ドル円163円台前半で推移|ドイツ銀が指摘する日本の「政策の転換点」、日銀の利上げ加速観測とFOMC直前で割れる見方をやさしく解説
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ドル円は163円台前半で、約40年ぶりの安値圏が続いています。
「日本の政策が変わろうとしている?」
「日銀は利上げを早める?」
「来週のFOMCはどうなる?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
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ドル円は163円台前半、原油高で円安圧力が続く
— 今週の安値163円24銭を抜ける可能性も意識されています -
ドイツ銀が「日本は為替管理から利回り管理へ移る」と指摘
— 政策の軸足が変わるかもしれません -
日銀は利上げペース加速に柔軟、FOMCは直前でも見方が割れる
— 来週は日米の中銀会合が集中します
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は163円台前半 — 原油高が円売り材料に
まずは足元の相場から。
23日の東京市場で、円は対ドルで163円台前半で推移しています。
今週つけた約40年ぶりの安値163円24銭を抜ける可能性も意識される展開です。
背景にあるのは、やはり原油高です。
イエメンのフーシ派が紅海を航行中のサウジアラビアのタンカーを攻撃したと発表し、原油価格が大幅に上昇しました。
エネルギーをほぼ輸入に頼る日本にとって、原油高は貿易収支の悪化を通じた円売り材料になります。
株式市場は下落の見通し。
米アルファベットの決算は好調だったものの、設備投資見通しの上方修正が嫌気され、時間外で一時4%超下落しました。
テスラは利益が予想に届かず、IBMも通期見通しを下方修正。
AI関連の巨額投資が本当に成長につながるのか、投資家が慎重に見極め始めている様子がうかがえます。
債券も軟調の見込みです。
原油高を受け、米短期金利先物市場では来週のFOMCでの利上げの可能性が3割超まで織り込まれました。
国内でも円安を受けて、日銀内で物価の上振れリスクへの警戒が強まっています。
2. ドイツ銀が指摘する「日本の政策の転換点」
ここからが今回の注目テーマです。
ドイツ銀行のストラテジスト、マリカ・サクデバ氏が、日本は「財政・産業政策において極めて大きな転換点を迎えようとしている」と指摘しました。
どういうことか
きっかけは、高市政権が打ち出した370兆円の官民投資計画です。
これだけの大規模な支出を実現するには、財源を確保しつつ、財政の持続可能性も保たなければなりません。
そのためには、名目経済成長率を、お金を借りるコスト(金利)より高く保つ必要があります。
ここで問題になるのが、国債の利回り(金利)です。
日本は債務残高の対GDP比が200%を超え、他の先進国に比べて財政の余裕がとても乏しい。
すでに債務の持続可能性への懸念から国債利回りは上昇しており、30年債利回りは過去最高水準に達しています。
金利が上がれば、政府の利払い負担が増え、成長計画が成り立たなくなってしまいます。
「為替管理」から「利回り管理」へ
そこでサクデバ氏は、こう指摘します。
「財政の余地が最も重要な政策基準になりつつあるのであれば、政策の重点は為替管理から利回り管理へ、すなわちドル円相場の上昇の抑制から、10年債利回りと借り入れコストの抑制へと移る可能性がある」
分かりやすく言えば、これまで当局は「円安を止めること」に力を注いできました(為替介入など)。しかしこれからは、「金利を上げすぎないこと」のほうが優先されるかもしれない、という見立てです。
実際、介入をしても円は約40年ぶりの安値をつけており、為替対策の限界も見えています。
私たちにとって何を意味するか
サクデバ氏は、利回りを抑える具体策として、
①GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に国内投資の拡大を義務付ける
②日銀が債券市場でより積極的な役割を果たす
③日銀がハト派的な姿勢を維持する
——といったシナリオを挙げています。
FXトレーダーにとって重要なのは、その為替への影響です。
- ②日銀の債券買い支え、③ハト派姿勢の維持 → 金利を低く抑える=円安要因
- ①GPIFが海外資産を国内に戻す → 円を買い戻すことになる=円高要因
つまり、日本が「利回り管理」に軸足を移す場合、その手段によって円の方向が変わり得るのです。
「政府が円安を止めるはず」と単純に考えるのではなく、当局の優先順位が変わりつつある可能性を頭に入れておきたいですね。
3. 日銀は利上げペース加速に柔軟な姿勢
日本側でもう一つ大きなニュースが出ました。
日銀が、利上げペースを市場の見通しより加速させることに柔軟な姿勢だと報じられたのです。
なぜ加速の可能性が出てきたのか
理由は、物価の上振れリスクへの警戒です。
関係者によると、日銀は一時的な要因を除いた「基調的な物価上昇率」が、2%の目標にかなり近づいていると認識しています。
そのうえで、2%を上抜けていく可能性にも注意を払う必要性が高まっている、というのです。
とくに意識されているのが円安の影響です。
日銀は、為替の変動が消費者物価に及ぼす影響が従来より増しているとみています。
企業の価格転嫁が進む今、円安は値上げ交渉の材料になりやすく、物価をさらに押し上げるリスクになり得ます。
内田副総裁も6月会合後、円安が「予想物価上昇率や基調的な物価上昇率に影響する可能性が、これまでに比べメカニズムとして強くなっている」と述べていました。
市場参加者の見方
市場では、日銀の利上げペースは「半年に1回程度」との見方が多く、次回利上げは12月との予想が最多でした。
しかし今回の報道は、それより早い追加利上げが検討される可能性を示しています。
実際、金利スワップ市場が織り込む利上げ確率は、9月会合までが約31%、10月会合までが約85%、年内は100%超となっています。
新発2年国債利回りは1.475%と、1995年以来の高水準を更新しました。
ピクテ・ジャパンの田中純平氏は、「おそらく日銀も、円安リスクを相当程度警戒しているのではないか」と指摘。
財政拡張への懸念が広がる中、「為替介入に依拠した円安対策にも限界があるとみなされている」との見方を示しました。
相場の反応
この報道を受けて、円は一時162円69銭まで上昇(円高)しました。
ただしその後は再び163円台へ押し戻されています。
「日銀の利上げ加速観測」は円高材料になるが、それだけでは円安の流れを変えきれない
——足元の円安圧力の強さを示す動きと言えます。
なお、30〜31日の会合自体は、6月利上げの影響を見極める観点から政策金利の維持が決まる公算が大きいとされています。
4. FOMC直前でも見方が割れる — 「ウォーシュ流」の影響
米国に目を向けると、来週28〜29日のFOMCを控え、異例の事態が起きています。
会合直前なのに、利上げするかどうかで市場の見方が割れているのです。
30%対70%という「際どさ」
金利スワップ市場は、29日に0.25ポイントの利上げが実施される確率を約30%、据え置きの確率を約70%と織り込んでいます。
会合直前でこれほど見方が割れるのは、近年では極めて異例です。
原因は、これまでもお伝えしてきたウォーシュ議長のフォワードガイダンス廃止方針です。
歴代の議長は、次の政策を事前に市場へ示唆するのが慣行でした。
しかしウォーシュ議長は、それが当局者の判断を不必要に縛るとして、この慣行をやめる方針を打ち出しています。
市場参加者の見方
ビアンコ・リサーチのジム・ビアンコ氏は
「フォワードガイダンスがなければ、20%、30%、40%といった確率が織り込まれる状況が常態化するだろう。市場は新たな考え方への移行期にある」と指摘します。
一方、エコノミストの見方はより一致しています。
ブルームバーグが調査した76人のエコノミスト全員が、今回は政策金利の据え置きを予想しました。
RJオブライアンのジョン・ブレイディ氏も
「来週の利上げはないと依然考えている。ただ、市場は私が考える以上に際どい判断になることを示している」と語っています。
なお、市場では年内の利上げ自体は確実視されており、焦点は「その時期」だけ。金利スワップ市場は9月までの0.25ポイント利上げを完全に織り込み、来年3月までに2回超の利上げも想定しています。
トレーダーへの示唆
ここが実践的なポイントです。
ウォーシュ議長のもとでは、「事前に方向が読めない」のが当たり前になります。
予想が当たれば利益は大きいですが、外れたときの損失も大きくなる、ということ。
つまり、FOMCのような重要イベントでは、値動きが従来より荒くなりやすいわけです。
ポジションを小さめにする、損切りラインを必ず決めるなど、リスク管理を一段と丁寧にしたいですね。
5. 英インフレ率が15カ月ぶり低水準 — 英中銀の見方
最後に、英国です。
6月の英消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.6%上昇と、前月の2.8%から鈍化し、15カ月ぶりの低水準となりました。
市場予想の2.7%も下回り、予想を下回るのは3カ月連続です。
鈍化の理由と「一時的」との見方
主な要因は、米イランの戦争終結への期待から原油が下落し、ガソリンと軽油の価格が3.1%低下したこと。
食品や衣料品の値引きも物価を押し下げました。
英中銀が重視するサービス価格の上昇率も3.7%から3.6%へ鈍化しています。
ただし、この安心感は長続きしない可能性があります。
足元では中東の戦闘再燃でエネルギー価格が再び上昇しているためです。
KPMG英国のヤエル・セルフィン氏は
「6月が今年のインフレ率の底となる可能性が高く、エネルギー料金の上昇が短期的な見通しを複雑にするだろう」と指摘しました。
市場参加者の見方
今回の統計を受けても、市場の金利見通しに大きな変化はありませんでした。
市場は、英中銀が来週の会合(30日)では金利を据え置き、年末までに少なくとも1回0.25ポイントの利上げを実施すると織り込んでいます。
JPモルガン・アセット・マネジメントのザラ・ノークス氏は
「エネルギー価格の上昇率が高まっているとしても、英中銀が利上げを行うべき環境ではない。国内政策を巡る不確実性が高い中で、追加利上げは経済活動を不必要に圧迫するリスクもある」と述べています。
中央銀行ごとの温度差を整理すると、こうなります。
日銀は「利上げ加速に柔軟」、FRBは「年内利上げは確実視、時期が焦点」、英中銀は「弱い景気で利上げに慎重」
この差が、それぞれの通貨の強弱を生みます。
来週は日米英の中銀会合が集中するだけに、各国の温度差の変化に注目したいですね。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 当局の優先順位が「為替」から「金利」へ移る可能性
ドイツ銀の指摘どおり利回り管理が優先されれば、日銀のハト派維持や債券買い支えは円安要因に。
一方、GPIFの資金還流は円高要因です。
手段によって方向が変わる点を意識しましょう。
② 日銀の利上げ加速観測は円高材料だが、流れは変えきれず
報道で一時162円69銭まで円高になったものの、すぐ163円台へ。
円安圧力の強さを示しています。
来週の日銀会合での為替への言及に注目です。
③ 「読めないFOMC」に備える
直前でも30%対70%と見方が割れる異例の展開。
ガイダンスがない以上、結果次第で値が大きく飛びます。
ポジションは小さめに、損切りラインを決めて臨みましょう。
来週は日銀会合、FOMC、英中銀会合が集中する重要な週です。
ぜひ落ち着いて相場を見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- 利回り管理:国債の金利が上がりすぎないよう当局が抑えること。財政負担を軽くする狙いがあります。
- 名目経済成長率:物価の変動を含めた経済の成長率。これが金利を上回ると、債務は相対的に軽くなります。
- 基調的な物価上昇率:一時的な要因を除いた、物価の本当のトレンド。日銀が政策判断で重視します。
- 価格転嫁:仕入れコストの上昇を、商品やサービスの販売価格に反映させること。
- 金利スワップ市場:将来の金利を取引する市場。中央銀行の利上げ・利下げ確率を読み取る目安になります。
- フォワードガイダンス:中央銀行が今後の政策方針を前もって示すこと。ウォーシュ議長は廃止方針です。
- GPIF:公的年金を運用する世界最大級の機関投資家。海外資産を国内へ戻せば円高要因になります。
- サービス価格:英中銀が国内の物価圧力を測るうえで重視する項目。賃金の影響を受けやすいのが特徴です。



