ベッセント長官が日銀に利上げ要請|ドル円159円台後半、米イラン応酬再開で160円トライも
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【FXファンダメンタルズ分析法動画】
G20の合間に、ベッセント米財務長官が植田総裁と片山財務相に直接「利上げ」を求めたと報じられました。
一方、米イランは約1カ月ぶりに攻撃を再開。
「円高材料と円安材料、どちらが勝つ?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- ドル円は159円台後半、160円トライの可能性も — 円高材料と円安材料が拮抗しています
- 米イランが約1カ月ぶりに攻撃を再開、原油が上昇 — トランプ氏は追加攻撃も検討と報じられました
- ベッセント長官が日本側に利上げを直接要請 — ただし市場の反応は限定的でした
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は159円台後半 — 綱引きの構図
まずは足元の相場から。円は対ドルで159円台後半で推移しています。
8月末に一時160円台へ乗せましたが、そこからやや戻した水準です。
いまの相場は、明確に2つの力がぶつかっています。
- 円を支える力:ベッセント長官の「より強い円」を支持する発言
- 円を押し下げる力:中東情勢の緊迫化と原油価格の上昇
三菱UFJ信託銀行の小野寺孝文氏は、トランプ氏のイランに対する発言で「緊張感が少し高まり、不透明感が出てきている」と指摘。
そのうえで、焦点がベッセント氏の発言から中東情勢に移れば「160円をトライしに行く可能性がある」と述べています。
つまりどういうこと?
市場の関心がどちらに向くかで、方向が決まる局面です。
「材料の綱引き」ではなく「市場の視線がどちらを向くか」
——この見方は、膠着相場を読むうえで実用的です。
国内債券も動いています。
長期金利は2.965%まで上昇し、1996年以来の高水準を更新。節目の3%が目前です。
背景は、来年度予算の概算要求が一般会計で143兆円前後と過去最大になると報じられ、国債発行増への警戒が強まったことです。
2. 米イランの攻撃再開 — 中東リスクが再燃
何が起きたのか
8月31日、米国とイランは約1カ月ぶりに攻撃の応酬を再開しました。
さらに、イランはホルムズ海峡でタンカーが機雷に接触したと主張しています。
トランプ大統領は、イランに対する追加的な攻撃を検討していると報じられ、原油供給への懸念が再燃しました。
米原油先物は上昇し、1バレル86ドル台で推移しています。
なお、米国側ではドリスコル陸軍長官が辞表を提出したことも明らかになりました。
ヘグセス国防長官との不和が伝えられており、今後の対イラン戦略に影響が出るのかが注目されています。
相場への影響と市場参加者の見方
この流れを受け、米国株は幅広い銘柄が売られ、米長期金利は昨年1月以来の高水準へ上昇しました。
日経平均も一時700円超下落しています。
野村アセットマネジメントの石黒英之氏は、
中東緊迫による原油高と金利上昇への警戒が日本株の重しになると指摘。
ただし、「企業は値上げなどで金利高を上回る成長を続けられる」として、「長期金利3%程度であれば日本株への下押し影響は限られる」との見方も示しています。
FXへの影響:連載で繰り返しお伝えしているとおり、原油高は二重ルートで円安に働きます。
①日本の輸入コスト増→貿易赤字拡大→円売り
②米インフレ懸念→金利上昇→ドル買い、です。
ただし今回、注意したい点があります。
トランプ氏の「追加攻撃検討」という発言が、実行に移されるかどうかです。
前回もお伝えしたとおり、「警告」と「実行」は区別して見る必要があります。
実際に大規模な攻撃があれば原油は一段高となりますが、口先だけなら影響は限定的にとどまります。
3. G20での高官発言 — ベッセント長官が日銀に「利上げ要請」
今回いちばんの注目材料が、G20財務相・中央銀行総裁会議の合間に行われた日米の会談です。
ベッセント長官の発言
同氏はCNBCのインタビューで、こう述べました。
「私は自然な均衡水準に影響を及ぼすことはできない。われわれにできるのはシグナルを送ることだ」
「市場が持っていない情報が私にはある」
「日本政府と日本銀行が、より強い円につながる措置を講じると確信している」
それは日銀の利上げを意味するのかと問われると、「市場は現在、それを織り込んでいるところなのだと思う」と答えました。
直接「利上げ」を求めていた
さらに踏み込んだ報道もあります。
NHKによると、ベッセント氏は植田総裁と片山財務相に相次いで会談し、日銀が利上げするよう要請したといいます。
米財務省高官(ブラウン次官)によれば、ベッセント氏は日本側に対し、次のステップとして「財政の持続可能性や利上げに向けた道筋を市場に対して明確に示すことが重要だ」と強調。
日銀が利上げに踏み切ることなどが必要だという認識を伝えたとされます。
片山財務相の発言
片山財務相もG20の討議で、金融市場の投機的な動きについて「G20として注視すべきだ」と発言しました。
日本の成長戦略を説明するとともに、重要鉱物の恣意的な輸出規制を撤回する必要性も訴えています。
なお、政府・日銀は8月26日までの1カ月間で、月次ベースで過去最大となる15兆3993億円の為替介入を実施しました。
市場参加者の見方 — なぜ反応が鈍かったのか
ここが重要なポイントです。
これだけの発言があっても、市場の反応は限定的でした。
JPモルガンの斎藤郁恵氏は、
その理由を明快に説明しています。「日銀による9月の利上げは既に織り込まれているため、市場の反応は鈍かった」。
前回もお伝えしたとおり、市場は9月の日銀利上げを約88%織り込んでいます。この状態では、「利上げしてほしい」という要請が出ても、新しい材料にはならないわけですね。
見逃せない指摘 — 「見送り」時のリスク
斎藤氏の分析で、もっとも注目すべきはここです。
「日銀が利上げを予想外に見送った場合、ドル円には大幅な上昇リスクが生じる」
そのうえで、ベッセント氏が円高につながる措置への期待を示していることから、利上げ見送りの場合に協調介入が行われる可能性は低下しているとも述べています。
つまりどういうこと?
整理すると、こういう構図です。
- 9月に利上げ → すでに織り込み済みなので、円高は限定的
- 利上げを見送り → 期待が一気に剥落し、円が大幅に下落。しかも協調介入という救済も期待しにくい
リスクが非対称なのです。
上昇余地は限られる一方、下落余地は大きい。
9月17〜18日の日銀会合に向けて、この点は強く意識しておきたいところです。
4. ベッセント長官のもう一つの発言 — 債券市場介入への反論
FXに間接的に関わる話題として、ベッセント長官の債券市場介入を巡るやり取りも押さえておきましょう。
同氏はかつての師である著名投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏から、長期債の買い戻し計画を痛烈に批判されていました。
これに対し、ベッセント氏はこう反論しています。
「私の仕事は、市場がファンダメンタルズに目を向け、市場に政策を左右されないようにすることだ」
「逆のケースを考えてみてほしい。もし私がやっていなかったらどうなっていただろうか」
そのうえで、米国債が8月に他の主要国の債券を上回るパフォーマンスとなる見通しだと指摘。
実際、8月の10年債利回りの上昇幅は、米国が約2bpに対し、ドイツは10bp超、日本は15bpでした。
また、ウォーシュFRB議長との見解の違いも否定し、「われわれは2人とも、米国債市場が世界で最も強靱だと考えている」と説明しました。
財政健全化策は先送りに
一方、注意したい発言もあります。
ベッセント氏は8月20日に「今週末か来週初めにも、財政健全化を一段と重視する方針を発表する」と述べていましたが、31日にはその発表が数カ月先になる可能性を示しました。
FXへの影響:前回、「具体性を欠けば失望される」とお伝えした財政赤字削減策が、そもそも先送りされた形です。
米長期金利の上昇の根本原因である財政問題に、当面手が付かないことを意味します。
中長期的にはドルの重しになり得ます。
実際、米10年債利回りは一時4.75%を上回り、2025年1月以来の高水準をつけました。
5. その他の材料 — 今夜のISM製造業指数と10年債入札
■ 今夜は8月の米ISM製造業景況指数
先週末のウォーシュ議長発言で早期利上げ観測が強まっているだけに、関心が高まっています。
7月はAI投資ブームを背景に2022年以来の高水準でした。
FXへの影響:強い結果なら、利上げ観測がさらに強まってドル高・円安。
弱ければ観測が後退してドル安・円高に働きます。
ウォーシュ発言で織り込みが急速に進んだ後だけに、弱い結果が出たときの反動(ドル反落)も大きくなりやすい点は意識しておきましょう。
■ 日本の10年債入札
この日は10年利付国債入札が実施されました(発行予定額2兆6000億円程度)。SMBC日興証券の奥村任氏は、概算要求額が想定より大きく国債発行増を意識させるとし、入札は「タイミングが悪い」と指摘。
応札が集まらず弱い結果となる可能性に注意が必要だと述べています。
FXへの影響:入札が低調なら、財政不安による「悪い金利上昇」が意識されます。
これは通貨の信認低下を意味するため、円安要因になり得ます。
日銀の利上げ期待による「良い金利上昇」とは区別して見る必要がある、という点は連載で何度もお伝えしているとおりです。
今日の要点整理
「視線がどちらを向くか」で方向が決まる
ベッセント発言(円高材料)と中東緊迫(円安材料)が拮抗しています。
市場の関心が中東に移れば160円トライ、という小野寺氏の指摘は、当面の判断軸として使えます。
日銀会合はリスクが非対称
9月利上げは約88%織り込み済み。
実施しても円高は限定的ですが、見送れば大幅な円安リスクがあり、しかも協調介入も期待しにくい。上下の振れ幅が違う点を意識しましょう。
財政健全化策は数カ月先送り
米長期金利の根本原因に、当面手が付きません。
金利の高止まりは続きやすく、中長期のドルの重しになります。
9月中旬の日米中銀会合まで、あと2週間あまり。
それまでは中東と指標に振らされる展開が続きそうです。
ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
今回の新出用語
- 概算要求:各省庁が翌年度予算として財務省に提出する要求額。膨らむと国債増発への警戒が強まります。
- リスクの非対称:上昇余地と下落余地の大きさが異なる状態。今回は「見送り時の円安リスク」が大きい局面です。
- グローバルインバランス:世界経済の不均衡。経常黒字国と赤字国の間で主張が対立しやすいテーマです。
- 応札:入札に参加して買い注文を出すこと。集まらなければ「弱い結果」となり、金利上昇要因になります。
※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「二重ルート」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。
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