原油100ドル割れでも円安が続く理由|ドル円157円台半ば、米高官が相次ぎ追加利上げを示唆
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原油は4営業日続落し、1バレル100ドルを割り込みました。米長期金利も5%を下回っています。本来なら円高に働く材料がそろいました。
それでも円は157円台半ばまで下落しています。
日本はシルバーウィークで今日も休場です。材料と値動きが噛み合わない理由を整理します。
今日のポイント
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ドル円は157円台半ば。連休の薄商いのなか、じりじりと円安が進んでいます
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米高官が相次いで追加利上げの可能性に言及。短期金利が下がらないことが円安の背景です
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原油は100ドル割れ。外交進展への期待が広がっています
1. ドル円は157円台半ばで推移
円は対ドルで続落し、一時157円53銭をつけました。
アジア時間には156円台半ば近辺まで上昇する場面もありました。しかしその後はじりじりと水準を切り下げる展開です。
背景にあるのは、前回お伝えした日銀への失望です。先週の会合で今後の利上げペースについて明確な指針が示されなかったことが、引き続き円の重しになっています。
円高に備える動きも
ただし、一方向に円安が進むとみる向きばかりではありません。
日銀が18日にレートチェックを実施したとの報道を背景に、為替オプション市場では円高に備える動きが再び強まっています。
円安が進めば、当局が再びレートチェックや介入に動く可能性が高まるためです。
2. 原油安でも円が買われない理由
今日の相場でいちばん押さえておきたいのが、この点です。
円高材料はそろっていた
連載で繰り返しお伝えしてきたとおり、原油価格の下落は円高要因です。
日本はエネルギーの大半を輸入しています。原油が下がれば輸入代金が減り、そのぶん円を売ってドルを買う必要が減ります。
加えて、原油安は米国のインフレ懸念を和らげ、米金利の低下を通じてドル安にもつながります。
実際、米10年債利回りは4.95%と5%を下回りました。30年債利回りも低下しています。
それでも円安が進んだ
ところが、円は売られました。
理由は、金利の動きの中身にあります。
米国債利回りの動きを年限別に見ると、10年債は4.7bp、30年債は4.5bp低下しました。一方、2年債は0.3bp上昇してほぼ横ばいです。
つまり、下がったのは長期金利だけで、短期金利は下がっていません。
為替は短期金利に反応しやすい
ここがポイントです。
為替は主に短期から中期の金利差で動きやすい性質があります。短期金利は中央銀行の政策金利の見通しを直接反映するためです。
原油安で長期のインフレ懸念は和らぎました。しかしFRBの利上げ見通しは変わっていません。後述するとおり、米高官が相次いで追加利上げの可能性に言及しているからです。
短期の日米金利差が縮まらない以上、原油が下がっても円は買われにくい。これが今日の値動きの構造です。
3. 米高官が相次いで追加利上げを示唆
セントルイス連銀ムサレム総裁
ムサレム総裁は21日、FOMCのインフレ目標を達成するには追加利上げが必要になる可能性があると述べました。
注目すべきは、その理由です。
「根強い需要と繰り返し生じる供給要因の双方が、インフレリスクを高止まりさせている。インフレ抑制に向けて政策をさらに引き締めなければ、18カ月後のインフレ率は2%の目標に達するよりも、大幅に上回っている可能性の方が高いと判断している」
さらに、現在3.75%から4%の政策金利について「緩和的な側にある」と述べ、経済成長を鈍化させてインフレを抑えるには引き締めの度合いが十分ではないとの認識を示しました。
前回お伝えしたとおり、ウォーシュ議長は今回の利上げについて「緩和の度合いを幾分縮小した」と表現していました。ムサレム総裁の発言は、それと整合する内容です。今の金利はまだ緩和的であり、さらに上げる余地がある、という見方です。
また同総裁は、将来的に大幅な政策変更に踏み切るよりも、早い段階から小刻みに利上げする方が「混乱が少ない」とも指摘しました。
シカゴ連銀グールズビー総裁
グールズビー総裁も同日、より踏み込んだ警告を発しています。
「供給ショックは発生頻度が高まり、影響も深刻化し、長期化している。インフレをもたらす供給ショックが根強くなれば、それを看過するという考え方の根拠の一部はもはや成り立たなくなる」
「看過する」とはどういうことか
少し補足します。
中央銀行は通常、原油高のような供給ショックによるインフレには慎重に対応します。一時的な値上がりであれば、時間とともに自然に収まると考えられるためです。これを「看過する」と表現します。
利上げで需要を抑えても、原油の供給不足は解消しません。むしろ景気を冷やすだけになりかねない、という考え方です。
ところがグールズビー総裁は、ショックが頻発し長期化している現状では、その前提が成り立たなくなったと指摘しました。
同総裁は、繰り返し発生するショックを無視し続けることは「物価安定という責務を果たさないことを意味する」と述べ、「インフレを押し下げる唯一の方法は、金利を引き上げて供給と需要の差を縮めることだ」としています。
そのうえで、「雇用とインフレの間の痛みを伴うトレードオフ」だとして、「正常化への道は厳しいものにならざるを得ない」と語りました。
FXへの影響
整理すると、こうなります。
原油価格が下がっても、FRBは利上げを続ける可能性が高い、というのが高官たちのメッセージです。
これは、先ほど説明した「短期金利が下がらない」理由そのものです。原油安という円高材料が、FRBのタカ派姿勢によって打ち消されているわけです。
スワップ市場では、来年7月末までにあと3回の利上げが織り込まれています。
なお、22日にはNY連銀のウィリアムズ総裁が講演を予定しています。同総裁はこれまでハト派寄りの見方を示してきただけに、発言内容によってはドルの方向が変わる可能性があります。
4. 介入を「円売りの好機」とみる声
介入への警戒が高まる一方で、それを逆手に取る見方も出ています。
UBSアセット・マネジメントのケビン・ジャオ氏は、日本当局が円相場を下支えするため再び介入に動けば、円を売る好機になると指摘しました。
同氏は日銀による18日の利上げについて、タカ派転換を示すものではないとみています。
「円安につながる基本的な政策は変わっていない。ドル円は今後さらに上昇する可能性が高く、どこかの時点で当局は再び介入を実施するだろう。そうしなければ面目が立たないからだ」
この見方が意味すること
ジャオ氏の見立ては、介入が円安の流れを変えられないという前提に立っています。
以前にもお伝えしたとおり、7月の協調介入でも155円台まで円高が進んだあと、約1カ月で160円台へ戻りました。介入は一時的な円高を生むものの、金利差という根本要因は変えられない、という経験則です。
FXへの影響としては、介入で急な円高が起きた場合、その後に円安方向への戻りが起きやすいということです。
ただし、これはあくまで一つの見方です。介入の直後は値動きが極めて荒くなります。戻りを狙うにしても、急変に巻き込まれないよう建玉の管理には注意が必要です。
5. 原油は100ドル割れ、外交進展に期待
何が起きているのか
北海ブレント原油は4営業日続落し、1バレル100ドルちょうど近辺で終了しました。100ドルを下回るのは今月9日以来です。
背景には複数の材料があります。
トランプ大統領は、イランのペゼシュキアン大統領との会談を恐らく排除しない考えを示しました。ペゼシュキアン氏は国連総会に出席するため、数日中にニューヨークを訪れると報じられています。
ホルムズ海峡の輸送量も回復しています。米中央軍によると、過去2週間に同海峡を通過した原油と液化天然ガスの輸送量は6カ月ぶりの高水準です。17日から19日には、米国の支援を受けながら1日あたり約32隻が通過しました。
サウジアラビアは、紅海につながる東西横断パイプラインの停止を受け、原油輸送をホルムズ海峡経由に切り替えています。ペルシャ湾側の主要港で確認された船舶数は6月以来の最多となりました。
A/Sグローバル・リスク・マネジメントのアルネ・ローマン・ラスムセン氏は、「原油にかかっていた最も強い上昇圧力は和らぎつつある可能性がある」と述べています。
注意したい点
ただし、楽観は禁物です。
米国のディーゼル小売価格はガロンあたり6.50ドルを超え、過去最高値を更新しました。原油は今年に入り65%余り上昇しています。
フリーダム・キャピタル・マーケッツのジェイ・ウッズ氏は、外交進展の兆しが見えれば原油が下がりインフレ懸念も和らぐ一方、情勢が緊迫すれば原油が上昇して消費者を圧迫し、FRBの判断を難しくする可能性があると指摘しています。
INGのフランチェスコ・ペソレ氏は、今週は主要な米経済指標の発表が少ないため、「原油価格がドル相場を左右する最大の要因となりそうだ」との見方です。
6. 米株は大幅高、ただし警戒も
米株式市場は上昇し、S&P500種株価指数は8月初旬以来の大幅高となりました。
メタ・プラットフォームズの新たなAIエージェントが好調な滑り出しを示し、AI業界を巡る楽観が強まったためです。メタ株は11%高、AMDは10%上昇して時価総額が1兆ドルを突破しました。
ベスポーク・インベストメント・グループは、「株価上昇を実質的にけん引しているのは、原油価格と米国債利回りの低下だけだ」と指摘しています。
一方で、警戒する声もあります。モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏率いるチームは、金融環境がさらに引き締まるか、エネルギー価格が大幅に上昇すれば、S&P500種は年末に向けて強気相場が再開する前に7100まで下落する可能性があると警告しました。現在の水準から最大7%の下落です。
FXへの影響
株高はリスク選好を強め、円が売られやすい環境を作ります。今日の円安には、この要因も加わっています。
逆に株価が急落すれば、リスク回避の円買いが出やすくなります。ウィルソン氏の指摘するシナリオが実現した場合は、円高方向への動きも想定しておく必要があります。
7. 今週の注目材料
最後に、今週押さえておきたい材料です。
米中首脳会談が今週予定されています。米中両国の当局者は、AIや貿易、投資を巡る協議について前向きな評価を示しており、双方が関係安定化を望んでいることがうかがえます。
ウッズ氏は、関税の引き下げや重要鉱物へのアクセス改善につながる合意に至るかが注目されるとし、協議が決裂すれば貿易戦争への懸念が再燃して市場の変動が激しくなる可能性があると指摘しています。
国連総会での外交の動きも、原油価格を通じて為替に影響します。
日本市場の取引再開は24日です。それまでは流動性の低い状態が続くため、値動きが荒くなりやすい点は引き続き意識しておきたいところです。
今日のまとめ
原油が100ドルを割り、米長期金利も5%を下回りました。それでも円は157円台半ばまで下落しています。
理由は、短期金利が下がっていないことです。米高官が相次いで追加利上げの可能性に言及しており、FRBの利上げ見通しは変わっていません。為替は短期金利差に反応しやすいため、原油安が円高につながりにくくなっています。
ムサレム総裁は現在の政策金利を「緩和的な側」と表現し、グールズビー総裁は供給ショックをもはや看過できないと警告しました。
一方で、介入への警戒から円高に備える動きも出ています。連休中の薄商いのなか、上下どちらにも急変が起こり得る局面です。
今回の新出用語
- 供給ショック:原油の供給途絶など、モノの供給側で起きる打撃。物価を押し上げる一方、需要を抑えても解消しにくい特徴があります。
- 看過:中央銀行が一時的な物価上昇に対して、あえて利上げで対応しないこと。
- トレードオフ:一方を得ると他方を失う関係。雇用とインフレの間で起こりやすい関係です。
- 逆イールド:短期金利が長期金利を上回る状態。景気後退の前兆とされることがあります。
※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「レートチェック」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。
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