ドル円162円台後半で持ち直し|ウォーシュ発言・シタデルの7月利上げ警鐘・介入でも円安が止まらぬ理由と、今夜の米雇用統計対策をやさしく解説

 












このブログで用いている相場の見方と予想の仕方はこちら


【FXファンダメンタルズ分析法動画】



 

ウォーシュFRB議長の発言で一時ドル売りになったものの、ドル円はすぐに162円台後半へ持ち直しました。

「なぜ下げても戻るの?」

「シタデルが鳴らす7月利上げの警鐘とは?」

「巨額の介入をしても、なぜ円安は止まらない?」

「今夜の雇用統計はどう構える?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。

むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。





まずは全体像から(先に結論をお伝えします)

いま相場で起きていることを、先に3点でつかんでおきましょう。

  1. ウォーシュ議長の「インフレリスク後退」発言で一時ドル売り
    — でも米利上げ期待は根強く、ドルが買い戻されました

  2. シタデルが「7月利上げリスクの過小評価」を警告
    — 市場が織り込む約30%は低すぎる、との見方です

  3. 巨額の介入でも円安基調は変わらず
    — 根っこにある日米金利差が変わっていないためです

そして今夜は、米雇用統計という最大級のイベントが控えています。

それでは、一つずつ見ていきましょう。





1. ドル円、一時下落も162円台後半へ持ち直し

まずは足元の相場から。

円は7月1日に一時162円84銭まで下落し、1986年12月以来、約40年ぶりの安値を更新しました。

2日も162円台の安値圏で推移しています。


この日は、いったん円が買われる場面もありました。

ウォーシュFRB議長が「インフレリスクは後退した」と発言したことで、「米国の利上げが遠のくかも」との見方から、一時ドル売り・円買いが優勢になったのです。

ところが、その動きは長続きしませんでした。

米国の利上げ期待は依然として根強く、すぐにドルが買い戻されたからです。


株式市場は、日経平均株価が反落(一時1500円超下げ)。

米国で半導体関連株に売りが膨らんだ流れを受け、AI・半導体関連が安くなりました。

一方で、銀行や商社、自動車などは堅調で、東証株価指数(TOPIX)は構成銘柄の約8割が上昇。


ウォーシュ議長の発言や原油安が、相場全体の下支えになっています。

野村証券の伊藤高志氏は、連休を控えて高値警戒感のある半導体関連が売られており、日本株も韓国のサムスン電子やSKハイニックスの値動きを見ながらの推移になるだろう、と指摘しています。




マネックス証券 FXPLUS


2. ウォーシュ議長の「インフレリスク後退」発言 — 市場の見方

ドル円の一時下落のきっかけとなった、ウォーシュ議長の発言を詳しく見ていきましょう。


発言の中身 — 「後退」でも「決意」は変わらず

ウォーシュ議長は1日、ポルトガルのシントラで開かれたECB(欧州中央銀行)の年次フォーラムで、「この4週間でインフレ期待は低下し、インフレリスクは後退した」と発言しました。

米イランの和平協議を受けてエネルギーやガソリンの価格が下落したことが背景です。


ここだけ聞くと「利上げは遠のいた?」と感じますが、話はそう単純ではありません。

議長は同時に、インフレ率を目標の2%に戻すという決意をあらためて強調したのです。

「米国の物価安定を実現する。それがこの委員会に課せられた使命だ」と述べています。


このほか議長は、トランプ大統領が利下げを求め続けるなかでも、FRBの独立性を強調

「FRBは非常に長く独立した中央銀行であり、これからも変わらない」と述べました。また、将来の政策方針を前もって示す「フォワードガイダンス」を示さない考えも改めて表明。

7月のFOMCで利上げが議題になるかを問われても、見通しは示しませんでした。


市場参加者の見方 — 「利上げ期待は変わっていない」

この発言を、市場はどう受け止めたのでしょうか。

三井住友信託銀行の山本威氏は、「ウォーシュ氏が気にしているのは、米国の長いスパンでの物価高だ」と指摘。

「インフレリスク後退に言及したものの、市場の利上げ期待は大きく変わっていない」と分析しています。


つまり、「足元のリスクは和らいだが、根深いインフレを抑える姿勢は不変」と読まれたわけです。

だからこそ、一時的な円買いはすぐに巻き戻され、ドル円は162円台へ戻りました。

金融政策に敏感な米2年債利回りは、発言直後にこの日の最安値(4.13%)まで低下しましたが、その後は4.15%前後へ戻しています。




ウィブル証券


3. FRBの情報発信の減少 — 市場の変動性への警戒

ウォーシュ議長が掲げる方針の一つが、「より静かな中央銀行」です。

情報発信を抑えるというこの方針に対し、ウォール街では早くも警戒の声が広がっています。


なぜ「情報発信の減少」が問題なのか

多くの市場参加者は、FRB高官の発言を手掛かりに、金融政策の方向性を読み取っています。

もしその発言が減れば、「次に金利がどう動くか」が読みにくくなります

すると、経済指標が一つ出るたびに市場が見通しを大きく見直すことになり、相場(特に米国債)の値動きが激しくなる恐れがあるのです。


市場参加者の見方 — 「変動性が高まる」

  • TDセキュリティーズ
    市場がフォワードガイダンスに頼ってきたことで不確実性が下がり、取引のポジションも一方向に偏りやすかったと指摘。
    「それがなくなれば、市場の変動性が高まり、タームプレミアムも上昇するはずだ」と予想しています(タームプレミアムとは、長期の国債を持つリスクの見返りに投資家が求める上乗せ金利のこと。上がると長期金利の上昇につながります)。

  • バンク・オブ・アメリカのマーク・カバナ氏
    「フォワードガイダンスが減れば、市場の変動性と不確実性は高まるだろう」と述べています。

実際、ウォーシュ議長就任以降、FRB当局者が公の場で発言した回数は12回と、過去10年の同時期平均(18回)を下回りました。

当局者が金利見通しを点で示す「ドットプロット」も、今後は提出をやめてしまうのでは、との懸念も出ています(6月会合では議長自身が唯一ドットを提出しませんでした)。


市場が頼りにしてきた「地図」が、少しずつ減っていくかもしれない、というわけですね。

トレードの観点では、「これからは指標発表のたびに相場が振れやすくなるかも」と心構えをしておくとよいでしょう。





4. シタデルの警鐘 — 「7月利上げリスクを過小評価」

もう一つの重要な警告が、米大手マーケットメーク会社シタデル・セキュリティーズから発せられました。

「投資家は、FOMCが今月(7月)にも利上げに動く可能性を過小評価している」というのです。


「約30%は低すぎる」

シタデルのマクロ戦略責任者フランク・フライト氏は、年内は9月と12月の2回の利上げを基本シナリオとしつつ、市場が織り込む7月利上げ確率(約30%)は低すぎると指摘しています。


その理由は、ウォーシュ議長の政策スタイルにあります。

多くの投資家は「経済指標で圧倒的に正当化される場合にだけ、FRBは利上げする」と考えがちです。

しかしフライト氏は、ウォーシュ議長は「適応型」の枠組みを採用し、インフレが定着してしまうのを防ぐために、先手を打って早めに動く可能性があると見ています。


なぜ注目すべきか

フライト氏は、6月のFOMC前にも「新議長がタカ派で市場を驚かせる恐れがある」と警告し、それが実際に的中しました。

今回の警鐘も、同じように注視する価値があります。

その背景には、2023年以降で最も急ピッチとなったインフレの加速があります。


ここから初心者の方が学べるのは、「市場のコンセンサス(共通の予想)が外れたときこそ、相場は大きく動く」ということ。

もし7月に利上げがあれば、多くの人が想定していないぶん、ドル高・円安方向に大きく振れる可能性があります。

ドル円がすでに約40年ぶりの安値圏にあるだけに、想定外の利上げは、介入警戒と重なって荒い値動きを生むおそれもあります。





5. 巨額の介入でも円安が止まらない理由

続いて、多くの人が抱く疑問に答えます。

「あれだけ巨額の為替介入をしたのに、なぜ円安は止まらないの?」
——この理由を、やさしく解き明かします。


過去最大の介入も、水準を超えられた

政府・日銀は、5月27日までの1カ月間に、月次で過去最大規模となる11兆7349億円もの円買い介入を実施しました。

ところが円は、すでにその介入時の水準を超えて下落しています。


円安が止まらない4つの理由

なぜ、これほどの介入でも流れが変わらないのでしょうか。

理由は主に4つです。

  1. 日米金利差(最大の要因)
    — 日銀は6月に金利を31年ぶりの1.0%へ上げましたが、世界的にはなお低水準。
    低金利の円を借りて高利回りの海外資産に投資する動きが続き、円が売られます。

  2. 財政への懸念
    — 日本の政府債務は対GDP比で200%超と主要国で最も高く、円の信認を損なう要因です。

  3. 原油高
     — エネルギーをほぼ輸入に頼る日本は、原油が上がると輸入代金(ドル)の支払いが増え、円売り・ドル買いにつながります。

  4. 米利上げ観測
    — 中東発のインフレで米利上げ観測が強まり、ドル資産の魅力が高まっていることも、円の重しです。


なぜ介入は「一時しのぎ」になりやすいのか

ここが核心です。

為替介入は短時間で相場を大きく動かせます(過去には数時間で4〜5円動いた例も)。

しかし、相場の根っこにある経済のファンダメンタルズ(日米金利差など)に手をつけない限り、効果は一時的にとどまります。

外貨準備は本来、危機に備えるためのもので、通貨を延々と支え続けるためのものではないからです。

実際、4月末以降の介入も勢いは長続きせず、7月1日に162円84銭と約40年ぶりの安値を更新しました。

日本の外貨保有は5月末で約1兆900億ドル(約177兆円)と介入余力は十分ですが、市場の力学を変えられなければ、繰り返す意義は乏しいのです。


当局者の発言と、市場の見方

当局は円安への警戒を強めています。

片山さつき財務相は6月30日、「必要に応じていつでも適切に対応するに尽きる」と改めてけん制し、「断固たる措置が含まれる」ことは日米財務相会合でも確認したと述べました。

三村淳財務官も、これまでの介入は「しばらく円安の加速を食い止めた点で効果があった」と振り返り、日米の連携は最も緊密な状態にあるとの認識を示しました。


一方で市場は、やや冷めた見方です。

山本氏は、円安に対する「政府の警戒感があまり見えず、介入の水準はもっと上(円安方向)にあるとの見方も聞かれる」と指摘。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏も、目立った円高材料がなく政府が取れる手段も短期的に限られるとし、市場は「それを見透かして円安が進んでいる」と分析しています。


なお米国のベッセント財務長官は、日本が適切な金融政策運営を続ければ「円相場は適正な水準に落ち着く」との見方を示し、日銀に利上げの裁量を与えるよう促しています。





6. 今夜の米雇用統計を攻略

最後に、本日最大の注目イベント、今夜の米雇用統計を攻略しましょう。

米国の雇用情勢を示す最重要指標で、ドル円を大きく動かす代表格です。


見るべき3つの数字

雇用統計で特に注目されるのは、次の3つです。

  • 非農業部門雇用者数(NFP)
    — 農業を除く雇用者の増減。景気の勢いを映します。

  • 平均時給
    — 賃金の伸び。
    上がるとインフレ→利上げ観測につながりやすいです。

  • 失業率
    — 労働市場の全体の体温を示します。


直近3回の予想と結果

ここ3カ月の結果を振り返ります。

雇用者数(予想→結果) 平均時給(前月比) 失業率
3月 予想を大きく上回る → +21.4万人(修正後) 4.3%(予想4.4%より低下)
4月 予想5.5万人 → +11.5万人(修正後+17.9万人) +0.2%(予想0.3%を下回る) 4.3%(予想どおり)
5月 予想8.0万人 → +17.2万人 +0.3%(予想どおり) 4.3%(予想どおり)


ポイントは、雇用者数が3カ月連続で市場予想を大きく上回っていること。

米国の労働市場が想定より強いことを示しており、これが「FRBの利上げ観測→ドル高」を支えてきました。


一方で、失業率は4.3%で安定、平均時給は前年比3.4%前後と、賃金は落ち着きつつあります。


結果ごとに考えられる値動き

今回(6月分)の結果別に、考えられる値動きを目安として整理します。

  • 予想を上回る(雇用者数が多い・時給が高い・失業率が低い) → ドル高・円安方向
    労働市場の強さが確認されれば、利上げ観測が強まりドル買いに。
    ただし163円が近づくほど介入警戒が上値を抑えるため、勢いは限られやすいでしょう。

  • ほぼ予想どおり → 値動きは限定的
    サプライズがなければ、相場は落ち着いた反応にとどまりやすい場面です。

  • 予想を下回る(雇用者数が少ない・時給が低い・失業率が上昇) → ドル安・円高方向
    労働市場の陰りが意識されればドル売りに。円高方向へ振れる可能性があります。
    ここは、当局が介入を狙いやすい局面とも言われます。


今夜を狙ううえでの注意点

① 3つの数字が「バラバラ」に出ることがある
雇用者数は強いのに時給が弱い、といったちぐはぐな結果もよくあります。
発表直後はどれに反応するか読みにくいので、数字の中身を落ち着いて確認しましょう。

② 「修正値」にも注目
過去分が大きく上方・下方修正されることがあり、それだけで相場が動くこともあります。
今回も直近2カ月は上方修正されています。

③ 介入警戒との「綱引き」に注意
指標が強ければドル高・円安が進みやすい一方、163円に近づけば介入警戒がブレーキに。
逆に指標が弱くドルが下がった場面は、当局が介入を狙う好機とも見られています。
発表直後は値が飛びやすく、スプレッド(売値と買値の差)も広がりやすいので、無理にまたがず慎重に構えましょう。




マネックス証券 FXPLUS


まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと

① 「一時的な円買い」に飛びつかない
ウォーシュ発言のように、材料で一時円高に振れても、米利上げ期待が根強い間は戻されやすい。
流れの根っこ(日米金利差)を見て判断しましょう。

② 7月利上げリスクは「過小評価」かも
シタデルの警告どおり、市場は7月利上げを軽く見ている可能性があります。
想定外の利上げは、ドル高・円安を一気に加速させる材料になり得ます。

③ 今夜の雇用統計は「中身」と「介入」をセットで
3つの数字の強弱に加え、修正値、そして162〜163円の介入警戒との綱引きを意識。
指標発表直後の急変に備えて、損切りラインを決めて臨みましょう。


FRBの情報発信が減るなかで、これからは指標一つひとつへの反応が大きくなりそうです。
今夜の雇用統計と当局の動きを、ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。



 マネックス証券 FXPLUS

ウィブル証券

  



運営者情報

運営者:FX研究ブログ
管理者:ブタメン

略歴:管理人はファンダメンタルズ分析をメインとするトレーダー
ドル円をメインに分析解説を行っております。
2025
年より当ブログを運営

XブタメンFX