ドル円が2日で4円超の急落、一時155円30銭へ|ウォラー理事の発言と今夜の米雇用統計をどう構えるか


 










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 158円台にいたドル円が、わずか2日で155円30銭まで急落しました。

きっかけはウォラーFRB理事の発言です。

「なぜここまで動いた?」

「今夜の雇用統計はどう構える?」
——この記事を読めば、その答えがすっきり整理できます。

むずかしい言葉は一つずつかみくだいていくので、どうぞ気楽に読み進めてくださいね。





まずは全体像から(先に結論をお伝えします)

  1. ドル円は2日間で4円超下落し、一時155円30銭。その後156円付近へ戻す
  2. 急落の主因は、ウォラーFRB理事の発言による米利上げ観測の後退
  3. 今夜は米雇用統計。弱い結果なら、一段の円高リスクが指摘されています

それでは、一つずつ見ていきましょう。





1. ドル円は156円付近へ、2日間で4円超の急落

まずは値動きの整理から。

3日のニューヨーク市場で、円は対ドルで一時前日比2.2%高の155円30銭まで急伸しました。

8月3日以来、約1カ月ぶりの高値です。


2日夕には158円台にいましたから、わずか2日で4円余りも円高が進んだ計算になります。

4日の東京市場では156円付近まで戻し、もみ合っています。


テクニカルな面でも変化がありました。

円は長期トレンドの指標である200日移動平均線を大幅に上回り、7月末の日米協調介入後につけた高値である155円23銭に近づいています。

この水準は、過去半年にわたって上値抵抗線となってきた「155円ちょうど付近」の目前です。


株式は日経平均が反発する一方、円高を嫌気してTOPIXは反落。

債券は買われ、新発10年債利回りは5.5bp低下して2.91%となりました。




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2. 急落の主因はウォラー理事の発言

何を語ったのか

急落の引き金は、FRBのウォラー理事が3日の講演で示した見解でした。

同氏は「インフレ率が2%目標に向けて引き続き改善しているのであれば、政策金利を現行水準に据え置くことを支持する用意がある」と発言。

さらに「最近のデータは、ディスインフレの兆しがようやく表れ始めたことを示唆している」と、やや楽観的な見方を示しました。


質疑応答では、エネルギー価格上昇の影響がまだ他の物価に広範に波及していないとして、今後1カ月ほどの間に発表される消費者物価と生産者物価はいずれも「妥当な」数字になるとの予想も示しています。


そのうえで、「少なくとも、ここは様子を見てみよう」「来年まで待とうと言っているわけではない。

この件に関して一定の改善が見られるかどうか、少し待って見極めたい」と述べました。


なぜここまで市場が動いたのか

つまりどういうことでしょうか。

ポイントは、直前の相場が「9月利上げありき」で傾いていたことにあります。


前回お伝えしたとおり、8月28日のウォーシュ議長のジャクソンホール講演でタカ派姿勢が示され、市場は9月の利上げを急速に織り込みました。

FF金利先物が示す利上げ確率は、週前半には7割程度まで上昇していたのです。


そこへ、ウォラー理事が「据え置きを支持する用意がある」と発言しました。

確率は5割前後まで低下しています。


三井住友信託銀行の山本威氏は、ウォラー理事の発言が「9月利上げありきのようなタカ派的な織り込みを修正させた」と指摘しています。


ここで思い出したいのが、連載で繰り返しお伝えしてきた原則です。

ポジションが一方向に偏っているほど、逆方向の材料が出たときの巻き戻しは大きくなります。今回の4円超という値幅は、まさにその典型でした。


円側の材料も重なった

円高が加速したのは、米国側だけの理由ではありません。

日本側にも複数の材料が重なりました。


ひとつは日銀の利上げ加速観測です。

市場は9月の利上げを完全に織り込み、来年1月までに計2回の政策金利引き上げを見込んでいます。


もうひとつが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成見直し観測です。

国内債券への配分が増えるとの思惑が、円と債券の支援材料となっています。


さらに、介入への警戒感も残っています。

三村淳財務官は4日、「引き続き臨戦態勢というのは変わらない」「われわれの姿勢は何も変わっていない」と述べ、米当局とG20後も連絡を取っていることを明らかにしました。

片山財務相も3日、「いつも緊張感を持って、協調介入した瞬間の時から同じ姿勢でわれわれは臨んでいる」と語っています。


市場参加者の見方

ただし、円高が一本調子で続くとの見方は多くありません。


みずほ銀行の長谷川久悟氏は、

今回の円急伸について「完全に想定外だった」と指摘。

市場の利上げ織り込みは日本経済のファンダメンタルズからみて行き過ぎであり、円売りポジションもかなり解消された可能性があるため、「一本調子に円高とはならない」との見方を示しています。


FXへの影響としては、こう整理できます。

ポジションの巻き戻しによる円高は、巻き戻しが一巡すれば勢いを失います。

ここから先の円高には、日銀の実際の利上げなど、新しい材料が必要になるということです。


FRB内で割れる情報発信の姿勢

もうひとつ、興味深い論点があります。

ウォラー理事はこの日、自身の情報発信の方針についても説明しました。


同氏が挙げたのは、現在の見解を伝えること、政策の見通しを伝えること、そして一定の状況下ではフォワードガイダンス(政策の事前予告)を活用すること、の3点です。


これは、ガイダンスを廃止し情報発信そのものを減らす方針のウォーシュ議長とは、対照的な姿勢です。

ウォラー氏は「フォワードガイダンスは現在やその他多くの状況では適切でないという点で、ウォーシュ議長に同意する」としつつ、「しかし、本当に必要な場合には活用すべきだと考えている」と述べました。


FXへの影響としては、FRB内で発信の姿勢が割れていることは、市場にとって読みにくさの要因になります。

今回のように、議長と理事の発言で相場が正反対に振れる場面は、今後も起こり得ると考えておきましょう。




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3. 今夜の米雇用統計 — 直近3回の実績と攻略法

いよいよ今夜、8月の米雇用統計が発表されます。


直近3回の予想と結果

5月分は、速報値で17万2000人増と発表され、予想を大きく上回りました。

ところがその後、12万9000人へ、さらに6万3000人へと二度も下方修正されています。


6月分は5万7000人増で、市場予想の11万5000人を大きく下回りました。

失業率は4.2%へ低下しましたが、これは労働参加率が61.5%へ大きく下がったことが主因です。

平均時給は前年比3.5%でした。

この結果を受け、当時は9月利上げ観測が後退しています。


7月分は、なんと2万3000人の減少。

市場予想は8万3000人増でしたから、大幅な下振れです。

失業率は4.1%へ低下したものの、労働参加率は61.4%と5年超ぶりの低さ。


さらに、5月分が6万6000人、6月分が3万7000人それぞれ下方修正され、2カ月合計で10万3000人も下振れしました。


ここから読み取れる傾向は3つあります。

ひとつめは、雇用の減速がはっきりしていること。

5月から7月にかけて、確報ベースでは6万3000人、2万人、マイナス2万3000人と急速に細っています。


ふたつめは、下方修正が常態化していること。

速報値が後から大きく引き下げられるパターンが続いています。


みっつめは、失業率の低下が「良い低下」ではないこと。

労働参加率の低下、つまり働くこと自体をやめた人が増えたことが主因だからです。


結果ごとに考えられる値動き

今回の焦点は、雇用の減速がさらに進むかどうかです。

予想を下回る弱い結果が出れば、9月利上げ観測がさらに後退し、ドル安・円高方向に振れやすくなります。


山本氏も「米雇用統計が弱ければ一段の円高リスクがある」と指摘しています。

155円ちょうど付近という上値抵抗線を試す展開も考えられます。


予想を上回る強い結果なら、利上げ観測が再燃してドル高・円安方向へ。

ただし、ここ2日の円高で円売りポジションはかなり解消されており、戻りの勢いは限定的になる可能性もあります。


ほぼ予想どおりの場合は、過去分の修正と平均時給に注目しましょう。

とくに過去分の下方修正は、直近3回とも相場を動かす要因になっています。

速報値だけで判断しないことが大切です。


今夜の注意点

ひとつ、押さえておきたい点があります。

ウォラー理事は雇用統計について、労働市場が良好な状態にあることを確認する内容になると予想していると述べていました。

もしこの想定が外れて大幅に弱い数字が出れば、同氏の「様子見」姿勢がさらに強まり、利上げ観測は一段と後退します。


つまり、弱い結果のインパクトが大きくなりやすい局面です。

ポジションは小さめに、損切りラインを決めて臨みたいところです。





4. その他の材料 — FRB内の見方の幅

FRB内では、当局者によって見方に幅があります。

整理しておきましょう。


バー理事は1日、インフレが鈍化しなければ利上げに踏み切る用意を整えるべきだとの考えを示しました。

物価上昇圧力が定着するリスクを警告しています。


一方、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は2日、関税の影響が薄れるなかでインフレは鈍化しており、エネルギー価格上昇の影響も他のサービス分野には波及していないとの見解を示しました。


そして3日のウォラー理事の発言です。

エバコアISIのアナリストは、ウォラー氏の講演内容がウィリアムズ総裁の発言と軌を一にするものだと分析。

ジャクソンホール後に広がった「9月利上げの可能性が高い」との見方に疑問を投げかけた、と指摘しています。


FXへの影響としては、9月15〜16日のFOMCまで、当局者の発言のたびに相場が振れやすい状況が続くということです。

前回7月の会合では3人が利上げを主張して反対票を投じており、内部の意見はまとまっていません。


なお、国内では片山財務相の留任が報じられ、財政規律の観点から前向きに受け止められているとの指摘も出ています。

財政への信認は円の行方を左右する要素ですから、今後の人事や政策運営にも目を配っておきたいところです。





今日の要点整理

偏ったポジションは大きく巻き戻ります。

ジャクソンホール後に9月利上げへ傾いた市場が、ウォラー理事の一言で4円超の逆方向の動きになりました。


「織り込みが進んだ後ほど反転が大きい」という原則を、改めて確認しておきたいところです。

雇用統計は速報値だけで判断しないことです。

直近3回とも大幅な下方修正が入り、それが相場を動かしました。

数字が出た瞬間に飛びつかず、過去分の修正まで確認する習慣が役立ちます。


円高の持続には新しい材料が必要です。

今回の円高はポジションの巻き戻しが主因で、巻き戻しが一巡すれば勢いは鈍ります。

次の焦点は、9月17〜18日の日銀会合での実際の利上げです。


155円ちょうど付近という上値抵抗線が目前です。

今夜の結果次第では、そこを試す展開もあり得ます。

ぜひ落ち着いて見守ってみてくださいね。





今回の新出用語

  • 200日移動平均線:過去200日間の平均価格を結んだ線。長期トレンドの目安として、多くの市場参加者が意識します。
  • 上値抵抗線:相場がそこから上に進みにくい価格帯のこと。円で言えば、それ以上の円高が進みにくい水準です。
  • ディスインフレ:物価上昇のペースが鈍っていく状態。物価が下がるデフレとは異なります。
  • 労働参加率:働く意思のある人が人口に占める割合。低下による失業率の改善は、手放しでは喜べません。

※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「フォワードガイダンス」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。




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