止し、協議の継続中は船舶の自由な航行を認めることで合意した、と伝えられました。

緊張緩和の兆しです。


ただ、合意の直前まで応酬は激しいものでした。

イランの革命防衛隊(IRGC)は28日、クウェートやバーレーンにある米軍関連の基地に向けてミサイルやドローンを発射。

クウェートは迎撃して被害はなく、バーレーンでも死者は確認されませんでしたが、緊張が一気に高まりました。


米中央軍は「イランには停戦を順守する機会が与えられたが、そうしない道を選んだ」と声明を出し、警戒態勢を維持するとしています。

一方で、米政府関係者は今回の攻撃について、大規模な戦闘への復帰を意味するものではないとの見方も示しています。


市場参加者の見方 — 「停戦の基盤は脆弱」

ただし、市場は楽観していません。

今回の応酬は、先週署名されたばかりの60日間の暫定合意の基盤が、いかに脆弱かを示しました。

トランプ大統領が強い警告をSNSに投稿するなど、火種はくすぶったままです。


さらに気がかりなのが、ホルムズ海峡の通航料を巡る問題です。

オマーンは、ホルムズ海峡が戦争前の状態に戻ることは不可能で、通過する船舶に何らかの料金を課す可能性がある、と欧州当局者に伝えたとされます。


イラン側も、ホルムズ海峡の航行管理はイランが担うとの姿勢を強めており、通航をめぐる不透明感はくすぶり続けています。

こうした懸念から、原油先物は29日朝の取引で一時約2%上昇しました。


おさらいすると、原油高は円安に効きやすい材料です。

中東情勢が再燃して原油が上がれば、ドル円の上昇(円安)を後押しします。

中東情勢は、引き続き原油価格というメガネを通して見ておきたいですね。





6. リッチモンド連銀バーキン総裁の発言

最後に、FRB高官の発言も押さえておきましょう。

リッチモンド連銀のバーキン総裁が、28日に重要な発言をしました。


「まだ高い、でも和らぐ兆しも」

バーキン総裁は、インフレについて「数字は高過ぎる」と明言。

一方で、物価上昇圧力が近く和らぐ可能性を示す兆候も見られる、とも述べました。

停戦で原油が下落し、ガソリン価格が急速に低下していることを歓迎しています。


ただし、楽観はしていません。

「金利や労働市場、何らかの要因からこれ以上の影響がないままインフレ率が2%に戻ると確信するのは難しい」とし、AIインフラの整備拡大など、インフレを押し上げる別の要因も指摘しました。


市場参加者の見方 — 「やや引き締め気味が妥当」

バーキン総裁が懸念しているのが、企業の価格設定です。

「企業は価格を決めるとき、現在のインフレ率を判断材料に織り込む。このためインフレにはある程度の持続性がある」とし、金融政策を「やや景気抑制気味に維持することは妥当」との考えを示しました。


総裁が特に注視しているのが、サービス分野の価格上昇です。

サービスのインフレは、いったん上がり始めると定着しやすい傾向があります。


また、消費が底堅いことも、皮肉にもインフレを下げにくくする要因です。

関税や石油ショックによる物価上昇圧力は今後弱まるとみる一方、それらが消費を大きく冷え込ませた様子はなく、個人消費は底堅く推移してきた、とバーキン総裁は指摘します。

「消費が強い→値下げ圧力がかかりにくい→インフレが下がりにくい」という構図ですね。


つまり、「インフレのピークは近いかもしれないが、簡単には2%まで下がらない。だから利上げ方向の警戒は緩めない」という姿勢です。

先のPCE(5月総合4.1%)の高さもあり、FRB当局者の間では、年内利上げが必要になるかもしれないとの見方が増えています。

FRBがタカ派の構えを崩していないことが、ドル高の土台を支えているわけですね。




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総括 — いま相場を動かす要素と、トレードの注意点

最後に、今回の内容をぎゅっとまとめます。


いま相場を動かしている要素

  1. 日本側の円安要因(骨太の方針)
    政府が日銀の利上げにブレーキをかけるとの見方から、低金利継続が連想され、円売りが優勢です。

  2. 米国のタカ派姿勢(ドル高の土台)
    バーキン総裁ら高官はインフレ警戒を維持。
    7月2日の雇用統計が強ければ、利上げ観測を一段と後押ししそうです。

  3. 中東情勢(攻撃停止も基盤は脆弱)
    攻撃停止で合意も、通航料問題など火種は残存。
    原油高は円安に効きやすい点に注意です。


トレードで気をつけたい3つのこと

① 162円台は「未知の円安ゾーン」
約40年ぶりの安値圏。
介入警戒が強い一方、骨太の方針という新たな円安材料も加わりました。
上下に振れやすい節目として、損切りラインを決めて臨みましょう。

② 日本側の材料も為替を動かす
これまでは米国主導でしたが、今回は骨太の方針という日本側の材料が円安を後押ししました。
米国だけでなく、日本の政策ニュースにも目を配りましょう。

③ 今週は「雇用統計」と「シントラ」に注目
7月2日の米雇用統計と、7月1日のウォーシュ議長の国際討論会。
どちらも相場を動かす可能性があるので、発表前後は慎重な構えを。




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相場はいま、「低金利を続けたい日本」「インフレと格闘する米国」「再緊張に揺れる中東」と、それぞれの力がせめぎ合っています。

今回は、日本側の「骨太の方針」という新しい円安材料が加わった点が特徴です。

どこが、どちらに動こうとしているのか
——それを落ち着いて見極めることが、これからのトレードで結果を分けていくはずです。

162円台の節目と、今週の雇用統計・シントラ討論会を前に、当局の動きと指標を、ぜひこの記事の視点といっしょに見守ってみてくださいね。




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