ドル円159円台で膠着|原油90ドル台と20年ぶり高水準の米長期金利、ゴールドマンの「タカ派に傾きすぎ」指摘をやさしく解説
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ドル円は159円台で膠着。
原油はブレントが90ドル台へ、米30年債利回りは約20年ぶりの高水準です。
「なぜ利上げ観測が後退しても金利は上がる?」
「ゴールドマンは何を指摘した?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
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ドル円は159円台で膠着、円はじり安が定着
— 介入がなければ円が下がる構図です
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原油はブレント90ドル台、米30年債利回りは5.31%と約20年ぶり高水準
— 世界的に長期金利が上昇しています
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ゴールドマンは「市場の利上げ観測はタカ派に傾きすぎ」と指摘
— 9月利上げは「可能性が極めて低い」との見方です
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は159円台で膠着 — 「介入なき円のじり安」
まずは足元の相場から。
円は対ドルで159円台でのこう着が続いています。
注目したいのは、貿易加重ベースで見た円指数の動きです。
日米通貨当局による介入が終了したとみられる今月3日以降、円指数はほぼ一貫して下げ基調となっています。
つまり、円買い介入がなければ円がじり安になる、という構図が定着しつつあるわけです。
一方で、ドルも弱含んでいます。
米景気指標の弱さやFRBの利上げ観測後退から、ドルは円以外のほぼすべてのG10通貨に対して下落。
ブルームバーグ・ドル指数は約3カ月ぶりの安値をつけました。
つまりどういうこと?
「ドルは弱い、でも円はもっと弱い」
——これが膠着の正体です。
ドル安が進んでもドル円が下がらないのは、円がそれ以上に売られているからです。
ドル円だけを見ていると「動かない相場」に見えますが、実際には円の独歩安が静かに進行しています。
日本の債券市場も動いています。
10年国債利回りは30年ぶりの高水準をつけ、この日にも2.9%台後半に入る可能性が指摘されています。
市場では3%の節目も通過点に過ぎないとの見方も出ており、日銀の9月利上げ観測が高まるなかで実施される5年債入札に注目が集まりました。
2. 原油がブレント90ドル台へ — 中東は「長期戦」の構え
原油価格の上昇が続いています。
北海ブレントは2.7%高の90.87ドル、WTIは2.6%高の84.50ドルで終了。
先週も6%近く上昇しており、上昇基調が鮮明です。
背景は「収束が遠のいた」こと
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米イランの暫定合意が17日に期限を迎え、トランプ大統領は覚書を延長する意向はないと表明
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さらに、イラン船舶への封鎖を妨害した場合、オマーンも爆撃する可能性に言及
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ライト米エネルギー長官は、米国はイランに対し長期戦の構えでいると述べ、近く緊張緩和に動く計画がないことを示唆
- レバノンでの激しい戦闘、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃も継続
グローバル・リスク・マネジメントのアルネ・ローマン・ラスムセン氏は、
産油国がペルシャ湾から大量の原油をシャトル輸送していることや、米国が軍事的圧力から経済制裁へ軸足を移していることで「地政学的プレミアムが低下し、原油価格の上値が抑えられている」と指摘。
ただし、「経済的な圧力をかける戦略は、ホルムズ海峡の実質封鎖が数カ月に及ぶ可能性があることを意味する」とも述べています。
FXへの影響 — つまりどういうこと?
原油高は、二重のルートでドル円を押し上げます。
- 日本側:エネルギー輸入コストの増加 → 貿易赤字の拡大 → 円売り要因
- 米国側:インフレ懸念 → 金利上昇 → ドル買い要因
しかも「長期戦」となれば、この圧力が数カ月続く可能性があります。
円高を期待するうえで、原油の落ち着きは欠かせない条件です。
毎日チェックしておきたい指標ですね。
3. 米30年債利回りが約20年ぶり高水準 — なぜ利上げ観測後退でも金利は上がる?
ここが今回のいちばんの学びどころです。
世界的に長期金利が上昇
17日の米債券市場で、30年国債利回りは6bp上昇の5.31%と、2007年以来の高水準をつけました。
カナダの30年債利回りも2010年以来、ドイツも2011年以来の高水準です。
世界的に長期金利の上昇が鮮明になっています。
不思議な現象:指標は弱いのに金利は上がる
ここで、多くの方が疑問に思うはずです。
先週の米指標は軒並み弱かったのに、なぜ金利は上がるのでしょうか。
- CPIはコアが小幅な伸びにとどまる
- 雇用統計は雇用者数が予想外の減少、過去分も下方修正
- 小売売上高は2025年5月以来の大幅な落ち込み
普通なら「弱い指標→利上げ観測後退→金利低下」となるはずです。
答えは「短期金利と長期金利は別物」
カギは、短期金利と長期金利は違う理由で動くということです。
- 短期金利(2年債など):FRBの政策金利の見通しで動く → 弱い指標で低下
- 長期金利(30年債など):財政の健全性や長期のインフレ見通し、需給で動く → 上昇
長期金利が上がっている理由は、
①政府債務の膨張
②AI関連の長期社債発行ラッシュ(国債と投資家を奪い合う)
③5年間も目標を上回るインフレへの懸念
④長期債の伝統的な買い手の需要低下
——です。
この結果、イールドカーブ(利回り曲線)のスティープ化が進んでいます。
2年債と30年債の利回り格差は113bpに拡大し、4月以来の大きさとなりました。
シタデル・セキュリティーズのノーシャド・シャー氏は、
インフレが長期にわたり目標を上回っているのにFRBが引き締めに消極的なことが、長期債利回りを高止まりさせていると指摘しています。
FXへの影響
長期金利の上昇は、ドルを下支えする要因です。
米国の金利が高ければ、資金は米国に集まりやすいからです。
ただし注意点も。
財政不安が理由の金利上昇は、通貨の信認低下を意味するため、いずれドル安要因に転じる可能性もあります。
実際、ドル指数は約3カ月ぶりの安値です。
「金利は高いがドルは弱い」という状態は、米国の財政への懸念が意識され始めているサインとも読めます。
バークレイズのアンシュル・プラダン氏は、
「長期ゾーンの売りに逆らうべきではない」との見方を維持。長期債に前向きになるには、財政面の予想外の改善やAI関連の起債ペース鈍化などが必要だとしています。
4. ゴールドマンの指摘 — 「市場はタカ派に傾きすぎ」
9月利上げは「可能性が極めて低い」
ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏は、
市場が織り込むFRBの利上げ観測はなお強すぎると指摘しました。
小売売上高の軟化、雇用統計の低調、インフレ指標の鈍化を受け、9月会合での利上げは「可能性が極めて低い」と明言。
「われわれの基本シナリオでは、年末に向けてインフレを巡る状況は再び悪化するよりも、さらに改善する可能性の方が高い」とし、「FF金利に対する市場の織り込みは、なおタカ派的すぎる」と記しました。
さらに、「雇用とインフレのデータが2カ月にわたり大幅に軟化した後では、ハト派の当局者が利上げ支持に転じるとは考えにくい」とも述べています。
市場の織り込みはすでに後退中
実際、市場が織り込むFRBの次回0.25ポイント利上げの予想時期は、1月へ後ずれしました。
1週間前には12月の利上げを完全に織り込んでいましたから、大きな変化です。
それでもゴールドマンは、利上げ観測がさらに後退する余地はあるとみています。
FXへの影響 — つまりどういうこと?
これはドル安・円高方向に効く重要な指摘です。
もしゴールドマンの見立てどおり、市場がさらにハト派方向へ修正されれば、米金利(とくに短期)が低下し、ドルが売られやすくなります。
加えて、日銀が9月に利上げすれば、日米金利差が両側から縮まることになります。
ただし、ここで注意したいのが長期金利は下がりにくいという点です。
ゴールドマンも、インフレ改善と利上げ観測の縮小、予算を巡る悪材料を背景に、イールドカーブはさらにスティープ化するとみています。
ブルームバーグのエドワード・ハリソン氏も、
「短期ゾーンの利回りは年内の利上げ観測後退が支えになる一方、長期ゾーンは引き続き脆弱だ」と指摘。
つまり、「短期金利は下がるが長期金利は高いまま」という状態が続きやすいわけです。
為替は主に短期・中期の金利差で動きやすいため、この構図はじわりと円高方向に働く可能性があります。
5. その他の注目材料
日本の米国債保有が4.2兆円減 — 介入の原資
米財務省の発表によると、6月の日本の米国債保有額は前月比約264億ドル(約4兆2000億円)減の1兆1200億ドルと、海外勢で最大の減少幅となりました。
パイオニア・インベストメンツのパレシュ・ウパディヤヤ氏は、
「日本の動きは明らかに為替介入によるものだった」との見方を示しています。
FXへの影響:これは連載で追ってきたテーマの答え合わせです。
日本が円買い介入の資金を作るために米国債を売り、それが米金利の上昇を招く
——この懸念こそ、米国が協調介入に加わった動機の一つでした。
ウパディヤヤ氏は、ベッセント長官がFIMAレポ(米国債を担保にドルを借りる制度)にも言及したことを挙げ、「日本による米国債売却が繰り返されることはないだろう」と述べています。
今後の介入は、米金利を揺さぶらない形で行われる可能性が高い、ということですね。
NY連銀製造業指数は21年12月以来の高水準
8月のニューヨーク連銀製造業景況指数はプラス20.6と、市場予想のプラス10を大きく上回り、2021年12月以来の高水準となりました。
受注残指数も2022年4月以来の高さです。
FXへの影響:AI関連の設備投資などを背景に、米製造業は堅調です。
消費に陰りが見えるなかで、この強さはドルを下支えする材料。
「米経済は弱い一色ではない」という点は、押さえておきましょう。
ただし仕入れ価格指数が5月以来初めて上昇した点は、インフレ面で気がかりです。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 「介入なき円のじり安」が定着しつつある
介入が終わったとみられる3日以降、円指数はほぼ一貫して下落。
ドルが弱くても円はもっと弱い、という構図を前提に構えましょう。
② 短期金利と長期金利は別物
弱い指標で短期金利は下がっても、財政不安で長期金利は上がる。
この「ねじれ」が今の相場の特徴です。
為替は短期・中期の金利差で動きやすい点を意識しましょう。
③ ゴールドマンの指摘は円高材料
「市場はタカ派に傾きすぎ」との見方が正しければ、米金利はさらに下がる余地があります。
日銀の9月利上げと重なれば、金利差は両側から縮まります。
原油高という円安要因と、米利上げ観測後退という円高要因
——どちらが優勢になるかが当面の焦点です。ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- 貿易加重ベースの円指数:複数の通貨に対する円の総合的な実力を示す指標。ドル円だけでは見えない動きが分かります。
- イールドカーブ(利回り曲線):期間ごとの金利を結んだ線。短期が下がり長期が上がると「スティープ化」します。
- bp(ベーシスポイント):金利の単位。1bp=0.01%です。
- 地政学的プレミアム:紛争リスクなどによって、価格に上乗せされている分のこと。
- FIMAレポ:海外の当局が米国債を担保にドル資金を借りられるFRBの制度。
- タカ派/ハト派:利上げに前向きが「タカ派」、利下げに前向きが「ハト派」。
- NY連銀製造業景況指数:ニューヨーク州の製造業の景況感を示す指標。ゼロが拡大と縮小の分かれ目です。
- 仕入れ価格指数:企業が支払うコストの動向。インフレ圧力の目安になります。
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