ドル円159円台で膠着|世界的な利上げ観測の広がりと中東情勢の再燃をやさしく解説
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ドル円は159円台でこう着。
ドル指数は5月末以来の安値なのに、円は動きません。
「なぜ円だけ買われない?」
「世界的な利上げ観測とは?」
「中東はどうなった?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- ドル安なのに円も弱い、159円台で膠着
— ドル指数は5月末以来の安値をつけました - 世界的に利上げ観測が広がり、日本と韓国が主導
— FRBを上回るペースが見込まれています - 中東情勢が再燃、原油は週間で6%近く上昇
— 円安圧力として残り続けています
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は159円台で膠着 — ドル安でも円は買われない
まずは足元の相場から。
円は対ドルで159円台でもみ合っています。
注目したいのは、ドルそのものは弱いという点です。
前週末に発表された7月の米小売売上高が市場予想に反して低下し、8月のミシガン大学消費者マインド指数も低下。
米国経済の原動力である消費に陰りが見えたことで、米利上げ観測が後退しました。
この結果、ブルームバーグ・ドル指数は14日、5月末以来の安値をつけています。
それなのに、円の動きは鈍いまま。
ここが今の相場の特徴です。
つまりどういうこと?
前回もお伝えしたポイントですが、改めて整理します。
「ドルが弱い」ことと「円が強い」ことは別です。
ドルが売られても、その資金が円ではなく他の通貨に向かえば、ドル円は下がりません。
いま円が買われにくい理由は、
①日米の金利差が依然として大きい(米3.5〜3.75%対日1%)
②中東情勢による原油高
③日本の財政への懸念の3つ。
これらが解消されない限り、ドル安局面でも円は取り残されやすいのです。
なお、17日発表の4〜6月期の実質GDP速報値は前期比年率1.1%増と、市場予想の2.0%増を下回りました。
設備投資は2期連続のマイナス、個人消費は8期ぶりのマイナスです。
3四半期連続のプラス成長は維持したものの、内容は弱め。
FXへの影響としては、日銀の利上げをやや慎重にさせる材料ですが、市場では円安と物価高を背景に利上げ観測がなお強い状況です。
2. 世界的な利上げ観測 — 日本と韓国が主導
今回いちばんお伝えしたいのが、この大きな流れの変化です。
FRBを上回るペースで各国が引き締めへ
これまで金利といえば「FRBが主導し、他国が追う」構図でした。
ところが今、日本、カナダ、英国、ユーロ圏では、今後1年間で米国より速いペースで金利が上昇すると市場は見ています。
具体的には、ブルームバーグが調査する32の金利スワップ市場のうち、3分の2が利上げを織り込み、韓国では100bp超と最大の利上げ幅が見込まれています。
主要7市場を合わせると、今後1年で約400bpの利上げが織り込まれている計算です。
背景にあるのは、
①イラン戦争による原油高
②巨額の政府歳出
③AI投資ブームによる成長押し上げ
——という複数の圧力に、各国の中央銀行が同時に直面していることです。
OECD加盟国のインフレ率は最近、2年ぶりの高水準に達しました。
なぜ日本と韓国が「次の局面を主導」するのか
世界的な引き締めの次の局面は、韓国と日本が主導するとみられています。
理由は、エネルギー価格の上昇にAI主導の投資ブームが重なり、半導体や電力、労働力への需要が押し上げられているためです。
すでに影響は表れています。
韓国国債は今年、現地通貨建てのトータルリターンが約9%低下し、調査対象44市場で最悪のパフォーマンス。
日本国債も下落率が大きい市場の一つで、約4%低下しています。
FXへの影響 — つまりどういうこと?
ここが重要です。
日本が「世界的な利上げの主役」に位置づけられているということは、中長期的には円の追い風になり得ます。
日米金利差の縮小は、円安の最大の原動力を弱めるからです。
ただし注意点も。
金利上昇には「良いもの」と「悪いもの」があります。
利上げ期待による金利上昇は通貨高要因ですが、財政不安による金利上昇は通貨安要因です。
日本国債が売られている背景には、日銀の利上げ観測だけでなく、高市政権の財政拡張への懸念も混ざっています。
どちらが主因かを見極めることが大切です。
債券の「分散投資」が効かなくなる
もう一つ、投資全般に関わる重要な指摘があります。
フィデリティ・インターナショナルのジョージ・エフスタソプロス氏は、
「分散投資という観点では、債券はその役割を果たさない」と指摘。
通常、株が下がったときに債券が上がることで、資産全体の損失を和らげます。
しかし各国が同時に利上げすれば債券も値下がりし、損失を膨らませる要因になりかねません。
UOBケイヒアンのケネス・ゴー氏も、
「債券がポートフォリオの損失を和らげてくれると多くの投資家が今なお考えているが、もはや以前のようには機能しない」と述べています。
FXへの影響:金利上昇は割高な株式にも重しとなり、金融環境を引き締め、為替取引にも混乱をもたらしかねません。
世界的な金利上昇局面では、値動きが荒くなりやすいと心構えをしておきましょう。
3. ヘッジファンドの円売りは半減 — でも円は上がらない
CFTC(米商品先物取引委員会)のデータで、興味深い動きが確認されました。
8月11日までの1週間で、レバレッジドファンドの円ショート(売り持ち)は6.5%減少して5万9526枚に。
7月末の日米協調介入以降、円のショートポジションは半分余り減少しました。
パイオニア・インベストメンツのパレシュ・ウパディヤヤ氏は、
「市場は円ショートポジションが積み上がった状態で不意を突かれた。こうしたリスクが高まる中で、投資家がポジションを縮小するのは当然だ」と説明します。
つまりどういうこと?
ここが今の相場を理解するカギです。
投機的な円売りは大きく減ったのに、円は上がっていない
——これは何を意味するでしょうか。
答えは、いまの円安は投機だけが原因ではないということです。
金利差を狙った実需のキャリートレードや、日本の財政への構造的な不安が、円を押し下げ続けている。
だから、投機筋がポジションを減らしても円高にならないのです。
FXへの影響:ポジションが軽くなったということは、急激な巻き戻し(円急騰)のリスクは下がったとも言えます。
一方で、円が上がるにはポジション調整以外の材料が必要ということでもあります。
やはり、日銀の利上げが最大のカギです。
4. 中東情勢が再燃 — 原油高が円安圧力に
いったん緩和期待が高まっていた中東情勢ですが、再び緊迫しています。
何が起きているか
- イスラエルがレバノンを空爆:
ヒズボラ軍事部門の上級司令官を殺害し、計11人が死亡。
6月上旬の停戦合意以降で最多の犠牲者となりました。 - 米イラン暫定合意が17日に形式上の期限:
ホルムズ海峡を巡る問題で打開の道筋が見えないまま、期限を迎えます。 - 米国は「経済的孤立」計画を準備:
トランプ大統領はイラン経済に大きな打撃を与える計画だと述べ、11月の中間選挙までに紛争が終結するかは気にしていないとも語りました。 - ホルムズ海峡での攻撃が継続:
3月初めから8月11日までに約65件の事案が確認され、少なくとも17人が死亡しています。
イランのハタミ陸軍総司令官は、
ホルムズ海峡は「神からイラン国民に与えられた地政学的資産であり、この影響力が以前の状態に戻ることは決してない」と述べ、強硬姿勢を崩していません。
市場参加者の見方
ブルームバーグ・エコノミクスのクリス・ケネディ氏は、
「大統領が他のあらゆる問題、とりわけ中国よりもイランの脅威への対応を優先すると決断しない限り、どのような措置を講じてもイランの判断を大きく変える可能性は低い」と指摘しています。
なお、米国が中国などイラン産原油の買い手に二次制裁を科せば、中国からの報復を招き、世界のエネルギー価格の不透明感が一段と強まる可能性が高いとされます。
簡単には打つ手がないのが実情です。
FXへの影響
北海ブレント原油は先週、週間ベースで6%近く上昇しました。
原油高は、
①日本の輸入コスト増→貿易赤字拡大→円安要因
②米インフレ懸念→米金利上昇→ドル高要因
という二重のルートでドル円を押し上げます。
中東情勢が改善しない限り、円安圧力は残り続ける
——これが基本的な前提です。
原油価格は毎日チェックしておきたい指標です。
まとめ — トレードで気をつけたい3つのこと
① 「ドル安」と「円高」は別物と割り切る
ドル指数が5月末以来の安値でも、円は159円台のまま。
ドル円だけでなく、ドル指数や他の通貨ペアの動きもあわせて確認する習慣をつけましょう。
② 世界的な利上げは中長期の円の追い風
日本は「次の引き締め局面の主役」に位置づけられています。
金利差の縮小が進めば、円安の最大の原動力が弱まります。
ただし財政不安による金利上昇は円安要因なので、区別が必要です。
③ 円ショートは半減、それでも円は上がらない
投機の巻き戻しは一巡しつつあります。
今後円が上がるには、日銀の利上げという実弾が必要です。
9月・10月の会合が最大の焦点です。
膠着相場は、次に動き出すためのエネルギーをためている時間でもあります。
ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
【付録】用語のかんたんおさらい
- ドル指数:主要通貨に対するドルの総合的な強さを示す指標。ドル円だけでは見えない動きが分かります。
- 金利スワップ市場:将来の金利を取引する市場。中央銀行の利上げ確率を読み取る目安になります。
- bp(ベーシスポイント):金利の単位。1bp=0.01%です。
- ショート(売り持ち):売りから入るポジション。積み上がるほど巻き戻し時の反動が大きくなります。
- CFTC:米商品先物取引委員会。投機筋のポジション状況を公表しています。
- キャリートレード:低金利の通貨を借りて高金利の通貨に投資し、金利差で稼ぐ手法。円安の一因になります。
- タームプレミアム:長期債に投資する際に投資家が求める上乗せ利回り。財政不安で上昇します。
- 分散投資:複数の資産に投資してリスクを抑える手法。株と債券が同時に下がると機能しにくくなります。



