介入警戒でも円の上値は重い|財政懸念と金利差の円売り、原油安・英財務相人事、今夜のISM非製造業指数で見る米インフレをやさしく解説

 












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ドル円は161円台半ば〜後半。

介入警戒があるのに、なぜ円は買われないのでしょうか。

「財政懸念って何?」

「原油はなぜ下がっている?」

「英国の財務相人事がなぜ市場を騒がせるの?」

「今夜のISM非製造業指数はどう見る?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。

むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。





まずは全体像から(先に結論をお伝えします)

いま相場で起きていることを、先に3点でつかんでおきましょう。

  1. 介入警戒があっても、円売りが優勢
    — 日本の財政拡張への懸念と日米金利差が、円の上値を抑えています

  2. 原油は下落基調
    — ホルムズ海峡の輸送回復とOPECプラスの増産で、供給過剰への懸念が強まっています

  3. 今夜は米ISM非製造業指数
    — 数字そのものより、約4年ぶり高水準の「仕入価格指数」でインフレの体温を測るのがポイントです

それでは、一つずつ見ていきましょう。





1. ドル円は161円台半ば〜後半 — 上値の重い円

まずは足元の相場から。

6日の東京市場で、円は対ドルで161円台半ばに弱含んで推移しています。


先週2日の弱い米雇用統計で一時160円64銭まで買われた円ですが、その反発は続かず、じりじりと円安方向へ戻ってきました。

1日につけた約40年ぶり安値(162円84銭)よりは円高の水準ですが、「介入警戒があるのに、円が買われない」という状態です。


株式市場は、原油安を背景に景気への強気な見方が広がり、AI関連以外の機械や自動車などに買いが入ってTOPIX(東証株価指数)が続伸。

日経平均は一時600円超上げる場面もありましたが、AI・半導体関連は売り買いが交錯し、不安定な動きです。


東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二氏は、週末に為替介入の動きが見られなかったことから、「次の介入は祝日の20日まで当面ないのではないか」という見方が円安に振れる一因になっており、それが株式にはプラスだと話しています。




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2. 介入警戒でも円が売られる理由 — 財政懸念と金利差

ここが今回のいちばんのポイントです。

介入への警戒感が残っているのに、なぜ円売りが優勢なのでしょうか。

理由は大きく2つあります。


理由① 財政拡張への懸念 — 「骨太の方針」が重しに

1つ目は、日本の財政への懸念です。

政府が今月閣議決定する経済財政運営の指針「骨太の方針」では、日銀に政府と歩調を合わせるよう求める姿勢が示されています。

市場はこれを、「インフレ抑制よりも財政を優先する(財政従属的な)政策が進み、円の価値を損ないかねない」と受け止めています。


さらに、高市政権が掲げる370兆円の官民投資計画の財源がはっきりしないことも不安材料です。

「大きくお金を使うのに、その裏付けが見えない」
——この不安が、円と日本国債の両方を売らせているわけです。

実際、債券市場では新発10年債利回りが一時2.8%まで上昇(価格は下落)しました。


理由② 日米金利差 — 円売りの根っこは変わらず

2つ目は、おなじみの日米金利差です。

日本の金利は上がってきたとはいえ、米国と比べればまだ低い水準。金利の低い円を売って、利回りの高いドルを持つ動きが続いています。


市場参加者の見方

  • みずほ銀行の長谷川久悟氏
    「骨太の方針」への懸念から円安に向かいやすい地合いだと指摘。
    一方で、「具体的な中身が示されて市場の信認を得られれば、円高に向かう可能性はある」とも述べています。
    つまり、財政への「不信」が円安の一因なら、「信頼」を取り戻せば円高材料にもなり得る、というわけですね。

  • 野村証券の後藤祐二朗氏
    当局の介入について「強い口先介入は見られないが、目先は覆面での介入リスクを含め、市場の警戒は維持される」との見方です。
    「覆面介入」とは、当局が実施を公表せずにひそかに行う介入のこと。
    表向き静かでも、不意打ちのリスクは残っている、と心に留めておきましょう。

  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介氏
    債券について、財政拡張や、日銀の対応が物価に後れを取る「ビハインド・ザ・カーブ」が意識され、「全体としては買われにくい」と指摘しています。


まとめると、「介入警戒(円高要因)」と「財政懸念+金利差(円安要因)」の綱引きで、円安側がやや優勢
——これが今の構図です。




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3. 原油価格の下落 — 供給過剰への懸念

次に、相場全体の土台になっている原油価格を見ていきましょう。

原油はアジア時間6日に下落し、北海ブレント原油は1バレル=72ドルを下回り、WTIは69ドル近辺で推移しています。


下落の理由は2つ

① ホルムズ海峡の輸送回復
米国の護衛下にあるホルムズ海峡の航路では、石油・ガス輸送に回復の兆しが見られました。
前日には複数の船舶が理由不明のUターンや迂回をしていましたが、輸送が続いていることが確認され、供給不安が和らいでいます。

② OPECプラスの増産合意
OPECプラス(OPECと非加盟産油国の枠組み)の主要7カ国は、8月の生産枠を日量18万8000バレル追加で引き上げることで合意しました。
サウジアラビアとロシアが主導し、数年前に始めた減産の一部を巻き戻す形です。
市場への供給が今後さらに増える、との見方が強まりました。


市場の見方 — 「供給過剰」への警戒と、日本へのプラス

「輸送は続く、しかも増産」
——この組み合わせで、市場では供給過剰(モノ余り)への懸念が強まっています。

だからこその原油安です。


原油安は、資源をほぼ輸入に頼る日本経済にはプラス材料です。

企業のコストが下がり、株式の買い材料になります。また、世界的にインフレ圧力をやわらげる方向にも働きます。

一方で、原油安は「輸入代金のためのドル買い」を減らすため、理屈のうえでは円を支える要因でもあります。

それでも円が売られているのは、財政懸念と金利差の力がそれを上回っている、ということですね。





4. 英次期財務相にミリバンド氏? — 市場が警戒する理由

海外の政治にも、市場を動かす材料が出ています。英国の次期財務相人事です。

バーナム次期首相の「最重要人事」

英国では、スターマー首相の退陣を受けて、マンチェスター前市長のバーナム氏の次期首相就任が確実視されています。

労働党は7月9〜16日に党首選の立候補を受け付け、対立候補が現れなければバーナム氏が17日に党首、20日に首相に就任する見通しです。


その最大の焦点が財務相人事。ブックメーカー(賭け業者)のオッズでは、労働党の党首経験者で現エネルギー安全保障・ネットゼロ相のエド・ミリバンド氏が本命とされています。

ミリバンド氏はスターマー氏の退陣を後押しし、バーナム氏に経済政策で助言するなど、政権交代の立役者でもあります。


市場の見方 — 「借り入れ増」への不安

市場が警戒しているのは、左派のミリバンド氏が財務相になれば、政府の借り入れ(国債発行)を増やすのではないかという点です。

借金が増えるとの見方が強まると、その国の国債が売られて金利が上昇し、通貨(ポンド)にも売り圧力がかかりやすくなります。


ここで気づいた方もいるかもしれません。

これは、日本の円が「財政懸念」で売られているのと同じ構図です。

英国でも日本でも、「財政への信認」が通貨の価値を左右する
——今の為替市場を貫く、大きなテーマと言えます。


エクセター大学のピッツ教授は、この人事を「バーナム氏のプロジェクト全体を特徴付けかねない重要な決定」と指摘しています。

20日の首相就任に向け、ポンドの動きにも目を配っておきましょう。





5. 今夜のISM非製造業指数 — 「仕入価格指数」でインフレを測る

最後に、本日最大の注目イベント、今夜発表の米ISM非製造業(サービス業)総合景況指数を攻略しましょう。

米国経済の約7割を占めるサービス業の景気を示す、重要な指標です。

50が拡大と縮小の分かれ目になります。


直近3回の予想と結果

ここ3カ月を振り返ります。

■ 3月分

  • 予想:55.0前後 → 結果:54.0(予想を下回る)
  • 2月(56.1)から低下。ただし価格指数が63→70.7へ急上昇し、約3年半ぶりの高水準に。イラン戦争による燃料高が背景です。

■ 4月分

  • 予想:53.7 → 結果:53.6(ほぼ予想どおり)
  • 新規受注が3年ぶりの大幅低下。価格指数は70.7で高止まりしました。

■ 5月分

  • 予想:53.8 → 結果:54.5(予想を上回る)
  • 3カ月ぶりの強い伸び。ただし雇用は3カ月連続で縮小し、価格指数は71.3へ上昇、約4年ぶりの高水準となりました。


今回(6月分)の見どころ

今回の市場予想は、5月の54.5から54.0へ低下です。

ただ、今夜いちばん注目すべきは、ヘッドラインの数字よりも仕入価格指数(価格指数)です。


直近の流れを見ると、価格指数は70.7→70.7→71.3と、高止まりどころか上昇を続けています。

サービス業のインフレは、いったん定着すると下がりにくいのが特徴。

ここが下がるかどうかで、「米国のインフレが本当に峠を越えたのか」を測ることができます。

先週の弱い雇用統計で利上げ観測は後退しましたが、価格指数が高いままなら「インフレはまだ手ごわい」ことになり、利上げ観測が再び強まる可能性もあるわけです。


結果ごとに考えられる値動き

  • 予想を上回る+価格指数も高い → ドル高・円安方向
    サービス業の強さとインフレの根強さが確認され、利上げ観測がぶり返してドル買いに。
    ただし162円台に近づくほど介入警戒がブレーキになります。

  • ほぼ予想どおり → 値動きは限定的
    ただし価格指数が大きく動けば、そちらに反応する可能性があります。
    ヘッドラインだけで判断しないようにしましょう。

  • 予想を下回る+価格指数も低下 → ドル安・円高方向
    景気減速とインフレ鎮静の両方が意識され、利上げ観測の後退からドル売りに。
    先週の弱い雇用統計と合わされば、円高が進みやすい組み合わせです。


注意点 — 「景気」と「物価」がねじれることも

やっかいなのは、「景気は弱いのに、物価は高い」というねじれた結果が出るケースです。

実際、直近も「雇用は縮小、でも価格は上昇」という強弱まだらの内容が続いています。

この場合、相場の反応は読みにくく、上下に振れやすくなります。

発表直後は値が飛びやすいので、無理にまたがず、数字の中身を確認してから動くくらいの慎重さが安心です。





まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと

① 円の重しは「財政」— 骨太の方針の中身に注目
介入警戒があっても、財政懸念と金利差が円を押し下げています。
今月の「骨太の方針」の具体的な中身が信認を得られるかどうかが、円の方向を左右します。

② 「覆面介入」のリスクは残る
口先介入は静かでも、当局が公表せずに動く可能性は指摘されています。
円安方向に傾けるなら、不意の急反転に備えて損切りラインを決めておきましょう。

③ 今夜のISMは「価格指数」が主役
ヘッドラインより仕入価格指数に注目。
約4年ぶり高水準の物価圧力が続くのか和らぐのかで、米利上げ観測、ひいてはドル円の方向感が変わってきます。

「財政への信認」という共通テーマが、円にもポンドにも影を落とす一日です。

今夜のISMと当局の動きを、ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。




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