原油109ドルで米金利が急騰|ドル円154円台、日銀利上げは全員一致予想、今夜のCPIをどう見るか
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原油が1バレル109ドルを突破し、米2年債利回りは2024年以来初めて4.5%を上回りました。
インフレ懸念からドルが買われ、円は154円台まで戻しています。
一方、日銀の今月の利上げは、調査対象のエコノミスト52人全員が予想する状況になりました。
今夜の米CPIを含め、来週の日米中銀会合に向けた材料を整理します。
今日のポイント
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ドル円は154円台前半。米金利上昇でドルが買われましたが、155円は突破できず
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日銀の9月利上げはエコノミスト52人全員が予想。焦点はその先のペース
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今夜の米CPIは、来週のFOMCの判断を左右します
1. ドル円は154円台前半で下げ渋り
円は対ドルで154円台前半で推移しています。
前日は原油価格と米長期金利の上昇を背景にドルが買われました。
その流れが一服し、円は下げ渋っています。
三菱UFJ信託銀行の小野寺孝文氏は、
「インフレ懸念の高まりにより米長期金利が上昇し、ドルが買われた」と説明。
そのうえで、日銀の利上げペース加速への思惑から「投機筋もこれまでのように円売り一辺倒ではなくなっており、155円は突破できなかった」と指摘しています。
155円を超えられなかった意味
ここが今の相場を読むうえで重要な点です。
原油高と米金利上昇という、円安に働く材料が2つそろいました。
それでも155円を超えられなかった。
前回までにお伝えしてきたとおり、155円は長く上値抵抗線として機能し、8日に割り込んだばかりの水準です。
一度突破された節目は、今度は逆方向の抵抗として働くことがあります。
円安方向に戻ろうとしても、そこで頭を抑えられるわけです。
小野寺氏は、
今夜のCPIが予想を上振れれば9月の米利上げ観測が一段と高まり、ドル円は155円を突破する可能性があるとみています。
つまり155円は、円高トレンドが続くのか、いったん巻き戻されるのかの分岐点になっています。
2. 昨日の指標結果と市場の反応
米PPIはエネルギー主導で上昇
8月の米PPI(生産者物価指数)は、総合が前月比0.4%上昇と、5月以来の大幅な伸びとなりました。市場予想と一致しています。
一方、コアPPIは前月比0.2%上昇と、予想の0.3%を下回りました。
つまり、上昇の主因はエネルギーです。
エネルギー価格と輸送・倉庫関連コストが、2カ月連続の低下から一転して急上昇しました。
見逃せないのは「PCEに反映される項目」
ただし、単純にエネルギー主導だからと安心はできません。
ブルームバーグ・エコノミクスのトロイ・デュリー氏は、
「FRBが重視するPCE価格指数の算出に反映されるPPIの項目は、病院サービス価格と航空運賃の上昇が押し上げ要因となって、市場予想を大幅に上回った」と指摘しています。
PPIの一部の項目は、FRBが最も重視するPCE価格指数の計算に使われます。
そこが上振れたということは、今月末に発表される8月のPCEも高く出る可能性があるわけです。
同氏は、この結果を受けて9月の米利上げの可能性も高まったと述べています。
米金利が急騰
市場の反応は明確でした。
金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは16bp上昇して4.59%。2024年以来初めて4.5%を上回りました。
1日の上昇幅としては、2025年4月の関税ショック以来の大きさです。
30年債利回りは5.37%と、19年ぶりの高水準を更新しました。
国債買い戻しも失望を招いた
もう一つ、金利上昇に拍車をかけた要因があります。
米財務省が実施した国債買い戻しの購入額が、事前に示していた上限60億ドルに届かず、51億9000万ドルにとどまったのです。
105億ドルの売却申し込みがあったにもかかわらず、です。
ベッセント長官は「われわれは安い場合だけ国債を買い戻す」と説明しました。
不利な条件の応札を拒否したという理屈です。
しかし市場は、金利上昇を抑える当局の能力に対する疑念を強めました。
DWSアメリカズのジョージ・カトランボーン氏は、
「ベッセント氏は銃撃戦に水鉄砲で挑んでいるようなものだ」と指摘。
現在の債務残高や財政赤字、インフレ懸念を踏まえれば、投資家が30年債を買うために求める上乗せ金利を抑えるには不十分だと論じました。
FXへの影響
整理すると、こうなります。
米金利の上昇はドル買い材料です。実際、円は154円台まで戻しました。
ただし、この金利上昇は財政不安とインフレ懸念によるものです。
連載で繰り返しお伝えしている「悪い金利上昇」ですから、ドル買いの持続力には限界があります。
さらに、円側には日銀の利上げ観測という支えがあります。
この2つがぶつかった結果が、155円の手前での足踏みです。
3. 日銀の9月利上げは「全員一致」の予想に
調査結果の中身
ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に実施した調査で、17日と18日の会合について全員が0.25ポイントの利上げを予想しました。
政策金利は1.0%程度から1.25%程度になります。
ここまで見方がそろうのは、異例のことです。
その次の利上げ時期については、58%が来年1月、35%が今年12月を見込んでいます。
10月会合での連続利上げを予想する声はありませんでした。
利上げペースの見方が急速に変化
注目すべきは、ペースに関する見方の変化です。
今後の利上げペースについて、四半期に1回程度との回答が46%で最多。
次いで4〜5カ月に1回程度が36%となりました。
7月会合前の前回調査では、半年に1回程度との見方が82%を占めていました。
わずか2カ月で、想定が大きく前倒しされたことになります。
背景にある「外圧」
この変化の背景として、植田総裁が7月会合後に利上げペース加速の可能性に言及したことが挙げられます。
しかしそれ以上に、いわゆる「外圧」を指摘する声が少なくありません。
7月会合の直後に日米が協調介入に踏み切って以降、ベッセント米財務長官による日銀の利上げに期待感を示す発言が続いているためです。
調査でも、日米の協調介入を受けて高市政権が日銀の利上げに反対しにくくなったと思うかとの問いに、82%が「はい」と回答しました。
シティグループ証券の中村颯介氏は、
協調介入を経て日米当局の円安けん制は新たな局面に入ったとし、来年末までに日銀は2%まで利上げするとみています。
注目は反対票の数
会合では、利上げへの反対票の動向も注目されています。
高市政権の指名で審議委員に就任した浅田統一郎氏と佐藤綾野氏の投票行動から、金融政策に対する政権の意向を探る見方があるためです。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美氏は、
両氏が利上げに反対した場合、来年の審議委員人事でもハト派の人物が任命される可能性が高いとの印象になると指摘。
反対が1人であれば政権の意向はそこまで強く影響していないとの受け止めになり、全員賛成なら政権の姿勢の変化、あるいは米国の影響力の強さが意識されるとみています。
FXへの影響
利上げ自体は完全に織り込まれています。
したがって、実施されても円高材料にはなりません。
相場を動かすのは、その先のペースに関するメッセージです。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏も、
先行きの利上げペースや中立金利までの距離感について「植田総裁がどのように発言するかが注目だ」と述べています。
前回お伝えしたとおり、期待が膨らみすぎているぶん、それを下回れば円売りが再燃するリスクがあります。
反対票の数も含め、会合の中身を丁寧に見る必要があります。
4. 今夜の米CPI
直近3回の予想と結果
5月分は、総合が前年比4.2%と2023年4月以来の高水準でしたが、予想どおりでした。
コアも前年比2.9%で予想どおり。ただしコアの前月比は0.2%と、予想の0.3%を下回っています。
エネルギーが前月比3.9%上昇し、全体を押し上げました。
6月分は、総合が前月比マイナス0.4%と、予想のマイナス0.2%を大きく下回りました。
2020年4月以来の大幅な低下です。
前年比も3.5%と予想3.8%を下回りました。
コアは前月比横ばいで予想0.2%を下回り、前年比2.6%も予想2.8%を下回っています。
エネルギーが5.7%低下したことが主因でした。
7月分は、総合が前月比0.1%・前年比3.4%、コアが前月比0.2%・前年比2.5%と、4項目すべてが予想どおりでした。
3回を通じて共通するのは、振れ幅の大半をエネルギーが作っているという点です。
今回の予想
8月分は、総合が前月比0.4%上昇と加速する見通しです。
ガソリン価格の上昇が主因とされます。
一方、コアは前月比0.2%と緩やかな伸びにとどまり、前年比では2.4%へ低下すると予想されています。
実現すれば2021年以来の小幅な伸びです。
結果ごとに考えられる値動き
コアが予想を上回れば、9月の米利上げ観測が一段と高まります。
ドル買いが進み、155円を突破する可能性があります。
コアが予想を下回れば、利上げ観測が後退してドル売り。
円買いの流れと重なれば、152円台を試す展開も考えられます。
ほぼ予想どおりの場合は、総合とコアの乖離をどう受け止めるかで反応が分かれます。
総合が加速してもコアが2.4%へ低下していれば、基調のインフレは落ち着いているとの見方が優勢になりやすいでしょう。
今回のCPIで意識したいこと
来週15日から16日にFOMCが開かれます。
FRB当局者の一部は、今週のインフレ統計が政策判断を左右する可能性があると示唆してきました。
ウォーシュ議長も先月の講演で、基調的なインフレ率が明確に改善しているとの確信を持てないのであれば、FRBには「やるべき仕事がある」と述べています。
つまり今夜のCPIは、FOMCの結果を占う最後の大きな材料です。
発表前後は値動きが荒くなりやすく、ポジションの持ち方には注意が必要です。
5. ECBが2会合ぶりの利上げ
ECBは10日の政策委員会で、中銀預金金利を0.25ポイント引き上げ、2.50%としました。
今年2回目の利上げです。
ラガルド総裁は、今回の利上げは「迷う余地のない判断」で全会一致だったと説明しました。
声明では「中東での戦争は引き続きインフレ圧力を生み出しており、インフレ率は長期にわたって目標を大幅に上回る見通しだ」としています。
トレーダーは現在、2027年10月までにさらに3回の利上げが実施されると完全に織り込んでいます。
FXへの影響としては、ECBの積極姿勢はユーロを支え、相対的にドルの上値を抑える要因になります。
FRBと英中銀はまだ利上げに踏み切っておらず、来週も据え置く可能性があります。
主要中銀のなかでECBが最も前に出ている構図です。
6. キャリー巻き戻しが株式市場に波及する懸念
世界の株式投資家も、円高の加速を警戒し始めています。
円は8日に一時152円89銭まで上昇し、わずか4日間で7円超、5%近く円高に振れました。
この動きが、キャリートレードの巻き戻しへの懸念を高めています。
CFTCのデータによると、9月1日時点の投資筋の円売り越しポジションは11万枚超と、1週間前から3割以上増えていました。
KBC証券のアンドレア・ガベローネ氏は、
円の投機的ポジションは依然高水準であり、「世界の株式市場に警告を発するサインとして円はわれわれが注視する唯一の指標だ」と話しています。
なぜ株安につながるのか
円高が進むと、円を借りて投資していた資金の返済コストが上がります。
損益を確定させたい投資家は、最も流動性が高く収益性のよい保有株を売却することになります。
今年前半に大きく上昇したAI・半導体関連株が、その対象になりやすいわけです。
ペッパーストーン・グループのディリン・ウー氏は、
ベータ値が高くPERの高い成長株が最も打撃を受ける傾向があると指摘。
新興国株や高PERの米ハイテク株に注意が必要だとしています。
日本株では152円が分岐点
ティー・ロウ・プライス・ジャパンのデイビッド・クルウェル氏は、
企業の今期想定レートである152円が重要水準だと指摘。
これを上回る円高では、今後12カ月の利益の伸びがマイナスに転じる恐れがあるとみています。
FXへの影響としては、株安が進めばリスク回避の円買いが出やすくなる一方、日本企業の業績悪化は中長期的に円の重しにもなります。
152円という水準は、為替と株式の両方にとって節目になりそうです。
今日のまとめ
原油高と米金利上昇という円安材料が2つそろっても、155円は突破できませんでした。
日銀の利上げ観測が、それだけ強く円を支えています。
日銀の9月利上げは全員が予想する状況です。
実施されても円高材料にはならず、相場を動かすのはその先のペースに関するメッセージになります。
今夜のCPIは、来週のFOMCを占う最後の大きな材料です。
コアが2.4%へ低下するかどうかが焦点になります。
155円と152円。
この2つの水準が、当面の攻防のポイントになりそうです。
今回の新出用語
- 中立金利:景気を刺激も抑制もしない金利水準。利上げの到達点を見積もる際の目安になります。
- ターミナルレート:利上げサイクルの最終到達点。予想が引き上げられると、中長期の金利が上昇します。
- ベータ値:市場全体の値動きに対する感応度。高いほど、相場の変動を大きく受けます。
- 想定為替レート:企業が業績見通しを立てる際に前提とする為替水準。これを超える円高は、業績下振れ要因になります。
※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「キャリートレード」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。
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