欧州債務懸念でドル買い、ドル円158円台へ|今夜の米雇用統計を直近3回の実績から読む


 









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 欧州の財政懸念が再燃し、リスク回避のドル買いが広がりました。円は対ドルで158円台まで下落しています。

 一方で、10月のFOMCでの利上げ織り込みは3割を切りました。FRB高官からは様子見を示唆する発言も出ています。

 今夜は9月の米雇用統計です。直近3回の実績と合わせて整理します。


今日のポイント

  1. ドル円は157円台後半から158円台へ。欧州の財政懸念でドルが買われました

  2. 10月の利上げ織り込みは3割未満。FRB内で様子見の声が出ています

  3. 今夜の雇用統計は約8万5000人増の予想。10月FOMC前の最重要指標です





1. ドル円は158円台へ下落

円は対ドルで157円台後半から158円台へ下落しました。

きっかけは欧州です。フランスをはじめとする欧州の財政懸念が改めて強まり、米国株と債券が下落しました。リスク回避の動きから、ドルとスイスフランが買われています。

円は対ドルでは弱く、他通貨には強い

ここは押さえておきたい点です。

通常、リスク回避の局面では円も買われやすい傾向があります。安全資産とみなされてきたためです。

ところが今回、円は対ドルでは売られました。一方で、他の主要通貨に対しては比較的堅調でした。

つまり、ドルの強さが円の強さを上回ったということです。円自体は売られていないものの、ドルがそれ以上に買われたため、ドル円としては上昇しました。

連載で何度かお伝えしてきたとおり、ドル円の動きだけでは「円が弱いのか、ドルが強いのか」は分かりません。ドル指数や他の通貨ペアと合わせて見ると、何が起きているかが見えてきます。

市場参加者の見方

三井住友信託銀行の山本威氏は、雇用統計を控えて大きくポジションは傾けにくいとしつつ、「ドル円は上値を試す展開が続くのではないか」とみています。

株式は反落し、日経平均は一時800円超下げました。欧州の財政懸念と米長期金利の上昇を受けた米株安が重しです。





2. 10月の利上げ織り込みは3割未満

FRB高官から様子見の声

FRB内で、追加利上げを急がない姿勢を示す発言が出ています。

ジェファーソンFRB副議長は、インフレ率が依然として高すぎると指摘しつつも、FRBには追加利上げの是非を判断するうえで「さらに時間がある」との認識を示しました。

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、追加利上げが必要になる可能性は高いとしつつ、今後どこまで金利が上がるのかは「分からない」と述べています。

市場の反応

これらの発言を受けて、10月のFOMCで利上げが実施されるとの見方は後退しました。トレーダーは利上げの確率を3割未満と見込んでいます。

前回お伝えしたとおり、PCE発表前はほぼ五分五分でした。PCEで約36%に低下し、さらに3割を切った形です。

トランプ大統領の発言

同じ日に、トランプ大統領がFRBに関する発言をしました。

FRB理事会は「トランプ嫌悪症候群」にかかっているとし、ウォーシュ議長は9月の利上げに反対すべきだったと述べています。

FRBの独立性に関わる発言が続いています。前回お伝えしたとおり、こうした動きの積み重ねは長期金利が下がりにくい一因になり得ます。

FXへの影響

整理すると、こうなります。

利上げ観測の後退は、短期金利の低下を通じてドル安要因です。日米の金利差が縮まる方向に働きます。

それでも今回ドルが買われたのは、欧州発のリスク回避がそれを上回ったためです。

つまり、金利の面ではドル安方向、リスク回避の面ではドル高方向という、逆向きの力が同時に働いています。今夜の雇用統計は、このバランスを動かす材料になります。




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3. 昨夜の米指標

ISM製造業景況指数

9月のISM製造業総合景況指数は54.5と、前月の55.6から低下しました。市場予想の55.0も下回っています。

ただし、50が拡大と縮小の分かれ目です。54.5は依然として拡大圏にあります。

中身を見ると、受注残の指数は約4年半ぶりの高水準となりました。今後の生産に向けた材料は豊富にあるということです。

注目すべきは仕入れ価格です。指数は76.1に上昇し、2022年6月以来の高水準となりました。

ISMのスーザン・スペンス委員長は、中東での戦争が引き起こした燃料価格の上昇や、関税を巡る影響、AI関連の建設需要が原材料コストを押し上げていると説明しています。

新規失業保険申請件数

9月26日までの1週間の新規失業保険申請件数は、19万7000件と7月以来の低水準でした。

継続受給者数は170万1000人に減少し、2023年3月以来の低水準となっています。

FXへの影響

製造業は減速したものの拡大を維持し、仕入れ価格は上昇しました。労働市場では、解雇が少なく、失業者も職を見つけやすい状況が続いています。

前回お伝えした「採用もレイオフも低調」という状態のうち、レイオフが少ない面が改めて確認された形です。

インフレ圧力が続き、労働市場が崩れていないという組み合わせは、FRBが利上げの選択肢を残す根拠になります。ドルを下支えする材料です。




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4. 今夜の米雇用統計

直近3回の予想と結果

6月分は5万7000人増と、市場予想の11万5000人を大きく下回りました。失業率は4.2%に低下したものの、労働参加率が61.5%へ下がったことが主因です。平均時給は前年比3.5%でした。同時に、4月分と5月分が合計7万4000人下方修正されています。

7月分は2万3000人の減少でした。市場予想は8万3000人増でしたから、大幅な下振れです。失業率は4.1%に低下しましたが、労働参加率は61.4%と5年超ぶりの低さでした。さらに5月分が6万3000人、6月分が2万人へとそれぞれ下方修正され、2カ月合計で10万3000人の下振れとなりました。

8月分は16万2000人増と、予想を大幅に上回りました。3月以来の大きな伸びです。7月分も上方修正され、失業率は4.1%でした。

3回から読み取れること

流れを見ると、6月と7月は大きく下振れ、8月は一転して大きく上振れました。

ここで読み取れることは2つあります。

ひとつは、速報値の振れが大きいことです。予想との差が毎回数万人単位で生じています。

もうひとつは、過去分の修正が相場を動かしてきたことです。6月分と7月分の発表では、過去分の大幅な下方修正が労働市場の弱さを印象づけました。

速報値だけで判断せず、修正分まで確認する必要がある指標です。

今回の予想

9月の非農業部門雇用者数は約8万5000人増と見込まれています。失業率は8月と変わらない4.1%の予想です。

8月の16万2000人増から伸びが鈍化する見通しです。

結果ごとに考えられる値動き

予想を大きく上回れば、労働市場の底堅さが確認され、10月の利上げ観測が再び高まります。ドル買いが進み、158円台後半から159円を試す展開が考えられます。

ただし、159円から160円にかけては介入警戒が意識される水準です。前回までにお伝えしたとおり、その手前では円売りが減速しやすくなります。

予想を大きく下回れば、利上げ観測が一段と後退します。ドル売りが進み、157円台へ戻す可能性があります。

予想どおりの場合は、過去分の修正と平均時給に注目しましょう。8月分が大きく修正されれば、それ自体が相場を動かす材料になります。

今夜の注意点

次回のFOMCは10月28日です。それまでに発表される主要指標は限られます。

ナティクシスのクリストファー・ホッジ氏は、利上げペースは「より緩やか」になるとの見方を示しつつ、「最も可能性の高いシナリオは12月の利上げだ。これは10月の利上げを完全に否定するものではない」と述べています。

今夜の結果は、その判断を左右する最大の材料です。

また、欧州の財政懸念という別の材料も動いています。雇用統計の結果とは無関係に、リスク回避の動きでドルが買われる可能性もあります。発表前後はポジションを小さめに構えておく判断に合理性があります。





5. その他の材料

欧州の財政懸念

前回お伝えしたとおり、独仏間の10年債利回り差は2012年の欧州債務危機時の水準に拡大していました。

今回、その懸念がさらに強まり、米国の株式と債券にも波及しました。

FXへの影響としては、欧州発のリスク回避はドルとスイスフランへの資金逃避につながりやすいということです。ユーロは売られやすくなります。ドル円にとっては、ドル高要因として働きます。

中東への空母追加派遣

米国は空母打撃群を中東に追加派遣する方針を固めました。

前回までにお伝えしてきたとおり、米イランの協議は続いているものの、合意には距離があります。軍事的な圧力を強める動きは、原油価格の上振れリスクにつながります。

原油高は日本の輸入コスト増を通じた円安要因です。米国ではインフレ懸念から金利上昇を招きます。いずれもドル円を押し上げる方向に働きます。





今日のまとめ

欧州の財政懸念からリスク回避のドル買いが広がり、ドル円は158円台へ上昇しました。円は他通貨に対しては堅調で、ドルの強さが上回った形です。

10月の利上げ織り込みは3割を切りました。ジェファーソン副議長やカシュカリ総裁から、追加利上げを急がない姿勢がうかがえます。

金利の面ではドル安方向、リスク回避の面ではドル高方向という、逆向きの力が同時に働いています。

今夜の雇用統計は約8万5000人増の予想です。直近3回は予想との乖離が大きく、過去分の修正も相場を動かしてきました。速報値と修正分の両方を確認してから判断したいところです。





今回の新出用語

  • 受注残:受注したもののまだ出荷していない分。多いほど、今後の生産が続く見通しを示します。
  • 継続受給者数:失業保険を受け取り続けている人の数。少ないほど、失業者が新しい職を見つけやすいことを示します。
  • 安全資産への逃避:リスク回避の局面で、ドルやスイスフランなど安全とされる資産に資金が移る動き。
  • 空母打撃群:空母を中心に複数の艦艇で構成する部隊。派遣は軍事的圧力を強めるシグナルとされます。

※「良い金利上昇と悪い金利上昇」「レートチェック」など既出の用語は、用語集ページをご覧ください。




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