ドル円157円台後半で推移|昨夜のJOLTS結果と今夜のADP・ISM攻略、介入を巡る高官発言とホルムズ合意をやさしく解説
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ドル円は157円台後半で推移。今夜はADPとISMという重要指標が控えています。
「JOLTSは何を示した?」
「今夜の指標はどう構える?」
「ホルムズ合意で相場はどう動く?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- ドル円は157円台後半、介入後の戻りが続く
— 構造的な円安要因は変わっていません - 今夜はADPとISM非製造業
— 週末の雇用統計を占う重要な前哨戦です - ホルムズ海峡の合意が「きょう明日にも」
— 原油安が進めば、円安圧力を弱める材料になります
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は157円台後半で推移
まずは足元の相場から。
円は対ドルで157円台後半で推移しています。
7月末の協調介入で一時155円台まで急伸しましたが、
そこからじりじりと押し戻される展開が続いています。
理由は前回もお伝えしたとおり、介入以外に円を買う材料が乏しいからです。
財政悪化への懸念、日米の金利差、日銀の政策の遅れ
——これら構造的な円安要因は、介入では解決されません。
ただし今回は、円にとって明るい材料も出ています。
日本の賃金です。
6月の名目賃金(現金給与総額)は前年同月比3.4%増と、5カ月連続で3%を超えました。
5カ月連続で3%超えは1992年3月以来のこと。
実質賃金も1.6%増と、6カ月連続でプラスです。
これがなぜ円にプラスかというと、賃金上昇は日銀の利上げを後押しするからです。
大和証券の南健人氏は、
今回の結果は「賃上げモメンタムの維持を確認できる内容」とし、日銀の物価上振れリスクへの警戒も踏まえ「利上げペースは加速せざるを得ないだろう」と語りました。
次回利上げは10月が有力だが、9月の可能性も高まっているとの見方です。
実際、金利スワップ市場では9月会合での利上げ予想が約57%、10月会合までは約97%まで前倒しが進んでいます。
日銀会合前の7月29日時点ではそれぞれ30%弱、80%弱でしたから、大きな変化です。
介入+賃金の強さ+日銀の利上げ観測
——この3つがそろえば、円安基調に変化が出る可能性もあります。
2. 昨夜のJOLTS(求人件数) — 「安定した労働市場」を確認
昨夜発表された6月の米JOLTS(雇用動態調査)を見ていきましょう。
JOLTSは企業の求人件数を示す統計で、労働市場の需要の強さを測る指標です。
結果は小幅減、しかし内容は堅調
- 求人件数:735万9000件(市場予想745万4000件、前月753万7000件から減少)
- 前月分は759万4000件から753万7000件へ下方修正
- 一方で採用件数は小幅に増加、レイオフは限定的
減少の主因は、医療、娯楽・ホスピタリティー、卸売業などでの落ち込みでした。
逆に運輸・倉庫業では求人が増加しています。
注目は「失業者1人あたり求人件数」
FRBが労働需給のバランスを測る指標として重視するのが、失業者1人あたりの求人件数です。
今回はこれが約1件となり、労働需給がおおむね均衡した状態にあることが示されました。
2022年のピーク時には2件でしたから、当時の「人手不足で賃金が高騰する」状況からは、だいぶ落ち着いたことになります。
市場参加者の見方
ブルームバーグ・エコノミクスのイライザ・ウィンガー氏は、
「FRBにとって、6月のJOLTSは、賃金上昇を通じたインフレ圧力が労働需要の軟化によって今後も和らいでいく可能性が高いことを示している」と述べています。
つまり、「労働市場は安定しているが、過熱はしていない」
——これがJOLTSのメッセージです。
FRBにとっては、慌てて利上げする必要はないが、景気が崩れる心配も少ない、という安心材料になります。
ドルにとっては、極端な方向には作用しにくい内容でした。
3. 今夜のADPとISM — 直近3回の実績と攻略法
今夜は2つの重要指標が発表されます。
ADP雇用統計とISM非製造業景況指数です。
7日の米雇用統計を占う前哨戦として、市場の注目度は高いです。
ADP雇用統計とは
ADPは、米国の給与計算大手が集計する民間部門の雇用者数の統計です。
政府発表の雇用統計より2日早く出るため、「雇用統計の予告編」として注目されます。
■ 直近3回の予想と結果
- 4月分:予想9万9000人 → 結果10万9000人(予想を上回る。2025年1月以来の大きな伸び)
- 5月分:予想11万人 → 結果12万2000人(予想を上回る。2025年1月以来の最強月、8部門で増加と裾野が広い)
- 6月分:予想11万8000人 → 結果9万8000人(予想を大きく下回る。前月12万2000人から減速)
流れとしては、4月・5月は好調→6月は失速という形です。
6月は教育・医療が4万8000人と牽引したものの、娯楽・接客業は6カ月連続で弱い伸びにとどまりました。
ISM非製造業景況指数とは
米国経済の約7割を占めるサービス業の景況感を示す指標です。
50が拡大と縮小の分かれ目になります。
■ 直近3回の予想と結果
- 4月分:予想53.7 → 結果53.6(ほぼ予想どおり)
- 5月分:予想53.8 → 結果54.5(予想を上回る)
- 6月分:予想54.2 → 結果54.0(やや予想を下回るが、24カ月連続の拡大圏)
6月分の中身では、雇用指数が51.2へ大幅上昇(4カ月ぶりの拡大圏)、価格指数は67.7へ低下(2月以来初めて70を下回る)となりました。
「雇用は改善、コスト圧力は緩和」という、FRBにとって好ましい組み合わせです。
なお、8月3日に発表されたISM製造業指数は55.6と市場予想54.0を大きく上回り、2022年5月以来の高水準となりました。
雇用指数も2025年1月以来の拡大圏へ。
米経済の底堅さが改めて確認されています。
結果ごとに考えられる値動き
今夜の2指標について、シナリオを整理します。
- ADP・ISMともに強い → ドル高・円安方向
米経済の強さが確認され、FRBの利上げ観測が高まります。
ドル円は158円台を試す可能性も。
とくにISMの価格指数が再上昇すれば、インフレ再燃の警戒からドル買いが強まります。 - ADP・ISMともに弱い → ドル安・円高方向
労働市場の減速とサービス業の鈍化が意識され、利上げ観測が後退。
介入警戒と相まって、円高が進みやすくなります。 - 強弱まちまち → 値動きは限定的、ただし振れやすい
「ADPは弱いがISMは強い」といったねじれの場合、市場の解釈が分かれて上下に振れやすくなります。
中身を確認してから動くのが安全です。
今夜を狙ううえでの注意点
① ADPは雇用統計の"予想"ではない
ADPと政府の雇用統計は、しばしば方向が食い違います。
ADPが弱くても雇用統計が強いことは珍しくありません。
ADPだけで週末の結果を決め打ちしないようにしましょう。
② ISMは価格指数もチェック
ヘッドラインの数字だけでなく、インフレ圧力を示す価格指数を確認しましょう。
「景気は強いが物価も高い」なら利上げ観測が強まり、ドル高要因になります。
③ 介入警戒が上値を抑える可能性
強い指標でドル高が進んでも、円安方向では日米の介入警戒がブレーキになります。
上下どちらにも急変し得る局面として、損切りラインを決めて臨みましょう。
4. 為替介入を巡る高官発言とBofAの見解
前回お伝えした、ベッセント米財務長官によるFIMAレポファシリティー(日本が米国債を担保にドル資金を借りられるFRBの制度)の拡大要請について、続報が出ています。
BofAは「経済合理性を欠く」と懐疑的
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは、この制度の利用に懐疑的な見方を示しました。
同社は、「これに代わる流動性調達手段が存在することや、この制度のコストが高いことを考えると、日本の財務省がFIMAレポを利用する動機は薄い」と指摘。
「ベッセント氏はFIMAレポを米国債売却を回避する手段とみている可能性が高いが、経済合理性を欠くため、その利用に対して当行は懐疑的に見ている」と述べています。
つまり、ベッセント長官への"配慮"としては意味があるが、日本にとって経済的にはうまみがない、というわけです。
実際、この制度は翌日物ならFF金利の上限(3.75%)、1週間物ならOIS金利+25bpと、民間市場より意図的に高い金利が設定されています。
FXへの影響 — つまりどういうこと?
初心者の方向けに、これが為替にどう効くのかを整理します。
日本が円買い介入をするにはドルが必要です。
その調達方法は主に3つあり、それぞれ市場への影響が違います。
- 米国債を売却する → 米金利が上昇し、債券価格が下落するリスク。ドル高要因にもなり得るため、円買い介入の効果を打ち消しかねません。
- 外国レポプールから引き出す → 金融システム内の準備預金が増加
- FIMAレポを使う → FRBのバランスシートと準備預金が拡大
もし日本がFIMAレポを使わず米国債を売却すれば、米金利が上昇してドルが買われやすくなり、皮肉にも円安要因になる
——ここが重要なポイントです。
介入の資金調達方法ひとつで、その効果が変わり得るのです。
BofAが「日本はFIMAレポを使わないだろう」とみているなら、米国債売却による米金利上昇リスクを頭に入れておく必要があります。
なお、米国債市場では長期債の下落に備えたオプション買いが急増しており、ボラティリティー指標は約10週間ぶりの高水準です。
TDセキュリティーズのブルックス氏は
「連邦準備制度は前回会合後、市場の信認を失った」と指摘し、ガイダンスがない以上「市場は経済指標や当局者の発言に一段と敏感に反応し、高いボラティリティーが続く」と予想しています。
米金利が荒れれば、ドル円も振れやすくなる点は意識しておきましょう。
5. 米イランのホルムズ合意 — 「きょう明日にも」
中東からは、大きな進展の可能性が伝えられています。
合意が近づいている
ベッセント財務長官は、「イランと協議しており、きょうか明日にも海峡を開放するための合意に達する可能性がある」とCNBCで発言。
ルビオ国務長官も「協議は進展している」と述べました。
仲介国のカタールも、緊張緩和に向けた合意案が「当事者間で回覧されている」と明らかにしています。
さらに、イランが欧州諸国によるホルムズ海峡の機雷除去を認める方向で検討していることも報じられました。
これは公の立場からの譲歩であり、航行正常化に向けた大きな一歩となり得ます。
相場への影響 — つまりどういうこと?
この報道を受けて、原油は大きく下落しました。
北海ブレント原油は5.3%安の79.36ドル、WTIも5.7%安の75.77ドルで引けています。
一方、米国債は値上がり(金利は低下)しました。
FXへの影響は明確です。
- 原油安 → 日本の輸入コスト減 → 貿易赤字の縮小 → 円買い要因
- 原油安 → 米インフレ圧力の低下 → 米金利低下 → ドル安要因
つまり、ホルムズ合意が実現すれば、円安要因が一つ取り除かれるわけです。
連載で追ってきたとおり、原油高は今年の円安を支える大きな柱でした。
それが崩れれば、介入・賃金上昇・日銀の利上げ観測と合わさって、円高方向に効いてくる可能性があります。
ただし楽観は禁物
一方で、慎重な見方も必要です。
前回の停戦合意は、ホルムズ海峡の管理権を巡る対立で1カ月足らずで崩壊しました。
新たな合意がまた破綻すれば、米軍の攻撃とイランの報復が再び始まる可能性があります。
また、機雷除去には革命防衛隊(IRGC)の同意も必要で、イラン指導部内には「機雷除去は他国ではなくイランが担うべきだ」との意見もあるといいます。
米当局者はこれまでも「合意が近い」と繰り返してきましたが、実現していません。
合意成立のニュースが出るまでは、期待先行の域を出ないと構えておきましょう。
6. その他の注目材料
■ FRB高官のタカ派発言
カンザスシティー連銀のシュミッド総裁は、
「需要と投資の力強さを踏まえると、現在の金融政策スタンスは景気抑制的だとは思わない」とし、インフレを2%へ下げるには一段と引き締め的な政策が必要との認識を示しました。
一方、フィラデルフィア連銀のポールソン総裁は
金利について「オープンな姿勢を維持」としています。
FRB内の意見の割れは続いており、当局者発言のたびにドルが振れやすい状況です。
■ 日銀6月会合の議事要旨
「国債買い入れの狙いが財政ファイナンスや長期金利の引き下げと市場に受け取られると、日銀の信認に悪影響を及ぼす」との意見が出ていたことが判明。
また、ある委員は「数カ月に一度のペース」での利上げを主張していました。
日銀内にも利上げ加速を求める声があることは、円にとって支援材料です。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 今夜のADP・ISMは「価格指数まで確認」
ADPは雇用統計の予告編ですが、方向が食い違うこともあります。
ISMは景況感だけでなく価格指数もチェックし、インフレ再燃の有無を見極めましょう。
② 円の"援軍"が増えつつある
賃金3.4%増で日銀の利上げ観測が9月57%・10月97%まで前倒し。
加えてホルムズ合意で原油安が進めば、円安要因が減ります。
介入だけに頼らない円高の芽が出てきました。
③ 米金利の荒れに注意
FRBの信認が揺らぎ、米国債のボラティリティーは10週間ぶり高水準。
指標や高官発言への反応が過敏になっています。
指標発表前後はポジションを小さめに。
介入後の相場が本当に変わるのか、今夜の指標とホルムズ合意が試金石になります。
ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- JOLTS(雇用動態調査):企業の求人件数などを示す統計。労働需要の強さを測ります。
- 失業者1人あたり求人件数:労働需給のバランスを示す指標。FRBが重視しています。
- ADP雇用統計:民間部門の雇用者数を示す統計。政府の雇用統計の2日前に発表されます。
- ISM非製造業景況指数:米サービス業の景況感を示す指標。50が拡大と縮小の分かれ目です。
- 価格指数:企業が支払う仕入れコストの動向。インフレ圧力の体温計になります。
- FIMAレポファシリティー:海外の当局が米国債を担保にドル資金を借りられるFRBの制度。
- 名目賃金/実質賃金:実際に支払われた賃金が名目、物価変動を差し引いたものが実質です。
- ホルムズ海峡:世界の原油輸送の大動脈。開放が進めば原油安=円安要因の後退につながります。



