ドル円157円台後半|予想を下回った米雇用統計と、次の焦点「CPI」の見方をやさしく解説
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先週末の米雇用統計が予想を大きく下回り、ドル円は158円台半ばから157円台後半へ。
次の焦点は12日の米CPIです。
「雇用統計は何を示した?」
「CPIで相場はどう動く?」
「中東はどうなった?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- 雇用者数が予想外の減少、過去分も下方修正
— 米早期利上げ観測が後退しました - ドル円は157円台後半へ戻すも、円の上値は重い
— 積極的に円を買う材料は乏しいままです - 次の焦点は12日の米CPI
— コアCPIは2021年3月以来の低水準になる可能性も指摘されています
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は157円台後半で推移
まずは足元の相場から。円は対ドルで157円台後半で推移しています。
先週の安値158円台半ばからは、やや円高方向に戻した形です。
戻した理由は、弱い米雇用統計を受けたドル売り。
ブルームバーグ・ドル指数は7日の取引で2カ月超ぶりの安値をつけました。
ただし、円の上値は重いままです。理由は2つあります。
① 中東情勢の不透明感
イランのアラグチ外相が米国との直接協議は現時点で不可能との認識を示し、原油価格が上昇。
これがドルを支えています。
② 介入警戒感の後退
円が157〜158円台まで戻ったことで、160円という「介入ゾーン」から遠ざかりました。
その結果、介入への警戒感が薄れ、円が買われにくくなっているのです。
SBI FXトレードの上田真理人氏は、
高市政権は「積極財政から心変わりしておらず、消費減税の財源も明確でないため円の信認が戻っていない」と指摘。
みずほ銀行の長谷川久悟氏も、
イランが強硬姿勢をとるなか「ドルは先週のようにじり高となるだろう」とみています。
株式市場は上昇。
米利上げ観測の後退で長期金利が下がり、半導体・AI関連株が買われました。
一方、債券は下落(利回りは上昇)。
日銀が公表した7月会合の「主な意見」がタカ派的だったためです(後述)。
2. 先週末の米雇用統計 — 予想外の減少
結果は「雇用者数が予想外の減少」
7日発表の7月の米雇用統計は、市場予想を大きく下回りました。
- 非農業部門雇用者数が予想外に減少(予想は約8万人増でした)
- 5月と6月の雇用者数も下方修正
前回もお伝えしたとおり、6月分でもすでに4月・5月が合計7万4000人下方修正されていました。
今回また下方修正が入ったことで、市場の受け止めは厳しくなっています。
市場参加者の見方 — 「思ったほどの勢いはない」
この結果を受けて、米労働市場に従来想定されていたほどの勢いがないとの見方が強まりました。
今年後半から来年にかけての利上げ観測が幾分弱まったことで、株式には追い風、債券も買われやすい地合いとなっています。
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二氏は、雇用統計を受けて米国は利上げを急がないとの見方から長期金利が下がり、株式にはプラスに働くと指摘しています。
FXへの影響 — つまりどういうこと?
整理すると、こうなります。
弱い雇用 → 利上げ観測の後退 → 米金利低下 → ドル安・円高
実際、ドル指数は2カ月超ぶりの安値をつけました。
ただし前述のとおり、円自体を買う材料が乏しいため、ドル安のわりに円高が進みにくい状況です。「ドルが弱い」と「円が強い」は別物
——この区別は、ドル円だけを見ていると見落としがちなポイントです。
3. 次の焦点は12日の米CPI
市場の関心は、すでに12日発表の7月米CPI(消費者物価指数)に移っています。
予想は「小幅上昇にとどまる」
エコノミストの予想中央値は、以下のとおりです。
- 総合CPI(前月比):6月の0.4%低下から、7月は0.1%上昇へ
- コアCPI(前月比):0.2%上昇
- コアCPI(前年比):2.5%上昇と、2月以来の低い伸び
つまり、6月にマイナスとなった反動で上昇に転じるものの、その伸びはごく小幅にとどまる見通しです。
イラン戦争を背景に強まっていたインフレ圧力が和らぐことを示す内容になりそうです。
背景には、エネルギー価格の落ち着きがあります。
ガソリン価格は7月前半に約4カ月ぶりの安値まで下落。
ジェット燃料価格の落ち着きで、航空運賃の低下も示される可能性があります。
市場参加者の見方 — 「タカ派の主張が揺らぐ」
注目すべき指摘があります。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン氏らは、次のように述べています。
「CPI統計は極めて重要だ。コア指数の前年比上昇率が2021年3月以来の低水準になる可能性を見込んでいる。
そうなれば、インフレは5年間にわたり目標を上回っているため、FRBは抜本的な措置を取る必要があるという、FOMC内のタカ派の間で広まっている主張が揺らぐことになる」
ここが重要です。
7月のFOMCでは、3人が利上げを支持して据え置きに反対票を投じました。
もしCPIがしっかり鈍化すれば、その"利上げ待望論"の根拠が弱まるわけです。
FXへの影響 — 結果ごとに考えられる値動き
- 予想を下回る(インフレ鈍化が鮮明) → ドル安・円高方向
弱い雇用統計に続いてインフレも落ち着けば、利上げ観測は大きく後退。
米金利低下を通じてドルが売られやすくなります。 - 予想を上回る(インフレ再燃) → ドル高・円安方向
中東発の原油高もあり、「インフレはまだ手ごわい」との見方が復活。
利上げ観測が再燃してドル買いに傾きます。 - ほぼ予想どおり → コアの前年比に注目
2.5%を下回るかどうかが、タカ派の主張が揺らぐかの分岐点になります。
なお、14日には7月の小売売上高と8月のミシガン大学消費者マインド指数も発表されます。
小売売上高は安定した伸びで消費の底堅さが示される見通し、消費者マインドは3カ月ぶりの低下が予想されています。
4. 日銀「主な意見」がタカ派 — 円の追い風
国内で見逃せないのが、日銀が公表した7月会合の「主な意見」です。
内容は明確にタカ派
「主な意見」では、次のような見方が示されました。
- 基調的な物価上昇率が2%程度で定着しつつある
- 物価の上振れリスク
- 市場想定より利上げペースが早まる可能性
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之氏は、
今回の「主な意見」はタカ派色が強く、金融政策を巡る「フェーズが変わった」と指摘しています。
FXへの影響 — つまりどういうこと?
これは円にとって明確な追い風です。
日銀の利上げペースが速まるとの見方が強まれば、日米金利差の縮小期待が高まります。
これまで円安の最大の原動力だった金利差が縮まるなら、円を売る理由も減るわけです。
実際、この「主な意見」を受けて中長期債の利回りが上昇しました。
債券市場は日銀の利上げを織り込み始めているということです。
前回お伝えしたBofAの「年末149円」予想も、日銀の早期利上げを前提にしていました。
介入+日銀の利上げという組み合わせが実現に近づけば、円高の持続性は高まります。
5. 中東情勢とベッセント長官の「真の狙い」
ホルムズ海峡の合意はなお不透明
期待が高まっていたホルムズ海峡の再開ですが、合意のめどは立っていません。
イランのアラグチ外相は、米国が暫定和平合意への違反を是正しない限り「交渉再開は不可能だ」と表明。
一方、トランプ大統領は「深刻なインフレに見舞われ、資金もないイランの状況をただ見守っている」と述べ、イランが経済的苦境で姿勢を軟化させるまで待つ構えを示しました。
イランのインフレ率は前年比77%に達しています。
イラン側の要求には、賠償、海上封鎖の解除、米軍撤収、制裁解除、凍結資産の解放が含まれ、隔たりは大きいままです。
加えて、いかなる合意も最高指導者ハメネイ師の承認が必要で、時間を要するとされています。
FXへの影響:合意が遅れるほど原油高が続き、ドル高・円安の圧力になります。
北海ブレント原油は83ドルを上回って取引を終えました。
ベッセント長官の狙いは「長期金利の抑制」
もう一つ、深い読みどころがあります。
ベッセント米財務長官による一連の措置の本当の狙いについてです。
同長官は過去1週間で、
①円買い協調介入の実施
②FIMAレポ(米国債を担保にドルを借りる制度)の拡充提唱
③四半期定例入札のガイダンス修正(長期債の発行減額に道を開く)
④ウォーシュFRB議長の擁護
——という複数の措置を講じました。
市場はこれらを、「長期金利の上昇を抑えたい」というシグナルと受け止めています。
JPモルガン・アセット・マネジメントのプリヤ・ミスラ氏は
「FRBと財務省は長期金利の水準を懸念し始めているに違いない」と指摘。
「財務省が金利市場の動きを認識しており、手元にあるさまざまな手段を使うことをためらわないとのシグナルと考えられる」と述べています。
つまりどういうこと? 円買い介入は、表向きは同盟国支援ですが、日本が円防衛のために米国債を売ることを防ぐ狙いもあった、ということです。
日本の金利上昇が米国債売りの一因となっていたためです。
FXへの影響:米当局が長期金利の上昇を抑えたがっているなら、米金利の急騰は抑えられやすい=ドル高の勢いも限定的になりやすい、と読めます。
ただしBNYのジョン・ベリス氏は
「採用された歳出政策と戦争を考えれば、長期ゾーンへの圧力を和らげるのは難しい」とも指摘しており、効果には限界がありそうです。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 「ドル安」と「円高」は別物
弱い雇用統計でドルは売られましたが、財政不安と中東リスクで円の上値は重いまま。
ドル円だけでなく、ドル指数や他通貨の動きもあわせて確認しましょう。
② 12日のCPIは「コアの前年比2.5%」が分岐点
これを下回れば、FOMC内のタカ派の主張が揺らぎます。
弱い雇用と合わされば、円高が進みやすい組み合わせです。
③ 日銀のタカ派化は円の追い風
「主な意見」で利上げペース加速の可能性が示されました。
介入だけでなく日銀が動けば、円高の持続性が高まります。
日銀関連の発信に注目しておきましょう。
雇用統計を通過し、次はCPI。
相場の流れが定まるかどうかの重要な週です。
ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- 非農業部門雇用者数(NFP):農業以外の雇用者の増減を示す、米雇用統計の中心的な数字。
- 下方修正:過去に発表された数字が、後から下向きに訂正されること。相場の見方を変える要因になります。
- CPI(消費者物価指数):物価の動きを示す代表的な指標。金融政策の判断に直結します。
- コアCPI:変動の大きい食品・エネルギーを除いたCPI。物価の「基調」を示します。
- 主な意見:日銀が金融政策決定会合の約10日後に公表する、委員の意見をまとめた資料。
- タカ派/ハト派:利上げに前向きが「タカ派」、利下げに前向きが「ハト派」。
- FIMAレポ:海外の当局が米国債を担保にドル資金を借りられるFRBの制度。
- ドル指数:主要通貨に対するドルの総合的な強さを示す指標。



