続く円安圧力と介入警戒|元財務官「円は2割過小評価」発言、ISM結果と米利上げ観測後退・モルガンSの新戦略をやさしく解説
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ドル円は162円台前半、約40年ぶりの円安水準が続いています。
「介入はいつ来る?」
「元財務官の『円は2割過小評価』ってどういう意味?」
「昨日のISMで何が分かった?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- 円は162円台前半で、介入警戒と先安観が綱引き
— ヘッジファンドの円売りは2007年以来の強さです - 元財務官・山崎氏が「円は最大2割過小評価、130円程度でもおかしくない」と発言
— 覆面介入の有効性にも言及しました - 昨日のISMは「雇用改善・価格圧力緩和」
— 米利上げ観測は後退し、モルガンSは金利差拡大を見込む新戦略を推奨しています
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は162円台前半 — 綱引きが続く
7日の東京市場で、円は対ドルで162円台前半で推移しています。
1日につけた約40年ぶり安値(162円84銭)に再び手が届く水準です。
株式市場では、銀行や保険、商社などバリュー(割安)株が買われTOPIXが上昇。
一方、サムスン電子が市場予想を上回る好決算を発表したのに株価は下落(期待値が高すぎた反動)し、日本の半導体関連の一角も弱く、日経平均の重しになっています。
2. 高まる介入警戒 — でも円は買われない
約40年ぶりの円安水準で、為替介入への警戒感は一段と高まっています。
ところが、円は積極的に買われていません。なぜでしょうか。
ヘッジファンドの円売りは「2007年以来」の強さ
米CFTC(商品先物取引委員会)のデータによると、ヘッジファンドなど投機筋の円売りポジションは約13万8000枚まで積み増され、2007年以来の強さとなりました。
円売りが「コンセンサストレード(みんながやる取引)」になりつつあるのです。
市場参加者の見方
三菱UFJ信託銀行の小野寺孝文氏は、163円に近づくと介入警戒が強まる一方、「日銀がはっきりとタカ派化したりしない限り、円を積極的に買う材料はない」と指摘。
ドル円は当面161〜162円で底堅く推移すると予想しています。
つまり、「介入が怖いから162円台後半には突っ込みにくい。
でも円を買う理由もない」
——この綱引きが、162円台前半でのもみ合いを生んでいるわけですね。
ただし、ポジションが円売りに極端に偏っているぶん、介入などのきっかけがあれば、巻き戻し(急な円高)が大きくなりやすい点は要注意です。
3. 円安が続く理由 — 「財政懸念」という重し
円安の根っこには、おなじみの日米金利差に加えて、日本の財政への懸念があります。
先月末に示された「骨太の方針」原案では、毎年言及されてきた「財政健全化」の文言が削除されました。
一方で、金融政策は強い経済の実現に向け適切に行われることが「非常に重要」と、前年より踏み込んだ表現に。
市場はこれを「高市政権の拡張財政と、日銀への利上げけん制」と受け止め、財政従属的な政策が円の価値を損なうとの懸念が強まっています。
債券市場でも同じ懸念が意識されています。
この日の30年国債入札について、SMBC日興証券の奥村任氏は「需要が足りるか微妙だ」とし、弱めの結果になる可能性を指摘。
財政拡張への警戒から、金利上昇(債券安)を試す展開がしばらく続くとみています。
「財政への信認」が、円と国債の両方を左右する
——ここが今の日本市場の急所です。
4. 元財務官・山崎氏「円は2割過小評価、130円でもおかしくない」
そんななか、注目の発言が飛び出しました。
元財務官の山崎達雄氏が、足元の円相場について「最大2割程度は過小評価されている」「水準としては130円程度でもおかしくない」と述べたのです。
ポイントを整理します。
- 「経済のファンダメンタルズからのかい離は限界に近づいている」
— これ以上の円安は進みにくいとの見方です。
市場の一部で「1ドル=200円」が意識されるのは、むしろトレンド転換のクライマックスが近い表れだと指摘しました。 - 日米金利差は「縮小方向」
— 日銀は利上げに向かう一方、FRBの次の行動が利上げかは「五分五分」
金利差はむしろ縮まる、との分析です。 - 「高市政権は利上げを阻止しているわけではない」
— 植田総裁と高市首相の面会後に日銀が利上げを実施している点を挙げ、市場の「利上げけん制」観測は行きすぎとみています。 - 覆面介入は「有効な手法」
— 投機筋との長期戦では、事前通告なしの覆面介入で小刻みに対応し、疑心暗鬼にさせるのが考えやすいと発言。
「いつ介入が行われてもおかしくない」とも述べました。 - 「為替介入について、今ほど米国当局が理解を示していたことはない」
— ただし日米協調介入は、米国にとってドル売りになるためハードルが高い、との見方です。
山崎氏は、過去に35兆円規模の介入を担った為替の実務家。
その人物が「円安は行きすぎ」「覆面介入はいつでもあり得る」と語った意味は軽くありません。
円売りに傾いた市場への、静かな警鐘と言えそうです。
5. 昨日のISM非製造業指数 — 「雇用改善・価格圧力は緩和」
昨夜発表された6月の米ISM非製造業総合景況指数は54.0と、市場予想にぴたり一致(前月54.5)。
拡大圏を保ちつつ、小幅に低下しました。注目は中身です。
- 雇用指数は51.2へ大幅上昇
— 2024年10月以来の大きな伸びで、今年2月以来の高水準。
先週の弱い雇用統計とは異なる姿を映しました。 - 仕入価格指数は67.7へ低下
— 引き続き高水準ながら、4カ月ぶりの低さ。
米イラン暫定合意で石油・ガソリン価格が下がったことが効いています。
前回の記事で「価格指数が下がるかどうかがインフレの体温計」とお伝えしましたが
結果は「景気は堅調のまま、物価圧力はやや緩和」という、ドルにとってどちらとも言い切れない内容でした。
なお、ISMの委員長は「6月に供給不足が報告された商品は、すべてデータセンター建設に不可欠な資材」と指摘。
AIブームが物価に与える影響は、引き続き火種として残っています。
6. 米利上げ観測の後退と、モルガンSの新戦略
弱い雇用統計とISMの価格圧力緩和を受けて、米利上げ観測は後退しています。
ここで注目したいのが、モルガン・スタンレーの新しい戦略です。
同社は、イールドカーブのスティープ化(短期金利が長期金利より大きく下がり、利回り曲線の傾きが急になること)を見込むポジションを推奨しました。
具体的には、米7年債と30年債の利回り差(現在65bp前後)が100bpまで拡大すると予想しています。
理由はシンプルで、「市場はまだ利上げを織り込みすぎている」から。
市場は年内1回の利上げを見込んでいますが、モルガンSは「年内利上げなし、来年3月には利下げ」と予想。
もし利上げがないなら、織り込まれた分の短期金利は下がる=カーブは立つ、という読みです。
利上げ観測が後退すれば、ドルの支えも弱まります。
円売り一色の市場にとって、これは見逃せない「逆方向のシナリオ」ですね。
7. ウォラーFRB理事 — 「フォワードガイダンスは有益」
FRB内からは、ウォーシュ議長と少し違う声も出ました。
ウォラー理事は6日、議長が取りやめた「フォワードガイダンス(政策方針の事前提示)」について、「依然として有益なツールだ」と発言したのです。
ウォラー氏は、コロナ禍のインフレ局面ではガイダンスが利上げ前から金融環境を引き締める効果を発揮したと評価。
一方で、運用が硬直的になり政策の足かせになった局面もあったとし、「科学というよりアートだ」と表現しました。
そして、「政策反応関数(データにどう反応するか)が市場に理解されていないなら、当局は説明する必要がある」とも述べています。
市場にとってこの発言は、「FRB内でも情報発信のあり方を巡って温度差がある」ことを示すもの。
ウォーシュ体制の"静かな中央銀行"路線が一枚岩で進むのか、今後の見どころです。
8. シュナーベルECB理事 — 「戦前には戻っていない」
最後に欧州です。
ECBのシュナーベル理事は6日、「原油価格の下落は戦争前の状況に戻ったことを意味するのか。私はそうは思わない」と発言しました。
- 暫定和平合意は「なお脆弱」で、ガス価格は戦争前を約40%上回ったまま
- 「総合インフレ率はピークから低下したものの、コアインフレ率の反応は鈍く、勢いはまだ強い」
市場では年内のECB追加利上げ観測が後退していますが、最タカ派のシュナーベル氏は警戒を緩めていません。
「利上げ打ち止め」か「もう1回」か
——ECB内の綱引きは続いており、この方向感がユーロの強弱を左右します。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 円売りは「混雑した取引」
— 巻き戻しに注意
ヘッジファンドの円売りは2007年以来の強さ。
偏りが大きいほど、覆面介入などのきっかけで急な円高が起きやすくなります。
円安方向に傾けるなら、損切りラインは必須です。
② 「覆面・小刻み」の介入シナリオを頭に入れる
元財務官が「いつ介入があってもおかしくない」「覆面で小刻みが考えやすい」と明言。
事前の警告なしに来る前提で構えましょう。
③ 米利上げ観測の後退はドルの逆風になり得る
弱い雇用統計、ISMの価格圧力緩和、モルガンSの「年内利上げなし」予想——利上げ観測がさらに崩れれば、ドル高の土台が揺らぎます。
円売り一辺倒ではなく、両方向のシナリオを持っておきたいですね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- コンセンサストレード:多くの市場参加者が同じ方向に張っている取引。偏りが大きいほど、巻き戻し時の反動も大きくなります。
- 覆面介入:当局が実施を公表せずに行う為替介入。投機筋を疑心暗鬼にさせる効果があります。
- 財政従属:金融政策が物価の安定より政府の財政運営を優先させられる状態。通貨の信認を損なう恐れがあります。
- ファンダメンタルズ:金利や物価、財政など、相場の土台となる経済の基礎的条件。
- イールドカーブのスティープ化:短期金利が長期金利より大きく下がり、利回り曲線の傾きが急になること。
- フォワードガイダンス:中央銀行が今後の政策方針を前もって示すこと。ウォーシュ議長は取りやめ、ウォラー理事は有益と評価しています。
- コアインフレ率:変動の大きいエネルギー・食品を除いた物価上昇率。物価の「基調」を示します。
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