日本は祝日で休場、ドル円162円台半ば|タカ派色を強めるウォーシュ議長とFRB、9日連続の米イラン攻撃をやさしく解説
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20日は海の日で日本市場は休場。
ドル円は162円台半ばで、ドル買いがやや優勢です。
「ウォーシュ議長のタカ派って何?」
「FRBの中で意見が割れているの?」
「中東の応酬はどこまで続く?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- 日本は海の日で休場、ドル円は162円台半ばでドル買いやや優勢
— 週末に中東情勢が一段と激化しました - ウォーシュ議長がタカ派色を鮮明に、FRB内でインフレ論争が過熱
— 7月会合は据え置き予想ながら反対票の可能性も - 米国は9日連続でイランを攻撃、報復の応酬が激化
— 原油と有事のドル買いを通じて相場の底流になっています
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は162円台半ば — 祝日で薄商い
まずは足元の相場から。
20日早朝のシドニー市場で、円は対ドルで162円40銭台と、先週末のニューヨーク終値とほぼ変わらずの水準です。
米国とイランの報復の応酬が週末に一段と激化したことを受け、ドルは主要通貨の大半に対して買いが優勢となっています。
円は先週、週間ベースで0.5%下落しました。
そして20日の東京市場は、海の日の祝日で休場です。
ここで初心者の方に知っておいてほしいのが、祝日の相場の特徴です。
日本が休場だと、日本の投資家や企業の取引が減り、市場参加者が少なくなります。
すると、薄商い(取引が少ない状態)となり、わずかな売買でも値が動きやすくなることがあります。
また、こうした薄商いの時間帯は、過去に為替介入が行われやすかった局面でもあります。
「祝日だから静か」とは限らず、むしろ急な値動きに注意したい、と覚えておきましょう。
先週のドル円は、週間で0.5%の下落でした。
CPIやPPIといった物価指標が予想を下回って利上げ観測が後退し、いったんドルが売られた影響です。
ただし、週の後半にかけては強い米小売売上高やFRB高官のタカ派発言、そして中東緊迫による有事のドル買いがドルを支え、162円台を回復。
「弱い物価(ドル安)」と「強い経済・タカ派FRB・地政学(ドル高)」の綱引きが続くなかで、週明けは中東の激化を受けてドル買いに傾いてスタートした、という流れです。
2. ウォーシュ議長、タカ派色を鮮明に — FRB内でインフレ論争が過熱
今回の最大のテーマが、ウォーシュFRB議長のタカ派姿勢です。
まず「タカ派」をおさらいしましょう。
タカ派とは、インフレ(物価上昇)を抑えるため、金融引き締め(利上げ)に前向きな姿勢のこと。
逆に、景気を支えるため利下げに前向きなのが「ハト派」です。
議長は「インフレを容認しない」と明言
ウォーシュ議長は先週の議会証言で、根強い物価上昇を自身の任期中に放置することはないと言明しました。
6月のインフレ指標(CPI・PPI)が予想を下回ったことについても、「任務完了と言うには程遠い」とし、「粘着的な物価を粘着的でなくすことが私のコミットメントだ」と述べています。
ここで面白いのが、ウォーシュ議長の"変化"です。
もともと議長は、トランプ大統領から「利下げをしてほしい」と期待されて指名された経緯があります。
AIによる生産性向上を理由に利下げする道筋も描いていました。
ところが、物価上昇が広範囲かつ根強いことが明らかになるなかで、インフレ抑制へと軸足を移しつつあるのです。
FRB内は「ファミリーファイト」
いま、FRBの内部では意見が割れています。
ウォーシュ議長自身が「ファミリーファイト(家族同士のけんか)」と呼ぶほどです。
当局者の立場を整理すると、こうなります。
- タカ派(利上げに前向き):
ダラス連銀のローガン総裁は小幅利上げを支持。
ウォラー理事、クリーブランド連銀のハマック総裁も利上げの可能性を指摘。
この3人は今年のFOMCで投票権を持ちます。 - 中間・様子見:
ジェファーソン副議長は「近く鈍化しなければ利上げを検討」としつつ、現状は適切と発言。
クック理事は「行動の用意はあるが、データを見極める余裕はある」 - ハト派寄り:
NY連銀のウィリアムズ総裁は「インフレは既にピークに達した」との見方。
市場参加者の見方
KPMGのダイアン・スウォンク氏は
「タカ派はFRB内で周辺的な存在から中核へと移った」と指摘。
相次ぐ一時的な価格上昇がインフレを定着させれば、FRBは1年前の利下げを巻き戻す(=利上げする)以外に選択肢がなくなる恐れがある、と警告しています。
ここで少し補足すると、ハマック総裁は「自身のこれまでの任期2年間で初めて、FRBはインフレ抑制のために行動を起こす必要があるとの声を企業から聞いた」と述べています。
企業の現場からも「物価が問題だ」という声が上がり始めた、というわけです。
こうした生の声の変化が、FRB内のタカ派傾斜を後押ししています。
また、状況を複雑にしているのが11月の中間選挙です。
もし今年秋にFRBが利上げをすれば、かねて利下げを求めてきたトランプ大統領から、政治的な圧力を受ける可能性があります。
実際、2024年にFRBが利下げした際、トランプ氏はそれを「政治的な動きだ」と批判した経緯があります。金融政策が政治と絡みやすい局面にある、という点も頭に入れておきたいところです。
ただし、大半のエコノミストは7月28〜29日のFOMCでは据え置きを予想しています。
ネイビー・フェデラルのヘザー・ロング氏は、「FRBはタカ派姿勢を強めているが、指導部は行動を急いでいない」と指摘。
「重要なのはインフレがどの程度の広がりを持ち、根強いかどうかで、それを見極めるには時間を要する」と述べています。
なお、ウォーシュ議長は前任のパウエル氏と違い、政策金利の方向を事前に市場へ示唆すること(フォワードガイダンス)に関心がないと明言しています。
つまり、市場は「次にどう動くか」を当局の言葉から読み取りにくくなっており、そのぶんFOMCの結果や経済指標へのサプライズ反応が大きくなりやすいのです。
初心者の方が押さえたいのは、「据え置き予想でも、油断は禁物」という点です。
投票権を持つタカ派3人が反対票を投じれば、市場が「意外にタカ派だ」と受け止め、サプライズでドル高・円安に振れる可能性があります。
「据え置き=何も起きない」ではないのですね。
3. なぜ「FRBのタカ派化」がドル円に効くのか
ここで、初心者の方に向けて、「FRBがタカ派だと、なぜドル円が上がる(円安になる)のか」を整理しておきましょう。
ここが分かると、ニュースの読み方がぐっと楽になります。
ポイントは金利差です。
お金は、より高い金利がつく通貨に集まりやすい性質があります。
FRBがタカ派=利上げに前向きだと、「米国の金利は高いまま、あるいはもっと上がるかも」との見方が広がります。
一方、日本の金利は上がってきたとはいえ、まだ低い水準です。
すると、投資家は低金利の円を売って、高金利のドルを買う動きを強めます。
これがドル高・円安につながるわけです。
逆に、FRBがハト派=利下げに傾けば、ドルの魅力が薄れて円高方向に振れやすくなります。
だからこそ、FRB高官の「タカ派かハト派か」という発言一つひとつに、市場は敏感に反応します。
今回のようにタカ派の声がFRBの中核に移りつつある局面では、ドルが下支えされやすく、ドル円は高止まりしやすい、という理解ができます。
前回までにお伝えした「強い米指標」や「有事のドル買い」と合わせて、いまはドルを支える材料が複数そろっている状態なのです。
4. 米国、9日連続でイラン攻撃 — 報復の応酬が激化
相場の底流にあるのが、中東情勢です。
米軍は19日に新たな空爆を発表し、これで9日連続の攻撃となりました。
報復の応酬は、一段と激しさを増しています。
何が起きているのか
- 米兵の死者が増加:ここ2日間で3人目の米兵死亡が明らかに。
17日にはヨルダンで米兵2人が攻撃で死亡し、2月末の開戦以降の米側死者は計17人となりました。 - 標的が拡大:攻撃対象は軍事施設だけでなく、橋やインフラ、港湾にも拡大。
イランの報復では、クウェートの発電・海水淡水化プラントが3日連続で標的となり、「深刻な被害」が出ています。 - 米軍が増派:米国はF16やF35などの戦闘機を中東に追加派遣したと報じられ、攻撃拡大の可能性が意識されています。
- ホルムズ海峡の緊張も継続:イラン革命防衛隊は、「調整と許可なくして、原油やガス、化学肥料は一滴たりともホルムズ海峡を通過させない」と警告しています。
イランは、暫定和平合意の条件を今後は順守しないと表明。
最高指導者モジタバ・ハメネイ師も、米国に「忘れられない教訓」を与えると警告しており、停戦が再び機能する見通しは乏しい状況です。
イランのアラグチ外相は、核開発を巡る一部の要求は「解決不能」なまま残る可能性があるとの認識を示し、悲観的な見方に拍車をかけています。
なお、周辺国も強く反応しています。
サウジアラビア、UAE、カタールは相次いで情勢緊迫化への懸念を表明。
UAEは、学校や病院、海水淡水化施設、エネルギー施設などの民間インフラへの攻撃を「いかなる状況下においても容認も正当化もできない」と非難しました。
地域全体を巻き込む形で緊張が広がっている点は、事態の長期化リスクを示しています。
相場への影響と市場の見方
この中東緊迫は、為替に2つのルートで効いてきます。
① 有事のドル買い
紛争で世界の不安が高まると、安全とされるドルが買われます。
週末に応酬が激化したことで、20日早朝もドル買いが優勢になりました。
これはドル高・円安の方向に働きます。
② 原油高
ホルムズ海峡を巡る緊張で原油価格が高止まりしています。
日本はエネルギーを輸入に頼るため、原油高は貿易赤字の拡大を通じて円売り圧力になります。
また米国では、原油高がインフレを再燃させ、前述のFRBのタカ派姿勢を後押しする要因にもなります。
つまり中東情勢は、「有事のドル買い」と「原油高」の両面から、ドル円を押し上げやすいわけです。
ただし、緊張が極端に高まって世界的な株安(リスクオフ)が進むと、逆に「リスク回避の円買い」が入る場面もあります。
中東ニュースは、原油価格と株価の反応をセットで見ておくと、方向を読みやすくなります。
もう一つ、注意したいのが「有事のドル買い」と「介入警戒」のせめぎ合いです。
中東緊迫でドル円が上昇し、約40年ぶり安値圏に近づくほど、日本の通貨当局による円買い介入への警戒も強まります。
つまり、中東要因で上がったドル円が、介入警戒で頭を抑えられる、という展開もあり得ます。
上値の重さと下値の堅さが同居する、方向感の出にくい地合いが続きやすい点は、トレードの前提として意識しておきたいですね。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 祝日の薄商いに注意
日本が休場だと参加者が減り、わずかな売買でも値が動きやすくなります。
過去には薄商いの時間帯に介入が行われた例もあり、急変への備えを忘れずに。
② 7月FOMCは「据え置き予想でもサプライズ余地」
大勢は据え置き予想ですが、投票権を持つタカ派3人の反対票次第では
市場が意外感からドル高・円安に振れる可能性があります。
「据え置き=安心」と決めつけないようにしましょう。
③ 中東は「有事のドル買い×原油高」で円安に働きやすい
9日連続の攻撃で応酬は激化。
基調としてはドル円を押し上げやすい一方、極端なリスクオフでは円買いもあり得ます。
原油と株価の反応をセットで確認しましょう。
FRBのタカ派論争と中東情勢
——2つの大きなテーマが、今週のFOMCに向けて相場を動かしそうです。
ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- タカ派/ハト派:インフレを抑える利上げに前向きが「タカ派」、景気を支える利下げに前向きが「ハト派」。
- FOMC:米国の金融政策を決める会合。7月は28〜29日に開かれ、据え置きが予想されています。
- ファミリーファイト:ウォーシュ議長がFOMC内の意見対立を指して使った言葉。「身内のけんか」の意味です。
- 薄商い:市場参加者が少なく、取引が細っている状態。わずかな売買でも値が動きやすくなります。
- 有事のドル買い:戦争や紛争など不安が高まったとき、安全とされるドルが買われる動きのこと。
- リスク回避(リスクオフ):不安が高まる局面で、投資家が安全な資産に資金を移す動き。円が買われることもあります。
- ホルムズ海峡:世界の原油輸送の大動脈。緊張が高まると原油が上がりやすくなります。
- 為替介入:急すぎる為替変動をおさえるため、通貨当局が市場でドルや円を売買すること。



