米国、2日連続でイラン攻撃|中東情勢への警戒で円安進行、FOMC議事要旨の中身をやさしく解説
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【FXファンダメンタルズ分析法動画】
米軍が2日連続でイランを攻撃し、トランプ大統領は「停戦合意は終わった」と発言。
ドル円は一時162円台後半まで上昇しました。
「戦闘再燃で相場はどうなる?」
「なぜ円は買い戻された?」
「明け方のFOMC議事要旨は何を語った?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- 米国が2日連続でイランを攻撃、原油が急伸
— ドル円は一時162円台後半まで上昇しました - その後、円は162円台前半へ小反発
— 介入警戒に加え、「昨日は過敏に反応しすぎた」との反動も出ています - FOMC議事要旨では「数人」が利上げを主張
— インフレへの警戒感は強まっていたことが判明しました
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は162円台後半へ上昇 → その後前半に反落
まずは足元の値動きから。
円は8日の海外時間に一時162円台後半まで下落しました。
1日につけた約40年ぶり安値(162円84銭)が視野に入る水準です。
ただしその後は買い戻しが入り、9日の東京市場では162円台前半に小幅反発しています。
株式市場は反発。
前日の米国市場でエヌビディアやブロードコムなど半導体関連株が上昇し、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が持ち直したことが好感されました。
国内でも東京エレクトロンやアドバンテストに買いが入っています。
野村証券の伊藤高志氏は
中東情勢は気がかりだが、市場は株式から全面退避する場面ではないとみており、「長期的に高いリターンを見込めるAI・半導体には投資を続けてよい」というロジックが働いていると指摘。
ただし地政学リスクの高まりで、相場は神経質な動きが続きそうです。
一方、債券は下落(利回りは上昇)。
新発10年債利回りは2.88%まで上昇し、1996年以来の高水準を連日で更新しました。
原油高によるインフレ懸念に加え、国債需給や、日本銀行への利上げけん制への警戒も重しになっています。
なお、株式市場全体で見ると、地合いは必ずしも強くありません。
米国ではS&P500種構成銘柄の8割近くが下落するなど、上昇していたのは半導体などごく一部の銘柄にとどまりました。
原油高を受けて、景気に敏感なシクリカル株や内需株には売りが出る可能性も指摘されています。
「AI・半導体だけは強いが、それ以外は弱い」というまだら模様は、このところの相場の特徴と言えそうです。
2. 米国が2日連続でイランを攻撃 — 双方の主張と原油への影響
今回の核心は、米国による2日連続のイラン攻撃です。
何が起きているのか、双方の主張を整理します。
米国の主張
米中央軍は、イランのホルムズ海峡における航行の自由を脅かす能力をそぐため、追加攻撃を実施したと発表。
トランプ大統領は、今回の攻撃はイランによる商船攻撃への「報復」だと説明し、「もし再び起きれば、事態はさらに悪化する」とSNSに投稿しました。
また、暫定和平合意は「終わった」との認識を表明し、イランの港湾への封鎖再開や、原油輸出拠点であるカーグ島の「支配」が攻撃対象に含まれる可能性にも言及しています。
一方で、全面戦争への逆戻りは想定していないとも述べました。
イランの主張
イランは、米軍基地に対する大規模な報復作戦を警告しています。
双方が一歩も引かない構図です。
原油相場への影響
この応酬を受け、原油は急伸しました。
- 北海ブレント先物は8日に5.2%上昇し、一時1バレル=80ドルを突破(終値は78.02ドル)
- WTI先物も8日に4.4%上昇し、73.52ドルで終了
- 9日のアジア時間も続伸し、ブレントは一時79ドル台へ
TP ICAPのスコット・シェルトン氏は、「ホルムズ海峡が再び封鎖される事態になれば、原油価格はさらに10ドル上昇するだろう」と指摘。
一方で「原油の流れが維持されれば、ここから大きく上昇することはないだろう。
ただ現時点では誰にも予測できない」とも述べています。カタリスト・エナジーのヘンリー・ホフマン氏も、事態がエスカレートすれば「地域のエネルギーインフラに深刻な被害が及び、価格急騰が一服した後も長期にわたり影響が残る恐れがある」と警戒しています。
なお、米国の商業用原油在庫は約4年ぶりの低水準にあり、緊張が再燃した場合に米国が「最後の供給者」の役割を果たせなくなるのでは、との見方も出ています。
在庫の余裕が乏しいぶん、価格が跳ねやすい状態と言えそうです。
原油だけでなく、石油製品の価格上昇も続いています。
ロシアが輸出禁止を発表したことで、ディーゼル価格は一時14%も上昇しました。
ウクライナによるロシアのエネルギー関連インフラへの攻撃激化に加え、ホルムズ海峡の実質閉鎖による世界的な製油能力の逼迫(ひっぱく)が背景です。
中東だけでなく、東欧情勢もエネルギー価格に絡んでいる点は、押さえておきたいポイントです。
市場参加者の見方
ユーラシア・グループのグレゴリー・ブリュー氏は
「今回の小競り合いは、覚書の内容が曖昧なことに加え、ホルムズ海峡におけるイランの位置づけが不透明なことに起因している」と分析。
「結果として衝突は増えるだろうが、本格的な戦闘再開には至らない公算が大きい」との見方を示しました。
ホルムズ海峡の通航量が戦前の水準に戻るには、さらなる時間を要するとも述べています。
3. 円安進行のなかの「介入警戒」と「反動」
中東情勢の緊迫を受けて円安が進む一方、介入警戒感から円が買い戻される場面も見られました。ここが今回のポイントです。
なぜ162円台前半へ戻したのか
理由は2つあります。
理由① 介入警戒
1日の安値(162円84銭)に近づくなかで、通貨当局による円買い介入への警戒が強まり、いったん円を買い戻す動きが出ました。
おさらいすると、為替介入とは、行き過ぎた円安を抑えるために当局がドルを売って円を買う操作のこと。
この水準に近づくと、市場は常にその可能性を意識します。
理由② 「過敏な反応」への反動
セントラル短資FXの富永貴之氏は、昨日は中東リスクに「マーケットが過敏に反応しすぎた」と指摘し、その反動が出ていると述べました。
市場は「本格的な戦闘再開や緊迫化が一段と進み、原油価格がさらに上昇するシナリオまでは描いていない」と冷静な見方を示しています。
つまり、いったん行き過ぎた円安が、「まだ最悪のシナリオではない」という見直しによって、一部巻き戻された形です。
ただし、これは楽観というより「様子見」に近く、状況次第でいつでも円安方向に戻り得る点は注意しておきましょう。
実際、富永氏も「本格的な戦闘再開シナリオまでは描いていない」としつつ、それはあくまで現時点での見立てにすぎません。
ホルムズ海峡やカーグ島を巡る動き次第では、この前提はいつでも覆り得ます。
骨太の方針への不安も円売りを後押し
もう一つの重しが、おなじみの「骨太の方針」への不安です。
高市政権が拡張財政政策と、日銀への財政従属的な金融政策姿勢を鮮明にすることへの懸念から、債券利回りは2.9%台を試す可能性も出てきました。
原油高によるインフレ懸念の再燃は、この財政懸念にとって「泣きっ面に蜂」の状態。中東発の材料と、日本国内の財政懸念が重なり合って、円売りの持続的な圧力になっているわけですね。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之氏は
財政悪化が意識されて国債需要は強くなく、「需給懸念から売られやすい」と指摘。
この日行われた5年債入札についても、無難からやや弱い結果を予想しています。
4. 明け方のFOMC議事要旨 — 「数人」が利上げを主張
最後に、明け方(日本時間9日)に公表された6月FOMC議事要旨の中身を見ていきましょう。
中身のポイント
議事要旨によると、6月16、17日の会合では数人の当局者が、その場での利上げに論拠があるとみていたことが分かりました。
最終的には全会一致で据え置きを決めましたが、内部では引き締めを求める声があったわけです。
さらに、次のような点も明らかになりました。
- 労働市場への懸念はやや後退、インフレへの警戒は強まった
— 参加者は「物価安定への上振れリスクは引き続き高い一方、雇用の下振れリスクはやや和らいだ」と総じて指摘 - シナリオ別の議論
— インフレが鈍化するシナリオでは「据え置き、あるいはいずれ利下げ」との見方が大勢だった一方、AI主導の旺盛な需要やエネルギー高、関税を背景にインフレが高止まりするシナリオでは、「ある程度の政策引き締めが正当化される可能性が高い」との認識で一致 - 声明文の見直しを議論
— 6月17日の声明はすでに従来より短くなっていましたが、議事要旨では、声明について「大幅な見直しを検討すべき時期」との認識で幾人かの当局者が一致していたことも判明 - GDPは堅調との予想を維持
労働市場は引き続き安定しインフレ圧力の要因にはなっていない、との認識
このほか、最新の金利予測分布図(ドットプロット)では、9人の当局者が年内に少なくとも1回の利上げを予想し、うち6人は少なくとも2回の利上げを見込んでいたことも改めて示されました。
残る9人は据え置きまたは利下げの予想。
フォワードガイダンスに批判的なウォーシュ議長は、自身の金利見通しを提出していません。
「賛否がちょうど半々に割れている」という構図は、FRB内の意見の幅広さを物語っています。
市場参加者の見方
この議事要旨で興味深いのは、「もしインフレが高止まりすれば利上げ」というシナリオが、まさに今の中東情勢で現実味を帯びつつあるという点です。
議事要旨自体は3週間前の議論の記録ですが、原油急騰というその後の展開と重ね合わせると、「インフレ高止まりシナリオ」への注目度は高まっていると言えます。
一方で、労働市場への懸念が和らいでいたとの記述は、7月2日発表の弱い雇用統計より前の情報であることに留意が必要です。
議事要旨は「過去の一枚の写真」であり、その後の材料(弱い雇用統計、原油急騰)を重ねて、今の状況を立体的に見る必要があります。
なお、「数人が利上げを主張していた」という事実そのものは、市場にタカ派的な印象を与えるものです。
中東発の原油高とあわせて、年内利上げ観測を下支えする材料として意識されやすいでしょう。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 「過敏反応の反動」は一時的、油断は禁物
昨日の急落が「行き過ぎ」と評価されて円が戻していますが、戦闘の帰趨(きすう)次第で情勢はすぐに変わり得ます。
原油とホルムズ海峡のニュースからは目を離さないようにしましょう。
② 162円84銭は「介入アラート」の生きた節目
この水準に近づくたびに、介入警戒による買い戻しが観測されています。
円安方向のポジションは、この節目付近での急変に備えて損切りラインを決めておきましょう。
③ 議事要旨は「過去の記録」、最新材料と重ねて読む
6月時点の議論(利上げ論拠あり、労働懸念は後退)は、その後の弱い雇用統計や原油急騰と照らし合わせて解釈する必要があります。
単体の情報で判断せず、時系列で状況を追いましょう。
中東情勢、介入警戒、日本の財政懸念
——複数の材料が絡み合う神経質な相場が続いています。
原油価格とホルムズ海峡の動向、そしてカーグ島を巡るトランプ大統領の発言の行方を、ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- ホルムズ海峡:世界の原油輸送の大動脈。緊張が高まると原油が上がりやすくなります。
- 有事のドル買い:戦争や紛争など不安が高まったとき、安全とされるドルが買われる動きのこと。
- 為替介入:急すぎる為替変動をおさえるため、通貨当局が市場でドルや円を売買すること。
- FOMC議事要旨:FOMCでの議論の詳細な記録。会合の約3週間後に公表されます。
- ドットプロット:FOMC参加者の金利見通しを点で示した図。
- 財政従属:金融政策が物価の安定より政府の財政運営を優先させられる状態。通貨の信認を損なう恐れがあります。
- タカ派/ハト派:引き締め(利上げ)に前向きが「タカ派」、緩和(利下げ)に前向きが「ハト派」



