1分で50銭の急伸、介入警戒で神経質な円|ドル円157円台半ば、原油98ドル台でも下がらない構造
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22日の為替市場で、円が1分間に50銭上昇する場面がありました。日中安値の157円78銭から156円86銭まで、一気に1円近い急伸です。
明確な材料があったわけではありません。介入への警戒が、値動きを神経質にしています。
連休明けの相場で押さえておきたい構造を整理します。
今日のポイント
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ドル円は157円台半ば。介入警戒から上下に振れやすい地合いです
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原油は98ドル台まで下落。それでも円が買われない理由があります
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FRB高官が相次いで追加利上げに言及。金利差が縮まりにくい状況です
1. 1分間に50銭という値動き
22日のアジア時間、円は一時157円78銭まで売られました。
ところがその後、1分間で50銭も円高方向に振れ、156円86銭まで急伸しています。日中安値からは1円近い上昇です。
明確な材料は確認されていません。介入の可能性に備えた損切り注文が、上昇に拍車をかけた可能性が指摘されています。
なぜこうした動きが起きるのか
ここは構造を理解しておく価値があります。
市場には現在、円安方向のポジションを持っている参加者が多くいます。その多くが、介入による急変に備えて損切り注文を置いています。
損切り注文は特定の価格帯に集中しやすい性質があります。何かのきっかけで価格がその水準に達すると、注文が次々と執行されます。
損切りのための円買いが、さらに円高を呼ぶ。この連鎖が、1分で50銭という値動きを生みました。
連休中の薄商いも影響
前回お伝えしたとおり、日本はシルバーウィークで市場参加者が減っていました。
取引量が少ない状況では、同じ規模の注文でも価格への影響が大きくなります。普段なら20銭の動きで済むところが、50銭動いてしまうわけです。
ストーンXファイナンシャルの呉明賾氏は、「この水準で円キャリー取引に踏み切れるのは、勇気のある投資家だけだ」と指摘。円がさらに下落する余地は限られていると述べています。
2. 原油98ドル台でも円が買われない理由
原油は下落が続いている
北海ブレント原油は一時98ドルを下回る場面がありました。前日比1.1%安の99.25ドルで終えています。
理由は供給面の改善です。
サウジアラビアが、今月初めのドローン攻撃で停止していた東西パイプラインの稼働再開に向けた作業に入りました。今週後半にも、同パイプラインを通じた原油輸出の再開を目指しています。
このパイプラインは日量最大700万バレルの輸送能力を持ち、ホルムズ海峡を迂回する主要ルートとして使われてきました。
外交面でも進展の兆し
トランプ大統領は22日、米当局者がニューヨークでイラン側の代表者と「非常に良い」会談を行ったと明らかにしました。
会談は3時間に及び、「非常に生産的」だったとし、近く次回会談を行う方向で調整しているとしています。
ただし、同氏は国連総会の演説で「イランが国を立て直し、かつてないほど偉大な国を築けるような合意が成立するのか。それとも、私がイランを一気に壊滅させるのか」とも述べており、方針は定まっていません。
それでも円安が続く理由
前回もお伝えした構造ですが、改めて整理します。
原油安は本来、円高要因です。日本の輸入コストが減り、円を売ってドルを買う必要が減るためです。
しかし、それを上回る円安要因があります。日米の金利差です。
米2年債利回りは4.75%で、ほぼ横ばいが続いています。10年債は4.96%、30年債は5.30%といずれも上昇しました。
つまり、原油が下がっても米金利は下がっていません。為替が反応しやすい短期金利が動かない以上、円は買われにくい状況です。
3. FRB高官が相次いで追加利上げに言及
米金利が下がらない理由は、FRB高官の発言にあります。
リッチモンド連銀バーキン総裁
バーキン総裁は、インフレをもたらしているショックが和らぐには時間がかかる可能性があり、強いインフレ圧力が定着するリスクがあると警告しました。
「こうしたショックはいずれ収まるかもしれないが、時間がかかるとみている。それまでの間、高いインフレ水準が将来のインフレに影響を及ぼすリスクがある」
追加利上げの必要性については明言を避け、「追加利上げは必要になるのか。必要なら何回か。今後を見極めたい」と述べています。
ボストン連銀コリンズ総裁
コリンズ総裁は、先週の利上げ決定を支持したと表明しました。
「FF金利をやや景気抑制的な水準にすることで、インフレ率が持続的に目標へ戻るのを確実にする一助になる」
注目すべきは、同氏がインフレ率が「2%を著しく上回る」状態が続くシナリオの「可能性が高まっている」との見方を示した点です。
さらに同氏は、年末までに今年2回目の利上げを予想したFRB当局者の1人だと明らかにしています。
FXへの影響
前回お伝えしたムサレム総裁とグールズビー総裁に続き、今回はバーキン総裁とコリンズ総裁です。複数の高官が、インフレの根強さと追加利上げの可能性に言及しています。
これが意味するのは、原油が下がってもFRBは利上げ姿勢を緩めないということです。
短期金利が下がらなければ、日米の金利差も縮まりません。原油安という円高材料が、この構造に打ち消されている状況です。
なお、コリンズ総裁は2027年については金利が据え置かれるとの見通しを示しています。利上げが続くのは年内から来年にかけて、という見方です。
4. 介入警戒の現状
市場は介入を意識している
22日の急伸が示すとおり、市場は日本当局の介入を強く警戒しています。
前回お伝えしたとおり、日銀は18日にレートチェックを実施したと報じられました。為替オプション市場でも、円高に備える動きが強まっています。
ただし介入だけでは流れは変わらない
一方で、介入の限界を指摘する声も根強くあります。
連載で追ってきたとおり、7月の協調介入では155円台まで円高が進んだものの、約1カ月で160円台へ戻りました。金利差という根本要因が変わらない限り、介入の効果は一時的にとどまります。
前回紹介したUBSアセット・マネジメントのジャオ氏は、当局が再び介入すれば円を売る好機になるとの見方を示していました。
具体的にどう構えるか
現実的な対応を整理します。
円安方向のポジションを持つ場合、介入による急変は常に想定しておく必要があります。22日のように1分で50銭動く局面では、損切り注文が想定より不利な価格で約定する可能性があります。
ポジションのサイズを抑える判断に合理性があります。
円高方向を狙う場合も、介入頼みの戦略には限界があります。金利差が縮まらない限り、円高は続きにくいためです。
いずれにせよ、157円台後半から158円にかけては当局が動きやすい水準として意識しておきたいところです。
5. 日米首脳の動きと米中首脳会談
外交面でも、相場に関わる動きがありました。
トランプ大統領は22日、ニューヨークで高市首相と会談しました。高市氏は、米中首脳会談の前にトランプ氏と直接意見交換を行うため、国連総会での演説日程を2日前倒ししています。
トランプ氏は会談の冒頭、日中関係について「もちろん話し合う」と述べました。
24日には、中国の習近平国家主席との首脳会談が予定されています。3年ぶりの訪米です。貿易やAI、イラン戦争、台湾の将来といった対立を抱える問題で、共通点を探る機会となります。
FXへの影響
米中首脳会談の結果は、リスク選好を通じて為替に影響します。
関税の引き下げなど前向きな合意があれば、株高とともに円が売られやすくなります。逆に協議が決裂すれば、貿易戦争への懸念から市場の変動が激しくなり、リスク回避の円買いが出る可能性があります。
日中関係についても、昨年11月の答弁を発端とした冷え込みが続いています。中国はレアアース供給の制限に踏み切りました。日米首脳会談でこの問題がどう扱われたかは、今後の展開を見るうえで意味を持ちます。
6. 湾岸諸国は戦闘激化の回避を要請
中東情勢について、新たな動きがあります。
サウジアラビア、UAE、カタールなど6カ国で構成する湾岸協力会議の当局者が、トランプ大統領との会談でイランとの戦闘をこれ以上激化させないよう求める見通しです。
背景には、湾岸諸国自身の経済的な打撃があります。ホルムズ海峡の通航混乱が長引き、域内経済は縮小または大幅に減速しました。
ブルームバーグの調査によると、経済が今年最も低調な9カ国のうち5カ国を湾岸協力会議の加盟国が占める見通しです。カタールのGDPは12%、クウェートは11%減少する見込みとされています。
一方、イランのイスラム革命防衛隊は22日、長期戦に備えていると表明しました。「国益のために戦う必要があるなら、戦わなければならない。戦争と並行して交渉する必要があるなら、交渉しなければならない」との立場です。
イランのインフレ率は海上封鎖の影響もあり90%近くまで加速していますが、指導部が態度を軟化させる兆しはありません。
FXへの影響
湾岸諸国が自制を求めていることは、戦闘激化のリスクをやや下げる材料です。
原油が下落基調にあるのも、この文脈で理解できます。ただし、イラン側が長期戦の構えを崩していない以上、緊張が再燃する可能性は残ります。
原油価格は引き続き、日々確認しておきたい指標です。
今日のまとめ
1分で50銭という値動きは、介入警戒と薄商いが重なった結果です。損切り注文が集中する水準では、こうした急変が起こりやすくなります。
原油は98ドル台まで下がりましたが、円は買われていません。米短期金利が下がらず、日米の金利差が縮まらないためです。
FRB高官は相次いで追加利上げの可能性に言及しています。バーキン総裁はインフレの定着リスクを警告し、コリンズ総裁は年内2回目の利上げを予想する1人だと明かしました。
157円台後半から158円にかけては、当局が動きやすい水準です。ポジションのサイズには注意しておきたいところです。
今回の新出用語
- ストップロス注文:損失を限定するための自動的な損切り注文。特定の価格帯に集中しやすく、執行されると値動きが加速します。
- 景気抑制的な水準:金利が経済活動を抑える水準にあること。中立金利を超えた領域を指します。
- 湾岸協力会議(GCC):サウジアラビアやUAEなど、ペルシャ湾岸6カ国で構成する地域協力機構。
- ベアスティープ化:長期金利の上昇が短期金利の上昇を上回り、利回り曲線の傾きが急になること。
※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「レートチェック」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。
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