中東緊張緩和で原油4%安、ドル円158円台後半へ|今夜のPCEを直近3回の実績から攻略する
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イランを巡る外交努力が動き出し、原油は約4%下落。
ドル円も158円台後半まで押し戻されました。
今夜はFRBが最も重視するインフレ指標「PCE」が発表されます。
「緊張緩和は円高材料?」「PCEはどう構える?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。
むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。
まずは全体像から(先に結論をお伝えします)
- 中東の緊張緩和期待で原油が約4%下落、米長期金利も低下 — ドル売り・円買いが優勢になりました
- FRB高官は「引き締め」の可能性を捨てていない — これがドルの下支えになっています
- 今夜は7月のPCE価格指数 — コアの上振れが回避されれば、円高圧力がかかりやすい展開です
それでは、一つずつ見ていきましょう。
1. ドル円は158円台後半〜159円台前半
まずは足元の相場から。
円は対ドルで158円台後半〜159円台前半で推移しています。
原油安と米国債利回りの低下を受けて、ドル売り・円買いが優勢になりました。
三菱UFJ信託銀行の小野寺孝文氏は、
「中東リスク後退への期待から原油価格が下落し、米長期金利が低下したことでドルが軟化した」と説明します。
ただし、FRBはインフレ警戒を緩めておらず、年内1回の利上げ観測が維持されていることがドルのサポートになっているとも指摘。
そのうえで、今夜のPCEやジャクソンホール講演を控え「ポジションを大きく傾ける動きはないだろう」とし、159円台前半では上値を抑えられ、158円台後半では下げ止まるとみています。
当面の値幅の目安として覚えておくと便利ですね。
株式は日経平均が反落。
エヌビディア決算を前にAI・半導体関連で売りが優勢です。
一方、原油安と米金利低下を支えに金融や医薬品は買われ、TOPIXは小幅に上昇する場面もありました。
2. 中東の緊張緩和 — 何が変わったのか
動き出した外交
今回の原油安のきっかけは、外交努力の活発化です。
具体的には次の3点が伝わりました。
- 米国が、イラン戦争開始後に退避していた外交官を中東の大使館に戻す準備を進めている(米紙ニューヨーク・タイムズ報道)
- イランとオマーンが、ホルムズ海峡の通航再開に向けた「暫定的な枠組み」を協議
- パキスタン軍トップのムニール陸軍元帥が、緊張緩和に向けてイランを訪問
加えて、前回お伝えした米財務省の対イラン制裁が、予想ほど厳格な内容ではなかったとの見方も広がりました。
相場への影響
これを受けて、北海ブレント原油は約4%安の88ドル台まで下落。
米長期金利も低下し、金利上昇による景気減速への懸念が和らぎました。
つまりどういうこと?
連載で繰り返しお伝えしてきたとおり、原油高は二重のルートで円安要因でした。
①日本の輸入コスト増→貿易赤字拡大→円売り
②米インフレ懸念→金利上昇→ドル買い、です。
その原油が下がれば、両方のルートが逆回転します。
だから円高・ドル安が進んだわけですね。
中東の緊張緩和は、円にとって数少ない明確な追い風です。
ただし「期待」の段階
注意点もあります。
今回動いたのは、あくまで外交努力の兆しであって、合意そのものではありません。
これまでも「合意は近い」との観測が何度も浮上しては消えてきました。
野村証券の後藤祐二朗氏も、
この日の焦点として「米イランの緊張緩和に向けた動きが見られるかが焦点となる」としています。
実際に通航が正常化するまでは、原油が再び上昇するリスクは残ります。
期待だけで先走らないことが大切です。
3. FRB高官の発言 — 「引き締め」の可能性は消えていない
原油安で利上げ観測が後退するなか、FRB高官はどう見ているのでしょうか。
2人の発言が注目されました。
ボストン連銀コリンズ総裁
— 「証拠がなければ引き締めが適切」
コリンズ総裁は、当面の据え置きを支持するとしつつ、それには条件があると明言しました。
「現行のFF金利の誘導目標レンジを維持するには、インフレが実際に低下しつつあることを示す継続した証拠が必要になる」「インフレ鈍化が持続的に進んでいるとの証拠が得られなければ、近い時期に金融政策を引き締めることが適切になる」
最近のインフレ指標が抑制されていた点は「やや心強い」としつつ、月次統計は振れが大きいため「最近の改善が持続するかどうかは、まだ分からない」と慎重です。
さらに、上振れリスクとして供給ショックと予想を上回る経済活動の拡大を挙げ、後者について「AI関連の設備投資増加がコアの財インフレに上昇圧力をかけているようだ」と指摘しました。
リッチモンド連銀バーキン総裁
— 「いずれツケを払う時が来る」
バーキン総裁の発言は、より長期的な視点です。
公的債務が40兆ドルを突破したことについて、こう述べました。
「この状況が続けば、いずれツケを払う時が来る。それがいつなのかは誰にも分からない」「ドルは世界的に使われる通貨であり、法の支配もある。こうした理由から人々は米国債を買い続けている。しかし、いずれ人々が米国債を買わなくなる可能性があり、それがリスクだ」
また、7月の金利決定は「際どい判断」だったと明かし、9月会合までにさらに2カ月分の指標を確認できることを、待つ理由の一つに挙げました。
FXへの影響
— つまりどういうこと?
整理すると、こうなります。
インフレ指標が弱くても、FRBは「引き締めカード」を手放していない
——これがドルを下支えしています。
小野寺氏が言う「年内1回の利上げ観測が維持されている」とは、まさにこの状態です。
トレード上の意味は明確です。
原油安や弱い指標で円高が進んでも、FRB高官のタカ派発言が出れば、その円高は止まりやすい。
円高を狙う場合も、高官発言のスケジュールは押さえておきたいところです。
一方、バーキン氏の「ツケを払う時」発言は、中長期のドル安リスクを示唆します。
米国債が買われなくなる日が来れば、ドルの信認そのものが揺らぐからです。
すぐに相場を動かす話ではありませんが、「ドルは無条件に安全ではない」という認識は持っておきましょう。
4. 今夜のPCE — 直近3回の実績と攻略法
いよいよ本題、今夜発表の7月のPCE価格指数です。
PCEとは
PCE(個人消費支出)価格指数は、FRBが最も重視するインフレ指標です。
CPIより対象範囲が広く、消費者の実際の支出構成を反映します。
とくにコアPCE(食品・エネルギーを除く)が、政策判断の中心に置かれます。
直近3回の予想と結果
■ 4月分
- 総合PCE(前月比):0.4%上昇
- 総合(前年比):3.8%
■ 5月分
- 総合PCE(前月比):予想0.5% → 結果0.4%(予想を下回る)
- 総合(前年比):4.1%と、2023年4月以来の高水準(予想通り)
- コアPCE(前月比):0.3%、コア(前年比):3.4%といずれも予想通り。コアは2023年10月以来の高さ
- 個人消費支出は0.7%増と予想を上回る強さ
■ 6月分
- 総合PCE(前月比):予想−0.1% → 結果−0.1%(予想通り)。2020年4月以来、初の前月比マイナス
- 総合(前年比):3.7%へ低下(前月4.1%、予想通り)
- コアPCE(前月比):0.1%と予想0.2%を下回る
- コア(前年比):3.3%へ低下(前月3.4%、予想通り)
流れを見ると、4月・5月は原油高で上振れ→6月は米イラン停戦によるガソリン安で一転して下振れ。
CPIやPPIとまったく同じ構図です。
6月の下振れ時には、利上げ観測の後退からドルが売られました。
今回(7月分)の注目点
7月は原油が再び上昇した時期です。
総合PCEは反発が見込まれますが、焦点はやはりコア。
すでに発表済みの7月CPIはコアが前月比0.2%と落ち着いており、PPIも下振れました。
この流れをPCEでも確認できるかがポイントです。
なお、コアPCEの前年比は3.3%と、FRBの2%目標をなお大きく上回っています。
「落ち着いてきた」とはいえ、目標達成にはほど遠い
——この点は忘れないようにしましょう。
結果ごとに考えられる値動き
- コアが予想を下回る(下振れ) → ドル安・円高方向 後藤氏が指摘するとおり、「コアPCEの上振れが回避されれば、9月米利上げ期待の低下がドル円の下押し圧力となりそう」。原油安と重なれば、158円台前半を試す可能性もあります。
- コアが予想を上回る(上振れ) → ドル高・円安方向 コリンズ総裁の言う「証拠が得られない」状態となり、引き締め観測が再燃。159円台後半へ戻す展開が考えられます。
- ほぼ予想どおり → 値動きは限定的、ジャクソンホール待ち 28日のウォーシュ議長講演を控え、大きくポジションを傾ける動きは出にくいでしょう。
今夜の注意点
① 総合よりコアを見る
総合はエネルギーで大きく振れます。直近3回とも、振れ幅の主因はガソリン価格でした。
基調を示すコアで判断しましょう。
② 個人消費の数字も要チェック
PCEは物価だけでなく、個人消費支出そのものも同時に発表されます。
前回お伝えしたとおり小売売上高は大きく落ち込んでおり、消費の弱さが確認されれば、利上げ観測の後退を強めます。
③ イベントが連続する点に注意
今夜はPCEに加え、米市場の取引終了後にエヌビディアの決算もあります。
翌27日には日銀の氷見野副総裁講演、28日にはジャクソンホール。
短期間に材料が集中するため、ポジションは小さめに構えておくのが安全です。
5. その他の材料 — 消費者信頼感の低下
8月の米消費者信頼感指数は、前月比0.8ポイント低下の89.4(予想90.2)と、今年初め以来の低水準となりました。
前月分も下方修正されています。
中身を見ると、明暗が分かれました。
- 現況指数は121.2へ上昇し、4カ月ぶりの高水準。労働市場の現状への見方も改善
- 一方、期待指数(今後6カ月の見通し)は68.2と、今年の低水準に迫る。雇用と所得への見方は一段と悲観的
調査期間中(8月3〜16日)は、米イランの敵対行為が再燃してガソリン価格が1ガロン4ドルを上回っていました。
FXへの影響:「今は悪くないが、先行きが不安」というのが消費者の心理です。
個人消費は米経済の柱ですから、期待の悪化が実際の支出減につながれば、景気減速→利上げ観測の後退→ドル安という経路が意識されます。
今夜のPCEに含まれる個人消費支出の数字と、あわせて見ておきたいですね。
今日の要点整理
中東緩和は円の数少ない追い風
原油安は「輸入コスト」と「米インフレ」の両ルートで円安圧力を弱めます。
ただし今回は外交努力の兆しにすぎず、合意ではない点に注意しましょう。
FRBは引き締めカードを手放していない
コリンズ総裁は「鈍化の証拠がなければ引き締めが適切」と明言。
原油安で円高が進んでも、高官発言で止まりやすい構図です。
今夜のPCEは「コア」で判断
総合はエネルギーで振れます。
コアが予想を下回れば9月利上げ期待の低下から円高圧力、上振れなら円安方向。
同時発表の個人消費支出もチェックを。
今夜のPCEから、27日の氷見野副総裁講演、28日のジャクソンホールへ
——3日連続で相場を動かす材料が続きます。
ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。
今回の新出用語
- PCE価格指数:FRBが最も重視するインフレ指標。CPIより対象範囲が広く、消費者の実際の支出構成を反映します。
- コアPCE:食品とエネルギーを除いたPCE。物価の基調を示し、政策判断の中心に置かれます。
- 消費者信頼感指数:消費者の景況感を示す指標。「現況」と「期待」に分かれ、先行きの支出動向を占います。
- 暫定的な枠組み:最終合意の前段階として、当面のルールを定める取り決めのこと。
※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「二次制裁」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。
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