ドル円157円台後半|ADP・ISM結果と明日の米雇用統計の見方、BofAの「年末149円」予想をやさしく解説
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【FXファンダメンタルズ分析法動画】
ドル円は157円台後半でもみ合い。
昨夜のADPは予想を下回り、ISMは仕入れ価格が急上昇しました。
「明日の雇用統計はどう構える?」
「BofAが円高予想に変えた理由は?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- ADPは予想を下回るも、労働市場は「安定」の範囲内
— 明日の雇用統計は8万人増の予想です - ISMは拡大継続、ただし仕入れ価格が70.3へ急上昇
— インフレ再燃の火種が残ります - BofAが年末予想を152円→149円へ円高修正
— 協調介入と日銀の早期利上げが理由です
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は157円台後半でもみ合い
まずは足元の相場から。
円は対ドルで157円台後半で推移しています。
介入警戒感が円売りを抑える一方、積極的に円を買う材料も乏しく、もみ合いが続いています。
注目したいのは、ドルも円も、他の通貨に対しては売られやすい状況にあることです。
中東の緊張緩和期待でリスクを取りやすい地合いとなり、資金が他通貨に向かっているためです。
ブルームバーグ・ドル指数は2カ月ぶりの安値をつけ、ドル安を追い風に金相場は大幅上昇しました。
ドル円という組み合わせで見ると膠着しているように見えても、その裏では通貨ごとの強弱が動いている
——この視点は持っておきたいですね。
国内では、政府が財源を明確にしないまま消費税減税を決めたことで、財政運営への懸念が円と債券の重しになっています。
2. 昨夜のADPとISM — 結果と市場の見方
ADP雇用統計 — 予想を下回る4万4000人増
7月のADP民間雇用者数は、前月比4万4000人増にとどまりました。
- 市場予想:6万5000人増 → 大きく下回る
- 6月分は9万8000人増から9万5000人増へ下方修正
業種別では、教育・医療サービスが3万6000人増となった一方、娯楽・ホスピタリティーは1万1000人減。増加分の半分超は小規模企業によるものでした。
ただし、注目すべき点があります。
転職した労働者の賃金上昇率が前年比7%と、約1年ぶりの高い伸びとなったのです。
ADPのネラ・リチャードソン氏は、
「転職者は足元の経済情勢に非常に敏感に反応する。こうした賃金の高い伸びは、労働市場の一部で人手不足が続いていることを示唆している」と述べています。
つまり、「採用の勢いは鈍化したが、労働市場が崩れたわけではない」というのが今回のメッセージです。
同じ職場にとどまった人の賃金上昇率も4.4%で横ばいを維持しています。
ISM非製造業 — 拡大継続、でも仕入れ価格が急上昇
7月のISM非製造業総合景況指数は54.1と、前月の54.0から小幅に上昇しました(市場予想54.5)。
50が拡大と縮小の分かれ目ですから、サービス業の活動は拡大を続けています。
中身を見ると、明暗が分かれました。
- 新規受注は加速、事業活動の指数は5カ月ぶりの高水準
— 消費需要の底堅さを示す - 仕入れ価格は70.3へ急上昇
— 米イランの暫定合意崩壊で原油・ガソリン価格が上昇したため - 雇用の指数は3月以来の大幅な人員縮小
— コスト高で採用を見合わせる企業も
前回の6月分では仕入れ価格が67.7へ低下していましたから、再び70台へ跳ね上がったことになります。
ISM委員長のスティーブ・ミラー氏は、
回答者による関税や中東紛争への言及頻度は大幅に減ったとしつつ、「米国のサービス経済は総じて底堅さを維持している」と分析しています。
相場への影響 — つまりどういうこと?
FXの観点で整理しましょう。
- ADPが弱い → 利上げ観測がやや後退 → ドル安要因
- ISMの仕入れ価格が急上昇 → インフレ再燃の警戒 → ドル高要因
この2つが相殺し合ったことが、ドル円が157円台後半でもみ合った一因です。
「雇用は鈍化、でも物価は高い」という組み合わせは、FRBにとって最も対応が難しいパターン。
だからこそ、当局者の見方も割れているわけですね。
3. 明日の米雇用統計 — 市場の見方
いよいよ明日7日、7月の米雇用統計が発表されます。
予想は8万人増
非農業部門雇用者数は、約8万人増が予想されています。
前回6月分は5万7000人増と予想を大きく下回りましたから、そこからはやや持ち直す見通しです。
押さえておきたいポイント
① ADPと雇用統計は食い違うことがある
ADPは民間部門のみ、雇用統計は公的部門も含みます。
ADPが弱くても雇用統計が強い、という展開は珍しくありません。
ADPだけで決め打ちしないようにしましょう。
② FRBの「軸足」を左右する
雇用統計でも労働市場の安定が確認されれば、FRBは引き続きインフレ対応に軸足を置き続けることが可能になります。
逆に雇用が大きく崩れれば、利上げどころではなくなります。
③ 結果ごとに考えられる値動き
- 予想を上回る → ドル高・円安方向(利上げ観測が強まる。ただし介入警戒が上値を抑制)
- 予想を下回る → ドル安・円高方向(利上げ観測が後退。介入警戒と相まって円高が進みやすい)
- ほぼ予想どおり → 平均時給の伸びに注目(賃金が強ければインフレ警戒からドル買いへ)
4. BofAの新予想 — 「年末149円」への円高修正
今回、最も注目すべきニュースがこれです。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)が、円の年末予想を大幅に円高方向へ修正しました。
従来152円 → 149円へ
BofAのアナリストは、足元の158円前後から年末までに149円まで円高が進むと予測。
従来予想の152円から、さらに円高方向へ引き上げました。
対ドルで約6%の円上昇にあたります。
7〜9月期の見通しも154円から153円へ修正しています。
理由① 協調介入の「意味」が大きい
BofAが重視するのが、日米協調介入の持つ意味です。
ここが初心者の方にも分かりやすいポイントなのですが、単独介入の場合、その国の外貨準備高が介入規模の上限とみなされます。
「日本が使えるドルには限りがある」と市場に見透かされてしまうのです。
ところが、米国が参加すれば、介入規模を制約する要因は事実上なくなるとBofAは分析します。
ドルを発行する当の米国が加われば、「弾切れ」の心配がなくなるからです。
だからこそ、投機筋は円を売り込みにくくなります。
理由② 日銀の早期利上げ
もう一つの理由が、日銀が今後数カ月以内に追加利上げに踏み切る可能性です。
BofAは、今回の介入によって「円防衛を成功させることがこれまで以上に重要になった」とし、そのためにはより速いペースでの利上げが必要になる可能性が高いと指摘。
さらに、10月まで待たず9月に利上げすれば、日銀はインフレ上振れリスクに先手を打つ決意を示せるとしています。
つまりどういうこと?
まとめると、BofAの見立てはこうです。
「介入で時間を稼ぎ、その間に日銀が利上げする。この組み合わせなら円高は定着する」。
連載でも繰り返しお伝えしてきた「カギは日銀」という論点と、まさに一致します。
BofAは、日本が長期的に円を支えるため、為替介入にとどまらない幅広い政策対応を取るとの見方が強まったとも指摘しています。
5. 高官発言と介入資金を巡る動き
FRB高官は「利上げ」姿勢を強める
FRB内では、利上げを支持する声が強まっています。
- ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁:
「今こそ緩やかな利上げを開始するべき時だ」と発言。
年末までに3回の利上げの可能性を問われ、「それは不可能ではない」と答えました。 - FRBのクック理事:
「近いうちに持続的なインフレ鈍化の兆候を確認できなければ、私は行動を取る用意がある」と表明。
インフレ率が2%へ下がるのを待つ余裕はないかもしれない、と警告しています。
FXへの影響は明確です。
利上げ観測が強まればドルが買われやすくなり、円高の勢いにブレーキがかかります。
日銀の利上げ観測と、FRBの利上げ観測
——どちらが優勢になるかで、ドル円の方向が決まります。
介入資金の調達方法にも注目
前回お伝えしたFIMAレポ(米国債を担保にドルを借りるFRBの制度)について、続報があります。
BofAの推計では、日本の財務省はすでに約1620億ドルの預金を保有しており、その多くはFRBの「外国RRPプール」で運用されているとみられます。
つまり、日本はFIMAレポを使わなくても介入資金を確保できる可能性があるわけです。
市場関係者は、日本が定期的に償還を迎える米財務省短期証券(TB)の再投資を見送る形で、最近の介入資金を賄ってきた公算が大きいとみています。
これがFXにどう効くかというと
——米国債を大量に売却せずに済めば、米金利の急上昇を避けられます。
米金利が上がればドル高になり、せっかくの円買い介入の効果が薄れてしまう。
だからこそ、資金調達の方法は介入の成否を左右する、隠れた重要ポイントなのです。
6. キャリー取引に異変 — 円が「借りられにくく」なった
最後に、FXに直結する重要な変化をお伝えします。
キャリー取引の調達通貨が、円から分散しているのです。
キャリー取引とは、低金利の通貨を借りて高金利の通貨に投資する手法。
長年、円が「借りる通貨」の代表でした。
それが円安の一因にもなってきました。
ところが介入後、この構図が変わりつつあります。
フォントベルのラローズ氏は
「現時点ではキャリー取引を続けるが、円は避けるつもりだ」と明言。
円は過小評価されており上昇余地があるため、借り入れ通貨としての魅力が低下したとの見方です。
ゴールドマン・サックスが調達通貨として選好するのはスイスフラン、ユーロ、カナダドルの順。
モルガン・スタンレーも、円買い介入が再び起きるリスクからユーロ・スイスフランへのシフトが進むと指摘しています。
ウェルズ・ファーゴに至っては、低金利のスイスフランを売って円を買う取引を推奨しています。
つまりどういうこと?
円が「借りられる通貨」から外れれば、恒常的な円売り圧力が減るということです。
これは円にとって、地味ですが本質的な追い風になります。
なお、2024年8月のような急激な巻き戻し(円急騰による市場混乱)の再来については、「ハードルは高くなった」との見方が優勢です。
シティグループのトボン氏は、
「あらゆる取引の資金が円で調達されていた」当時とは状況が異なると指摘。
調達通貨の分散が、市場の安定にもつながっているわけですね。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 明日の雇用統計は「賃金」までチェック
予想は8万人増。ADPが弱くても雇用統計が強いことはあります。
雇用者数だけでなく、平均時給の伸びも確認しましょう。
② BofAの円高予想は「介入+日銀」がセット
年末149円予想の前提は、協調介入の継続と日銀の早期利上げです。
どちらかが崩れれば前提も変わります。日銀の発信に注目しましょう。
③ 円の「構造的な追い風」が増えている
キャリー取引の調達通貨が円から分散し、恒常的な円売り圧力が減りつつあります。
介入だけに頼らない円高の土台ができ始めている点は、中期の視点として押さえておきたいですね。
明日の雇用統計で、相場の流れがはっきりするかもしれません。
ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- ADP雇用統計:民間部門の雇用者数を示す統計。政府の雇用統計の2日前に発表されます。
- ISM非製造業景況指数:米サービス業の景況感を示す指標。50が拡大と縮小の分かれ目です。
- 仕入れ価格(価格指数):企業が支払うコストの動向。インフレ圧力の体温計になります。
- 外貨準備:国が保有する外貨資産。単独介入では、これが介入規模の上限とみなされます。
- FIMAレポ:海外の当局が米国債を担保にドル資金を借りられるFRBの制度。
- 外国RRPプール:海外の当局がドル資金を預けられるFRBの制度。介入資金の待機場所にもなります。
- キャリー取引:低金利の通貨を借りて高金利の通貨に投資し、金利差で稼ぐ手法。
- 調達通貨:キャリー取引で「借りる側」の通貨。長年、円が代表格でした。



