日銀9月利上げの織り込みが8割超へ|ドル円158円台後半、介入警戒と財政拡張懸念の綱引きを読み解く

 














このブログで用いている相場の見方と予想の仕方はこちら


【FXファンダメンタルズ分析法動画】



 


 ドル円は158円台後半。

円は「介入警戒」と「財政拡張懸念」に挟まれ、方向を決めきれずにいます。

一方、日銀の9月利上げ観測は約82%まで急上昇。

「なぜ160円は遠のいた?」「日銀は本当に動く?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。

むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。





まずは全体像から(先に結論をお伝えします)

  1. ドル円は158円台後半、「160円は遠のいた」との声も — ドル自体への不安が強まっています
  2. 円は介入警戒と財政拡張懸念の綱引き — どちらも決め手にならず、もみ合いが続いています
  3. 日銀の9月利上げ織り込みは約82%へ急上昇 — 7月会合直前の約23%から3倍超になりました

それでは、一つずつ見ていきましょう。





1. ドル円は158円台後半 — 「160円は遠のいた」

まずは足元の相場から。

円は対ドルで158円台後半で推移しています。

注目したいのは、ドル側の変化です。

SBI FXトレードの上田真理人氏は、159円台に入るとドル円の上値が急に重くなるとし、「160円は遠のいた」と語ります。

その理由が興味深いところです。

「これまでは中東情勢の混迷が深まるとリスクオフでドル高になっていたが、トランプ大統領やベッセント財務長官の迷走によりドルに対する不安が高まっており、ちょっとした米国売りのようになっている」


つまりどういうこと? 

これまで中東の緊張は「有事のドル買い」を通じて円安要因でした。

ところが今は、米国自身への不安が意識され、有事でもドルが買われにくくなっているのです。

前回お伝えした「買い戻し効果が1日で剥落」した一件も、当局の対応力への疑念を強めました。


実際、ブルームバーグ・ドル指数は下落し、ドルの代替資産として金が約3カ月ぶりの高値をつけています。

市場では、ドルの価値低下を見込む「ディベースメント取引」が広がり、米国が3年後に債務危機に陥る可能性を指摘する声まで出始めました。


ただし、上田氏は同時に「高市政権の財政政策運営やリフレ的な志向は変わっておらず、積極的な円買い材料も乏しい」とも指摘しています。

ドルが弱くても、円も強くない。

だから158〜159円で膠着するわけですね。




マネックス証券 FXPLUS


2. 介入警戒と財政拡張懸念の綱引き

いまの円相場を理解するカギが、この2つの力の綱引きです。

初心者の方向けに整理しましょう。


円を支える力:介入警戒

7月末に日米が28年ぶりの協調介入を実施し、両国とも「さらなる介入も躊躇しない」と表明しました。

160円に近づけば再介入があり得る
——この警戒感が、円の下値を支えています。


上田氏が言うように「159円台で上値が重くなる」のは、この心理が働いているためです。


円を押し下げる力:財政拡張懸念

一方で、日本の財政への不安が円を押し下げています。

具体的には、

①高市政権の拡張的な財政運営とリフレ志向

②財源が不明確なままの消費減税

そして新たに、③来年度予算の概算要求が130兆円を超えるとの報道です。


野村証券の後藤祐二朗氏は、この概算要求を巡って「債券市場の不安定化を避けられるかも注目材料だ」と指摘しています。


つまりどういうこと? 

国の予算要求が膨らむと、その財源として国債が増発されるとの見方が広がり、国債が売られて金利が上昇します。

ただしこれは、連載で繰り返しお伝えしている「悪い金利上昇」です。

景気の強さではなく財政不安が理由なので、通貨の信認低下=円安要因になります。


綱引きの現状と注意点

円を買う理由(介入警戒)は「守り」、円を売る理由(財政不安)は「攻め」
——この非対称性が重要です。

介入警戒は「これ以上は下がりにくい」という下支えにはなりますが、円を積極的に買わせる材料ではありません。だから相場は下値が堅いまま、じり安になりやすいのです。


なお、後藤氏は、

米国がこの日にも対イラン経済制裁の詳細を公表する可能性を挙げ、「原油価格が一段と上昇する場合、円安圧力に注意が必要」とも述べています。


原油は6営業日続伸しており、円にとっての逆風は続いています。




ウィブル証券


3. 日銀の9月利上げ観測 — 織り込みは約82%へ

ここが今回いちばんの注目テーマです。

市場の見方が、この1カ月で劇的に変わりました。


織り込みは23%→82%へ

金利スワップ市場が織り込む9月までの利上げ確率は、21日時点で約82%に達しました。

7月会合の直前は約23%でしたから、3倍超の急上昇です。


きっかけは、7月末の日米協調介入でした。

「介入だけでは円安は止まらない→ならば日銀が動くしかない」

という連想が、一気に広がったのです。


日銀は「事前にシグナルを送る」路線

ここで押さえておきたいのが、日銀の情報発信のスタイルです。

2024年7月の利上げは市場への織り込みが不十分で、一部の参加者にとって予想外となり、市場の混乱を招きました。

強い批判を受けた植田総裁は、それ以降、市場との丁寧な対話を重視しています。

実際、その後の3回の利上げでは、事前に明確なシグナルを送ってきました。


さらに今回は、円相場という事情もあります。

市場が利上げを織り込んでいるのに据え置けば、ポジション解消が相次いで円が急落する恐れがあるのです。

つまり日銀は、市場の期待を裏切りにくい状況に置かれています。


今後の発言スケジュールに注目

9月17〜18日の次回会合に向けて、日銀幹部の発言機会が相次ぎます。

  • 8月27日:氷見野良三副総裁の講演(皮切り)
  • 来週:G20会議後に植田総裁の記者会見
  • 9月2日:高田創審議委員の講演
  • 9月10日:増一行審議委員の講演

とくに高田氏は政策委員会で最もタカ派とみられ、先月の会合ではただ1人利上げを提案しました。

増氏は6月会合前の発言が利上げ観測を強めるきっかけとなった人物で、その講演は次回会合前に予定される審議委員の最後の公の場です。


市場参加者の見方 — 発言の「読み方」

大和証券の南健人氏は、こう予想します。

「日銀が次の利上げを9月に行うとはっきり言うことはおそらくないだろう。物価の上振れリスクを強調することで早期利上げの必要性を示唆する可能性が高い。市場はそれを9月利上げのサインと受け止めるだろう」

初心者の方向けに、発言の読み分け方を整理しておきます。

  • 「不確実性」「追加データを見極める」「過去の利上げの影響」を繰り返す
     → 利上げ観測へのけん制と受け取られ、円安方向

  • 「物価の上振れリスク」「円安による物価上昇圧力」「政策が後手に回る警戒」を強く打ち出す
    → 早期利上げ観測を強める円高方向

この違いを意識して発言を聞くと、相場の反応が予想しやすくなります。


最大の変数は「高市首相」

もう一つ、見逃せない論点があります。政権の姿勢です。

日銀ウオッチャーは、植田総裁と高市首相の会談の可能性に注目しています。

両氏はこれまで約3カ月に1回のペースで会談しており、直近は5月22日でした。


南氏は「次回の日銀会合までに両者が再び会談する可能性は十分ある」としたうえで、こう述べています。

「今回は高市首相も早期利上げを受け入れざるを得ないのではないか。日銀が利上げペースを速められるのか、市場がなお懐疑的にみている大きな理由の一つが高市首相だ」


FXへの影響:市場が9月利上げを8割織り込んでいても、なお懐疑が残る理由が「政権が容認するか」という点にあるわけです。

首相から明確な容認メッセージが出れば、利上げの確度が高まって円高材料になります。

逆に政権が慎重姿勢を示せば、期待が剥落して円安が加速するリスクがあります。


なお、政府にとっても反対のハードルは上がっています。日米が協調介入に踏み切った以上、「介入だけに頼らず金融政策でも対応すべきだ」という圧力がかかるためです。

ベッセント米財務長官も、為替介入に続いて金融政策面でも対応が必要になるとの認識を示し、そうした対応が取られることを「強く確信している」と述べています。





4. 今週の最大の焦点 — ウォーシュ議長のジャクソンホール講演

米国側では、28日のウォーシュ議長の講演が最大の注目イベントです。


なぜ重要なのか

ウォーシュ議長は5月の就任以降、先行きの政策運営についてほとんど手掛かりを示していません。

前回7月のFOMC後の記者会見では、説明不足から大規模な債券売りを招きました。

市場が知りたいのは、「反応関数」です。

これは「どんな経済状況になれば、どう政策を動かすか」というルールのこと。

インフレが目標を上回り、公的債務が40兆ドルを超えるなかで、当局がどう対応するのかが焦点です。


市場参加者の見方

  • TDセキュリティーズのモリー・ブルックス氏:
    これまでと同じような内容なら、市場には失望すべきものと受け止められる。そうなれば、長期ゾーンの売りが一段と強まる可能性がある」

  • HSBCのディラジ・ナルラ氏:
    議長には投資家を落ち着かせる機会があるとし、「基調的なインフレ圧力をどう見ているのか見解が示されれば、不確実性に絡む上乗せ金利の低下をある程度正当化できる


FXへの影響:シンプルに整理すると、こうなります。

  • 明確な指針を示す → 不確実性が減り、長期金利が落ち着く → ドルは安定〜やや強含み
  • 従来通り曖昧 → 失望売りで長期金利が上昇 → ただし「悪い金利上昇」なのでドル安にも振れやすい

なお、講演の前日26日には7月のPCE価格指数が発表されます。

FRBが最も重視するインフレ指標です。

最近1カ月の指標(インフレ・雇用・小売)は市場予想の範囲内か下回っており、短期的な利上げ観測は後退しています。

PCEが落ち着けば、講演前に利上げ観測がさらに弱まる可能性があります。





5. その他の材料 — 米加の関税応酬と原油高

■ 米国とカナダの関税応酬 

週末に米加の貿易交渉が決裂し、米国がカナダ製品に50%の関税を発動。

カナダのカーニー首相は9月8日から同額の報復関税を課すと表明しました。


FXへの影響:三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介氏は、

「関税の応酬でインフレ圧力が意識され、米長期金利の上昇要因になれば、日本国債にも重しになる」と指摘。

関税→インフレ→金利上昇という経路は、世界的な金利上昇圧力として意識しておきましょう。


■ 原油は6営業日続伸 

中東紛争の終結が見えず、原油は上昇を続けています。

米国が対イラン経済制裁の詳細を公表すれば、さらに上振れる可能性も。

原油高は日本の貿易赤字拡大を通じた円安要因です。


■ FRB高官は金利上昇を「一蹴」 

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、米国債利回りの上昇について「市場は正常に機能している」とし、金融政策の議論に影響する可能性は低いとの見方を示しました。

9月会合での利上げ主張については明言を避けつつ、「インフレ率が短期間で目標に向けて低下していくとの確信は持てていない」と述べています。




マネックス証券 FXPLUS


今日の要点整理

「守りの円買い」と「攻めの円売り」 介入警戒は下支えにはなりますが、円を積極的に買わせる材料ではありません。

財政拡張懸念という売り材料が残る限り、下値は堅くてもじり安になりやすい構図です。


日銀の発言は「何を強調するか」で読む 

「不確実性」を繰り返せばけん制(円安)、「物価の上振れリスク」を強調すれば早期利上げ示唆(円高)。

27日の氷見野副総裁の講演から始まります。


今週の主役はジャクソンホール 

28日のウォーシュ議長講演で、曖昧なままなら長期金利が一段と上昇する可能性があります。26日のPCEとあわせて、週後半に方向感が出そうです。

日銀の利上げ観測という円高材料と、財政懸念・原油高という円安材料
——どちらが優勢になるかで、160円を再び試すのか、それとも反転するのかが決まります。

ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。




ウィブル証券


今回の新出用語

  • ディベースメント取引:通貨の価値が下がることを見込んで、金など実物資産に資金を移す取引のこと。
  • 反応関数:中央銀行が「どんな経済状況で、どう政策を動かすか」というルールのこと。
  • 概算要求:各省庁が翌年度予算として財務省に提出する要求額。膨らむと財政不安が意識されます。
  • クライメート・トランジション利付国債:脱炭素関連の事業に使途を限定した日本国債のこと。

※「介入警戒」「キャリートレード」「良い金利上昇と悪い金利上昇」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。



 マネックス証券 FXPLUS

ウィブル証券

  



運営者情報

運営者:FX研究ブログ
管理者:ブタメン

略歴:管理人はファンダメンタルズ分析をメインとするトレーダー
ドル円をメインに分析解説を行っております。
2025
年より当ブログを運営

XブタメンFX