ドル円が一時158円22銭へ急落、介入警戒が再燃|ベッセント長官の圧力と日銀の「苦しい選択」


 










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ニューヨーク市場でドル円が一時158円22銭まで急落し、介入への警戒が一気に高まりました。

背景には、日銀タカ派委員の発言とベッセント米財務長官の圧力があります。

「介入はあったのか」

「日銀は動くのか」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。

むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。





まずは全体像から(先に結論をお伝えします)

  1. ドル円は一時158円22銭へ急落、その後158円台後半へ戻す
  2. 急落の引き金は、日銀・高田委員の「連続利上げ」示唆とベッセント長官の発言
  3. 日銀の9月利上げは市場が完全に織り込み、動いても動かなくても波乱含み

それでは、一つずつ見ていきましょう。





1. ドル円は158円台前半から後半へ

まずは値動きの整理から。

2日のニューヨーク市場で、円は対ドルで一時158円22銭まで急伸しました。

前日まで160円をうかがう水準にいたことを考えると、大きな動きです。


その後、3日の東京市場では158円台後半まで戻しています。

輸入企業などによる実需のドル買いが入ったためです。


みずほ銀行の長谷川久悟氏は、

翌日に米雇用統計を控えていることもあり、いったんは落ち着くと分析。

「下値では実需筋を含めドル円を買いたい向きが多く、158円割れは見通せない」とし、「どちらかといえばドルが反発基調となるのではないか」と述べています。


一方、債券は反発しました。

このところ下落していた反動もあり、新発20年債と30年債の利回りはともに7bp低下しています。

株式はTOPIXが反発する一方、日経平均は下げるなど、方向感に乏しい展開です。




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2. 急落の引き金は何だったのか

介入は確認されなかった

まず押さえておきたいのは、今回の急落について、投資家は通貨当局による介入の明確な兆候をとらえることができなかった、という点です。

つまり、実弾の介入があったかどうかは分かっていません。


それでも市場は、再度の介入の可能性に警戒を強めています。

7月末の日米協調介入の効果が相殺される形で円安が進んでいただけに、当局が動く条件はそろっていたためです。


マニュライフのネイサン・スフト氏は、

この動きについて「ポジションがどれだけ敏感になっているかを示している」と指摘。

市場は「当局が円高を望んでいるというメッセージを受け取った」と話しています。


引き金となった2つの発言

急落の背景には、2つの発言がありました。

ひとつは、日銀の高田創審議委員です。

同氏は2日、一般論としつつ、連続利上げや利上げ幅の拡大の可能性を示唆しました。

高田氏は前回の決定会合でも利上げを提案しており、政策委員会のなかで最もタカ派として知られる人物です。


もうひとつが、ベッセント米財務長官の「日本が何をしようとしているか知っている」という発言です。

前回お伝えしたとおり、同氏は植田総裁と片山財務相に直接、利上げを要請したと報じられています。


FXへの影響

つまりどういうことでしょうか。

ここで重要なのは、円が上がったのは「介入」ではなく「日銀の利上げ観測」が主因だった可能性が高い、という点です。


スワップ市場では、日銀による9月利上げの可能性が完全に織り込まれ、さらに来年に向けて四半期に1回のペースでの利上げまで織り込み始めています。


介入は一時的な効果しか持ちませんでしたが、利上げは金利差そのものを縮めます。

連載で繰り返しお伝えしてきた「円高転換には日銀の利上げが必要」という論点が、いよいよ現実味を帯びてきました。


ただし注意点もあります。

スフト氏の言う「ポジションが敏感になっている」状態とは、少しの材料で大きく動きやすいということ。

今回の急落も、円売りポジションの巻き戻しが増幅させた面があります。

この先も、上下に振れやすい地合いが続きそうです。




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3. 日銀の「苦しい選択」— 動いても動かなくてもリスク

今回いちばんお伝えしたいのが、日銀が置かれた難しい立場です。

9月17〜18日の決定会合に向けて、植田総裁は動いても動かなくても波乱を招きかねない状況にあります。


見送った場合のリスク

まず、利上げを見送った場合です。

市場は25bpの利上げを完全に織り込んでいます。

ここで動かなければ、期待が一気に剥落して円が急落する可能性が高いとされます。


しかも、年内に3%程度への上昇が見込まれているインフレ率が、円安によってさらに押し上げられます。

加えて、公然と利上げを求めたベッセント長官から厳しい反応を招くリスクもあります。


前回お伝えしたJPモルガンの分析でも、見送りの場合に協調介入が行われる可能性は低下しているとされていました。

つまり救済も期待しにくい、ということです。


利上げした場合のリスク

では、利上げすれば安心かというと、そう単純でもありません。

2つの問題が指摘されています。

ひとつは、25bpでは効果が弱いと受け止められる可能性です。

高田委員がより大幅な利上げの可能性に言及したことで、市場の期待水準が上がってしまいました。


もうひとつが、より本質的な問題です。

JPモルガン証券の藤田亜矢子氏は、こう指摘します。

「米国がこれだけ発言した後で日銀が動かなければ、問題になると思う。


しかし、米国からの追い風がなければ日銀は利上げできないと受け止められれば、利上げをしたとしても、その効果に関して大きなリスクが生じる」


つまり、「外圧に押されて動いた」と見られれば、日銀の独立性への信頼が揺らぎ、かえって円の信認を損なう恐れがある、ということです。


根本原因は財政にある

もうひとつ、藤田氏の重要な指摘があります。

「現在の長期金利の上昇ペースは、別に日銀の責任ではない。

円安も長期金利上昇も本質的に減速させるのに必要なのは、財政サイドからの信頼できるメッセージだと思う」


日本の10年債利回りは2日、1996年以来となる3%に上昇しました。

しかし、その主因は日銀ではなく、拡張的な財政運営への懸念です。

高市政権もトランプ政権も、財政再建に本腰を入れる姿勢は示していません。


FXへの影響としては、こう整理できます。

日銀が利上げしても、財政不安が残る限り円安圧力は完全には消えません。

逆に言えば、財政に関する信頼できるメッセージが出れば、それは想定以上の円高材料になり得ます。


なぜベッセント長官は日銀に圧力をかけるのか

ここも押さえておきましょう。

同氏の動機は、日本のためというより米国のためです。


理由は2つあります。

ひとつは、日本国債市場の変動が米国に波及しかねないこと。

かつて世界の債券利回りを低く抑えるアンカー役だった日本国債が売られると、世界的な金利上昇に拍車がかかります。


もうひとつは、円安が進むと日本が保有する米国債を売却する可能性が高まること。

これは米金利の上昇につながります。


楽天証券の愛宕伸康氏も、

「ベッセント氏が日銀に利上げを促しているのは、それによって世界的な債券利回りの上昇をけん制でき、米国のためにもなると考えているからだ」と述べています。


2024年7月の記憶

植田総裁が慎重な情報発信にこだわるのは、過去の経験があるためです。

2024年7月の利上げは一部のトレーダーの意表を突き、世界的な市場変動の一因となって批判を受けました。

当時、市場が織り込んでいた利上げ確率は約60%でした。


今回はほぼ100%織り込まれています。

皮肉なことに、丁寧な対話を重ねた結果、今度は「動かないと裏切りになる」状況が生まれているわけですね。


マールボロ・インベストメント・マネジメントのジェームズ・エイシー氏は、

「円に関するこれまでの取り組みを台無しにしないためにも、日銀は政策金利を引き上げ、より強力なメッセージを発する必要がある」と指摘しています。





4. 米国側の材料 — ウォーシュ議長が重視する指標

FRB側でも、注目すべき情報が出ました。

ウォーシュ議長がジャクソンホールの講演で、自身が重視する経済指標を具体的に示したのです。

これは就任以来、同氏の判断基準がもっとも明確に示されたものです。


主な内容を整理します。

設備投資については「将来の経済成長の種」と表現し、4〜6月期の非住宅固定投資が年率8.5%増加したと指摘。

今年の設備投資の伸びの半分以上がAI関連によるものとみています。


企業利益も堅調で、S&P500構成企業の利益は過去1年で20%超増加。

利益率は1940年代までさかのぼる統計で最高となりました。


信用市場については、社債などの信用スプレッドが歴史的に低く、「信用・融資市場には、金融政策による引き締めの影響を示す兆候はほとんど見られない」と述べています。


インフレについては、独自の見方を示しました。

PCE価格指数を構成する199品目を個別に分析し、「過去12カ月に、PCEの対象となる財・サービスの54%で価格が3%を超えて上昇した」と指摘。

パンデミック後のピークである約77%は下回るものの、パンデミック前20年間の32%を大幅に上回っている、というのです。


FXへの影響

つまりどういうことでしょうか。

議長が挙げた指標の大半は、米経済が堅調であることを示しています。

とくに「金融政策による引き締めの影響がほとんど見られない」という認識は重要です。


これは、現在の金利水準では経済を十分に抑制できていない、つまり利上げの余地があるという含みを持ちます。

前回お伝えしたタカ派宣言の裏付けとして、ドルを支える材料になります。


一方、NY連銀のウィリアムズ総裁は2日、「関税の影響が一部、過去のものとなる中、インフレは実際、緩やかな低下傾向にあるとみている」と述べ、金利は「適切な水準にある」との認識を示しました。

FRB内でも見方に幅があることは、引き続き意識しておきましょう。





5. その他の材料 — 30年債入札とECB

日本では3日、30年国債入札が実施されました。

世界の国債利回りが約20年ぶりの高水準にあるなかで、投資家の需要を探る場となります。


TDセキュリティーズのプラシャント・ニューナハ氏は、

「日本国債は長い間、世界の債券市場のアンカーだったが、今やその関係は逆転した」と指摘。

「日本国債の売りがさらに進めば、世界的な債券価格の見直しにつながる可能性がある」と警戒しています。


FXへの影響としては、入札が低調なら財政不安による「悪い金利上昇」が意識され、円安要因になり得ます。

逆に無難に消化されれば、当面の不安材料がひとつ減ります。


欧州では、ECBが10〜11日の会合で利上げする見通しが強まっています。

ドイツ連銀のナーゲル総裁は

「市場は9月の会合でわれわれが利上げする確率を95%超と織り込んでいる」と述べ、事実上これを追認しました。ユーロ圏の8月インフレ率は3.3%に上昇しています。


FXへの影響としては、ECBの利上げはユーロを支え、相対的にドルの上値を抑える要因になります。

日米欧がそろって引き締め方向に動く局面では、通貨間の強弱は「どこが最も積極的か」で決まります。




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今日の要点整理

円高の主役は介入ではなく利上げ観測になりつつあります。

2日の急落も、介入の兆候は確認されず、日銀タカ派委員の発言が引き金でした。


金利差を縮める利上げは、介入より持続力のある材料です。

日銀会合は動いても動かなくてもリスクがあります。

見送れば円急落、利上げしても「外圧に押された」と見られれば効果が薄れる。

9月17〜18日は、今年最大級の注目イベントになりそうです。


根本原因は財政にあります。長期金利の上昇も円安も、日銀だけでは止められません。

財政に関する信頼できるメッセージが出るかどうかが、中長期の分かれ目です。


明日は米雇用統計も控えています。

短期的には上下に振れやすい地合いが続きますので、ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。




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今回の新出用語

  • 実需筋:輸入代金の支払いなど、実際の取引のために外貨を売買する企業のこと。相場水準にかかわらず取引が発生します。
  • ターミナルレート:利上げの最終的な到達点。この予想が上がると、中長期の金利が上昇します。
  • アンカー:相場の基準となり、変動を抑える役割を果たすもの。日本国債は長らく世界の低金利のアンカーでした。
  • 信用スプレッド:社債などの利回りと国債利回りの差。狭いほど、投資家の信頼感が強いことを示します。

※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「二重ルート」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。



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