米CPI上振れで利上げ確率9割へ|ドル円153円台半ば、今週は日米英の中銀ウィーク
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先週末の米CPIはコアが予想を上回り、今週のFOMCでの利上げ確率は9割近くまで上昇しました。
実現すれば約3年ぶりの利上げです。
一方、日銀の利上げもほぼ完全に織り込まれています。
日米が同じ週に利上げする可能性が出てきました。
今週の焦点と、トランプ大統領との対立が持つ意味を整理します。
今日のポイント
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ドル円は153円台半ば。原油高でドルが買われる場面もありました
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米CPIはコアが予想を上回り、FOMCでの利上げ確率は9割近くへ
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今週は15〜16日にFOMC、17〜18日に日銀会合、17日に英中銀
1. ドル円は153円台半ばで推移
円は対ドルで153円台半ばで推移しています。
原油価格の上昇を受けて、ドル買い・円売りが出ました。
SBI FXトレードの上田真理人氏は、この動きについて興味深い指摘をしています。
「このところ原油が上昇してもドル円の反応は鈍かったが、中銀ウイークということもあり市場が敏感になっている可能性がある」
そのうえで、中東への依存度が高い「円の弱みが出ている」とも述べました。
原油への反応が戻ってきた
ここは押さえておきたい変化です。
前回までは、原油が上がっても円はあまり売られませんでした。
日銀の利上げ観測が強く、円買い需要がそれを打ち消していたためです。
それが今週は反応するようになった。
中銀会合を前にポジションを整理する動きが出て、市場が材料に敏感になっているという解釈です。
野村証券の後藤祐二朗氏は、
「利上げ織り込みが進んだ中、日米中央銀行のコミュニケーションが重要となる」とし、この日のドル円は「153円台で上値の重い展開」を予想しています。
2. 先週末の米CPIと市場の反応
結果はコアが予想を上回る
8月の米CPIは、次のような内容でした。
コアCPIは前月比0.3%上昇で、市場予想の0.2%を上回りました。
7月は0.2%でしたから、伸びが加速したことになります。
前年同月比では2.4%上昇と、こちらは予想どおり。
7月の2.5%から小幅に低下しました。
総合CPIは前月比0.4%上昇、前年同月比3.4%上昇で、いずれも予想と一致しています。
中身を見ると
総合はエネルギー価格が前月比2.1%上昇したことが効いています。
注目すべきはサービス価格です。
エネルギーと家賃を除くサービス価格は0.5%上昇し、携帯電話サービス料金は過去最大の伸びを記録しました。
ホテル・モーテル宿泊費や航空券も高い上昇率です。
さらに、データセンター建設の拡大に伴う物価上昇も続いています。
コンピューターソフトウエア・周辺用品は前年比25.4%上昇と、統計史上最大の伸びとなりました。
相場の反応
CPIの発表後、金利先物市場では今週の利上げが約90%織り込まれました。
円は一時154円台半ばまで下げる場面がありました。
市場参加者の見方
ネーションワイドのキャシー・ボストジャンシック氏は、
原油やガソリン価格が再び上昇基調を強めており、「エネルギー価格の上昇が他の財・サービスやインフレ期待に波及するとの懸念が高まっている」と指摘。
FRBは今週利上げに踏み切るとみています。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン氏らは、
今回のCPIについて「金利据え置きを主張するFOMC内のハト派を安心させることはできないだろう」と分析。
市場がタカ派的な反応を示したことも踏まえ、FRBは利上げに踏み切らざるを得ない公算が大きいとしています。
一方、慎重な見方もあります。
BofAのスティーブン・ジュノー氏は、利上げにつながる内容ではあるものの「インフレ見通しへの懸念を特に強めるような統計ではない」と指摘。
携帯電話サービスなどの価格上昇は「ノイズが大きく、その後反転する傾向がある」と分析しました。
FXへの影響
コアの上振れは、ドルを支える材料です。
実際、CPI後に円は154円台まで下げました。
ただし、利上げはすでに9割織り込まれています。
今週実際に利上げが行われても、それ自体はドル買い材料になりません。
相場を動かすのは、その先の見通しです。
FOMCは16日に、経済成長とインフレ率、金利見通しに関する最新予測も公表します。
ここで年内あと何回の利上げが示されるかが焦点になります。
3. 今週は日米英の中銀ウィーク
日程の整理
今週は主要中銀の政策決定が集中します。
15日から16日にFOMC、17日に英中銀の金融政策発表、17日から18日に日銀の金融政策決定会合です。
前回お伝えしたとおり、ECBはすでに10日に利上げを決めています。
G7の中銀が、そろってタカ派的な姿勢に向かう構図が鮮明になりつつあります。
米国は約3年ぶりの利上げへ
FOMCでの利上げ確率は86%から90%近くで推移しています。
実現すれば約3年ぶりです。
前回7月の会合では、投票権を持つ3人が利上げを主張して反対票を投じていました。
そこへ今回のCPIが加わり、判断が傾いた形です。
トロント・ドミニオン銀行やJPモルガンなど、ウォール街の大手金融機関もCPI発表後に金利見通しを相次いで修正しました。
日本も利上げがほぼ確実視
日銀については、前回お伝えしたとおりエコノミスト52人全員が0.25ポイントの利上げを予想しています。
政策金利は1.0%程度から1.25%程度になる見通しです。
7月の名目賃金が前年比4.7%増と約30年ぶりの高い伸びとなったことも、利上げを後押ししています。
英中銀は据え置き予想
英中銀の利上げは見込まれていません。
ただし、7月の会合では3人の当局者が利上げに賛成しており、物価上昇リスクがくすぶる現状を踏まえれば、早ければ11月にも利上げへ動く可能性は残ります。
17日には量的引き締めのペースに関する年1回の発表もあります。
FXへの影響
日米が同じ週に利上げすれば、金利差は変わりません。
したがって、為替の方向を決めるのは「どちらがより先を見据えたメッセージを出すか」になります。
FRBが年内あと1回の利上げを示唆し、日銀が次の利上げ時期を明確にしなければ、ドル買いに傾く可能性があります。
逆に日銀がペース加速を強く打ち出せば、円高が進みやすくなります。
会合の結果そのものより、その後の記者会見と見通しに注目が集まる週です。
4. ウォーシュ議長とトランプ大統領の対立
今回のFOMCには、もう一つの側面があります。
政治との関係です。
何が起きているのか
トランプ大統領は13日、「米国は非常に強い。どんな算式に基づこうとも、世界で最も低い金利を払うべきだ」と述べ、利下げを求める従来の主張を繰り返しました。
同氏は今月初め、FRBが利下げしなければ一部の国との貿易を全面的に停止すると警告してもいます。
つまり、大統領が利下げを求めるなかで、FRBは利上げを迫られているわけです。
背景にある政治日程
11月に中間選挙が控えています。
世論調査では、エネルギー、住宅、医療、食料品にまたがる生活費上昇への不満が高まっており、共和党が議会の主導権を失う可能性も指摘されています。
大統領にとって、金利の低下は「経済的な負担軽減が近づいている」と訴える材料になります。政権への批判をそらす効果も期待できます。
専門家の見方
ピーターソン国際経済研究所のモーリス・オブストフェルド氏は、
FRBについて「大統領の怒りを買うか、市場の信認を損なうかという、まさに逃げ場のない状況にある」と指摘。
そのうえで、市場の信認を損なう場合のほうが「将来的にインフレへの影響がより深刻になる可能性が高い」と述べています。
ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンのヘザー・ロング氏も、
「今のウォーシュ氏は政治的にはどちらに転んでも勝ち目がない」と表現。
「利上げすれば大統領からSNSで批判され、据え置けば市場から反発を受けることになる」と説明しました。
FRB内部の事情
見落とせないのが、FRB内部の力学です。
7月の会合では3人の地区連銀総裁が利上げを支持して反対票を投じました。
直近のデータを受けて議長が利上げを見送れば、同僚の間での立場を損なう可能性があります。
ブルームバーグ・エコノミクスは、「FOMCによる利上げを投資家は望み、期待している。もし利上げしなければ、ウォーシュ氏は市場参加者の目から見て信頼を失うことになるだろう」と分析しています。
FXへの影響
ここで意識しておきたいのは、FRBの独立性への懸念が高まればドルの重しになるという点です。
中央銀行が政治的な圧力で判断を曲げると市場が受け止めれば、インフレ抑制への信認が揺らぎます。
連載で追ってきたとおり、それは長期金利の上昇と通貨安につながります。
逆に、圧力に屈せず利上げを実施すれば、短期的にはドルが買われやすくなります。
なお、フィラデルフィア連銀の前総裁パトリック・ハーカー氏は興味深い見方を示しています。
利上げはインフレ懸念を和らげることで長期金利の上昇を抑え、結果的に政権の経済目標を後押しする可能性がある、というものです。
5. 米10年債利回りが5%目前
もう一つ、相場全体に関わる材料があります。
米10年国債利回りが4.97%まで上昇し、5%が目前に迫りました。
終値で5%を超えれば、2007年以来のことです。
なぜ注目されるのか
10年債利回りは、他の借入金利の基準になります。
住宅ローンや企業の資金調達コストに直結するわけです。
また、株式市場では将来の利益を現在価値に直す際の割引率としても使われます。
利回りが上がるほど、将来の利益の価値は小さく計算されます。
JPモルガン・チェース・プライベート・バンクのグレース・ピーターズ氏は、
「債券利回りが5%ないし5.25%まで上昇すれば、その辺りで株式市場が消化不良を起こすと思う」と指摘。
「5%という水準は心理的な影響を及ぼす」と述べています。
ブランディワインのトレーシー・チェン氏は、
「FRBは間違いなく対応が後手に回っている」としたうえで、長期金利を押し上げている要因の一部は政策当局が制御できないと指摘。
「間違いなく5%を超えると思う」と語りました。
FXへの影響
米金利の上昇はドル買い材料です。
ただし、5%突破が株安を招けば、リスク回避の円買いが出やすくなります。
金利上昇がドル高につながるのか、株安を通じて円高につながるのか。
この綱引きが、今週の値動きを複雑にする可能性があります。
6. 中東情勢と原油
サウジアラビアが攻撃を受け、主要な原油パイプラインを停止しました。
これはホルムズ海峡を迂回するルートとして使われてきた輸送経路です。
寸断されたことで、世界的なエネルギー供給の逼迫が一段と深刻化しています。
また、ホルムズ海峡を通る暫定航路の創設を巡り、イランと複数の湾岸諸国が14日に予定していた会合は延期されました。
原油高は日本の輸入コストを押し上げ、円安要因になります。
上田氏の言う「円の弱み」とは、この構造のことです。
中銀会合という大きな材料に注目が集まりがちですが、原油の動きも並行して確認しておきたいところです。
今日のまとめ
米CPIのコア上振れで、今週のFOMCでの利上げは9割近く織り込まれました。
日銀の利上げもほぼ確実視されています。
日米が同じ週に利上げすれば金利差は変わりません。
為替を動かすのは、その先の見通しに関するメッセージです。
ウォーシュ議長は、大統領の圧力と市場の期待の板挟みにあります。
この構図は、FRBの独立性という観点からドルの中長期的な方向にも影響します。
米10年債利回りの5%突破も近づいています。
金利上昇がドル高につながるか、株安を通じた円高につながるか。
今週は複数の力が交錯します。
今回の新出用語
- コアCPI:食品とエネルギーを除いた消費者物価指数。物価の基調を示し、政策判断で重視されます。
- 帰属家賃:持ち家に住む人が、仮に家賃を払うとしたらいくらかを推計した項目。CPIで最大の構成比を占めます。
- 割引率:将来の利益を現在の価値に直す際に使う利率。上昇すると、将来の利益の現在価値は小さくなります。
- 量的引き締め(QT):中央銀行が保有する国債などを減らし、市場から資金を吸収すること。
※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「ターミナルレート」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。
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